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第43話:俺は何をしていたんだ~ライアン視点~
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「おい、ライアン。落ち着けよ。お前、手から血が出ているぞ。すぐに手当てを」
「いいや、大丈夫だ。マリアの痛みに比べれば、これくらい屁でもない」
そのまま地下牢を後にすると、王太子殿下がいた。
「ライアン、あの女を捕まえたみたいだね。それであの女は…」
こいつのせいでマリアは酷い目に合ったんだ。こいつがマリアに近づきさえしなければ!
「殿下、あの女は取り調べでも、マリアがいなければ自分が殿下に愛されると言っていました。殿下とあの女は、関りがあったのですか?」
「そうか…やっぱり僕のせいでマリア嬢は…僕とクラシエ嬢だが、特に接点はない。ただ、なぜかやたら僕に関わろうとしていたみたいだが。でも僕は、今回はしっかり断っていた。でもそのせいで、マリア嬢に矛先が行くなんて…」
今回は?何を言っているんだ?この男は。
「とにかくあの女がマリアを傷つけた事には変わりはありません。どうか厳しい処罰を」
「分かっている。男爵令嬢が罪もない侯爵令嬢の命を奪おうとしたんだ。極刑は免れないだろう。男爵家も取り潰しになるだろうし」
「そうですか。わかりました。とにかく、出来るだけ早く終わらせましょう。出来ればマリアが目覚める前に…」
「ああ、分かっている。今騎士団長から、マリア嬢に使われた毒が、彼女の部屋から発見されたとの連絡を受けた。これだけ証拠がそろっているのだから、大丈夫だ」
そうか、毒も見つかったのか。さすが団長、仕事が早いな。
「それでは俺はこれで失礼します。また明日来ます」
「ああ、君も今日は疲れているだろう。ゆっくり休んでくれ」
王太子殿下と別れ、馬車へと向かう。どうやら王宮に侯爵家の馬車を呼んでおいてくれた様だ。
「それじゃあライアン、お疲れ様」
「とにかく今日はしっかり休むんだぞ」
心配そうな顔のジャックとジンが肩を叩いて励ましてくれる。
「ありがとう、2人とも。お前たちも夜遅くまですまなかったな。ゆっくり休んでくれ」
そう言い残し、馬車に乗り込む。1人になると、つい考えてしまうマリアの事。何度も吐血し、苦しそうな顔をするマリアが、頭から離れない。
「クソ!全てあの女のせいだ!…いいや、違う。俺のせいだ…俺がもっとマリアの側にいたら…今日だってマリアを家まで送っていたら…マリアが誘拐されたあの時、俺はマリアに誓ったのに。必ず守ると。全て、俺の責任だ…」
胸が張り裂けそうになるほど辛い。どうして俺は何度も失敗を繰り返すんだ。自分が情けない…
「坊ちゃま、お屋敷に着きましたよ。今日はお疲れでしょう、ゆっくりお休みください」
いつの間にか屋敷に着いていた様で、執事に声を掛けられた。馬車から降り、玄関に入ると、母上が待っていた。どうやら父上はまだ帰って来ていない様だ。
「ライアン、大丈夫だったの?」
「ええ、犯人でもあるクラシエ・ディースティンは捕まえましたし、今男爵家も家宅捜索中です」
「犯人が捕まったのね。…て、犯人はディースティン男爵令嬢だったの?どうして彼女が?マリアちゃんとどんな接点があったの?」
母上が詰め寄って来る。
「奥様、詳しくは私がお話をします。坊ちゃまはお疲れでしょう。さあ、お部屋に」
執事が間に入ってくれたので、そのまま部屋へと向かった。湯あみを済ませ、ベッドに入る。でも、どうしても寝られない。
ふとマリアに渡していたネックレスを手に取った。そして、再生させた。何度となく聞いたマリアとあの女の会話。この女の声を聞いているだけで吐き気がする。
そして、小屋に鍵を掛けられ、あの女が去って行った。今まではここまでしか聞いていなかった。一旦再生を停止させた。
きっとこの後、マリアが苦しむ声が残っているのだろう。俺にとって、辛い内容だ。でも…マリアがあの時どうやって過ごしていたのか、どれくらいの時間もがき苦しんでいたのか、俺は知るべきだ。
どんなに辛くて胸が張り裂けそうになっても、目をそらすわけにはいかない。震える手でゆっくりと再生ボタンを押した。
そこには呼吸が上がり、ハーハーと必死に息をする音が残されていた。
しばらく聞いていると…
「ライ…アン…た・す・け・て…」
「ライ…アン…愛しているわ…」
えっ…今なんて…
もう一度、巻き戻し、再生する。
するとやっぱり“ライアン、助けて、ライアン、愛しているわ”そう聞こえるではないか。
その後も何度も何度も俺に助けを求め、愛していると呟くマリア。途中で吐血してしまったのか、ゴホゴホと激しくせき込む声も聞こえる。
結局俺が助けに行く3時間もの間、マリアは俺に助けを求め続けていたのだ。
「俺は本当にバカなだ…マリア、ごめんな…すぐに助けてやれなくて。こんな形でお前の気持ちを聞く事になるなんて。俺もお前を愛している…もう二度と、離さないから…」
こみ上げていた思いが一気に爆発し、声をあげて泣いた。マリア、本当にごめんな。俺が助けに来るのを待っていてくれたのに!俺は本当に何をやっていたんだ。
しばらく泣いた後、少し落ち着いた。とにかく、泣いていても仕方がない。マリアの為に、やるべきことをやらないと。
涙をぬぐい、顔を洗うとそのままベッドに潜り込んだ。今日はしっかり休もう。そして明日、ケリをつける。
「いいや、大丈夫だ。マリアの痛みに比べれば、これくらい屁でもない」
そのまま地下牢を後にすると、王太子殿下がいた。
「ライアン、あの女を捕まえたみたいだね。それであの女は…」
こいつのせいでマリアは酷い目に合ったんだ。こいつがマリアに近づきさえしなければ!
「殿下、あの女は取り調べでも、マリアがいなければ自分が殿下に愛されると言っていました。殿下とあの女は、関りがあったのですか?」
「そうか…やっぱり僕のせいでマリア嬢は…僕とクラシエ嬢だが、特に接点はない。ただ、なぜかやたら僕に関わろうとしていたみたいだが。でも僕は、今回はしっかり断っていた。でもそのせいで、マリア嬢に矛先が行くなんて…」
今回は?何を言っているんだ?この男は。
「とにかくあの女がマリアを傷つけた事には変わりはありません。どうか厳しい処罰を」
「分かっている。男爵令嬢が罪もない侯爵令嬢の命を奪おうとしたんだ。極刑は免れないだろう。男爵家も取り潰しになるだろうし」
「そうですか。わかりました。とにかく、出来るだけ早く終わらせましょう。出来ればマリアが目覚める前に…」
「ああ、分かっている。今騎士団長から、マリア嬢に使われた毒が、彼女の部屋から発見されたとの連絡を受けた。これだけ証拠がそろっているのだから、大丈夫だ」
そうか、毒も見つかったのか。さすが団長、仕事が早いな。
「それでは俺はこれで失礼します。また明日来ます」
「ああ、君も今日は疲れているだろう。ゆっくり休んでくれ」
王太子殿下と別れ、馬車へと向かう。どうやら王宮に侯爵家の馬車を呼んでおいてくれた様だ。
「それじゃあライアン、お疲れ様」
「とにかく今日はしっかり休むんだぞ」
心配そうな顔のジャックとジンが肩を叩いて励ましてくれる。
「ありがとう、2人とも。お前たちも夜遅くまですまなかったな。ゆっくり休んでくれ」
そう言い残し、馬車に乗り込む。1人になると、つい考えてしまうマリアの事。何度も吐血し、苦しそうな顔をするマリアが、頭から離れない。
「クソ!全てあの女のせいだ!…いいや、違う。俺のせいだ…俺がもっとマリアの側にいたら…今日だってマリアを家まで送っていたら…マリアが誘拐されたあの時、俺はマリアに誓ったのに。必ず守ると。全て、俺の責任だ…」
胸が張り裂けそうになるほど辛い。どうして俺は何度も失敗を繰り返すんだ。自分が情けない…
「坊ちゃま、お屋敷に着きましたよ。今日はお疲れでしょう、ゆっくりお休みください」
いつの間にか屋敷に着いていた様で、執事に声を掛けられた。馬車から降り、玄関に入ると、母上が待っていた。どうやら父上はまだ帰って来ていない様だ。
「ライアン、大丈夫だったの?」
「ええ、犯人でもあるクラシエ・ディースティンは捕まえましたし、今男爵家も家宅捜索中です」
「犯人が捕まったのね。…て、犯人はディースティン男爵令嬢だったの?どうして彼女が?マリアちゃんとどんな接点があったの?」
母上が詰め寄って来る。
「奥様、詳しくは私がお話をします。坊ちゃまはお疲れでしょう。さあ、お部屋に」
執事が間に入ってくれたので、そのまま部屋へと向かった。湯あみを済ませ、ベッドに入る。でも、どうしても寝られない。
ふとマリアに渡していたネックレスを手に取った。そして、再生させた。何度となく聞いたマリアとあの女の会話。この女の声を聞いているだけで吐き気がする。
そして、小屋に鍵を掛けられ、あの女が去って行った。今まではここまでしか聞いていなかった。一旦再生を停止させた。
きっとこの後、マリアが苦しむ声が残っているのだろう。俺にとって、辛い内容だ。でも…マリアがあの時どうやって過ごしていたのか、どれくらいの時間もがき苦しんでいたのか、俺は知るべきだ。
どんなに辛くて胸が張り裂けそうになっても、目をそらすわけにはいかない。震える手でゆっくりと再生ボタンを押した。
そこには呼吸が上がり、ハーハーと必死に息をする音が残されていた。
しばらく聞いていると…
「ライ…アン…た・す・け・て…」
「ライ…アン…愛しているわ…」
えっ…今なんて…
もう一度、巻き戻し、再生する。
するとやっぱり“ライアン、助けて、ライアン、愛しているわ”そう聞こえるではないか。
その後も何度も何度も俺に助けを求め、愛していると呟くマリア。途中で吐血してしまったのか、ゴホゴホと激しくせき込む声も聞こえる。
結局俺が助けに行く3時間もの間、マリアは俺に助けを求め続けていたのだ。
「俺は本当にバカなだ…マリア、ごめんな…すぐに助けてやれなくて。こんな形でお前の気持ちを聞く事になるなんて。俺もお前を愛している…もう二度と、離さないから…」
こみ上げていた思いが一気に爆発し、声をあげて泣いた。マリア、本当にごめんな。俺が助けに来るのを待っていてくれたのに!俺は本当に何をやっていたんだ。
しばらく泣いた後、少し落ち着いた。とにかく、泣いていても仕方がない。マリアの為に、やるべきことをやらないと。
涙をぬぐい、顔を洗うとそのままベッドに潜り込んだ。今日はしっかり休もう。そして明日、ケリをつける。
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