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第44話:王宮に向かいます~ライアン視点~
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翌朝目が覚めると、まずは体を動かす。これは俺の日課だ。とにかく体を動かすと、気持ちも少しだけ軽くなるのだ。汗を洗い流し、食堂に向かうと、両親が待っていた。
「ライアン、昨日は大変だったな。今日は急遽伯爵以上が集まって、昨日の事件について、話し合いが行われる。陛下も王太子殿下も、早めに処罰を与えたいと考えている様でな。もちろん、お前も参加する様に」
「もちろんだ!あの女だけは、絶対に許さない!」
つい拳を強く握ってしまった。
「お前は少し感情を抑えろ。右手のその傷、どうせ壁にでも八つ当たりしたのだろう。そんな事をしても、何にもならないぞ」
「そんな事はわかっている。でも俺は…マリアを守れなかった自分の不甲斐なさが、どうしても許せないんだ…」
俺がもっとマリアを気にかけていれば、こんな事件は起こらなかったかもしれない。
「何を言っているんだ。お前の嫉妬深さのお陰で、マリアは助かったんだろう。レィークス侯爵も夫人も、お前には本当に感謝していたぞ。でも…百歩譲って居場所を特定できる機械はいいとしても、録音までするなんて、さすがに気持ち悪いぞ…」
父上がジト目で俺を見てくる。
「あなた、その録音のお陰で、今回犯人を捕まえる事が出来たのでしょう。そもそも、会話を聞くためには、ネックレスを回収しないといけない訳だし。毎回私の会話を盗み聞きしていたあなたが言える事かしら?」
「違う…あれは誤解なんだ…」
「何が誤解なの!ライアンの嫉妬深さはあなたに似たのだから、仕方がないでしょう」
目の前で両親がギャーギャー騒いでいる。正直父上が嫉妬深いなんて今はどうでもいい。食事なんて喉を通らないが、それでもなんとか胃におさめ、自室へと向かう。
騎士団の衣装に着替えると、馬車に乗り込んだ。
後ろで父上が「待ってくれ、私も行く」と叫んでいたが、無視して出発した。いい大人なんだから、1人で王宮に来られるだろう。それに俺には、寄らないといけないところがあるからな。
そう、マリアの元だ。侯爵家に着くと、改めておじさんとおばさんに頭を下げられた。2人に軽く会釈をした後、すぐにマリアの部屋へと向かった。
「マリア」
ベッドに駆け寄ると、眠るマリアの姿が。全身綺麗に洗ってもらったのだろう。血一つ付いていない。
「マリア、昨日は助けるのが遅くなってごめんな。俺もお前を愛している」
そう耳元で囁くと、そのまま抱き起して抱きしめた。温かい…よかった、マリアは生きているんだな。
ギューッとマリアを抱きしめた後、ベッドに寝かせた。そして首には、ネックレスを付けた。これはマリアのものだ。勝手に持ち出して悪かったな。
本当はずっと傍にいたい。でも、俺にはやらなければいけない事がある。おでこに口づけを落とすと、そのまま部屋を出た。
「ライアン様」
俺に声を掛けてきたのは、マリアの専属メイド、リラだ。後ろには何人かの使用人もいる。
「ライアン様、お嬢様を助けて頂き、ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
深々と頭を下げる使用人たち。
「頭を上げてくれ。それに、俺に礼を言う必要は無い。俺はマリアをすぐに助けられなかったのだから。それより、マリアの事を頼んだぞ」
使用人たちにそう伝え、急いで馬車へと乗り込む。
「ライアン、待ってくれ。王宮に行くのだろう。私も一緒に行くよ」
乗り込んできたのは、マリアの父親だ。
「おじさん、俺さ。あの後、あの女に小屋に閉じ込められた後のマリアの様子を、音声で聞いたんだ。そしたらさ…何度も何度も俺に助けを求めていたんだよ…きっとものすごく苦しかっただろうに…途中で血を吐きながらも、何度も何度も。その音声を聞いた時、俺は自分の無力さ、無能さに心底幻滅した。マリアが誘拐されたとき、もう二度とマリアを傷つける者を近寄らせないって、マリアを守るって誓ったのに、俺は…」
抑えていた涙が、溢れ出す。
「ライアン、私はね。君には本当に感謝しているのだよ。ライアンが発見してくれなければ、マリアは間違いなく命はなかった。マリアに居場所が特定できる機械を付けていたと聞いた時は驚いたが、それだけマリアを守ろうとしてくれていたのだろう?たとえあの事件を防げたとしても、きっとディースティン男爵令嬢は、別の方法を考えただろうからね。だから、どうか自分を責めないでくれ。君はマリアの命の恩人なのだから」
「おじさん…ありがとう…」
涙を流す俺の背中を、優しくさすってくれるおじさん。
「さあ、ライアン、いつまでも泣いていられないぞ。もうすぐ王宮に着く。私たちの可愛いマリアを傷つけたあの女を、しっかりと裁こうではないか」
そうだ、今はあの女を裁くことが先決だ。馬車から降りると、大会議室へと通された。そこには既に陛下や王太子殿下、騎士団長や副騎士団長、さらに伯爵以上の貴族も集まっていた。
「ライアン、お前先に出て行ったのに、来るのが遅かったじゃないか?そうか、マリアの様子を見に行っていたんだな。さあ、早く座れ」
父上に促され、席に付いた。いよいよ話し合いが始まる。
「ライアン、昨日は大変だったな。今日は急遽伯爵以上が集まって、昨日の事件について、話し合いが行われる。陛下も王太子殿下も、早めに処罰を与えたいと考えている様でな。もちろん、お前も参加する様に」
「もちろんだ!あの女だけは、絶対に許さない!」
つい拳を強く握ってしまった。
「お前は少し感情を抑えろ。右手のその傷、どうせ壁にでも八つ当たりしたのだろう。そんな事をしても、何にもならないぞ」
「そんな事はわかっている。でも俺は…マリアを守れなかった自分の不甲斐なさが、どうしても許せないんだ…」
俺がもっとマリアを気にかけていれば、こんな事件は起こらなかったかもしれない。
「何を言っているんだ。お前の嫉妬深さのお陰で、マリアは助かったんだろう。レィークス侯爵も夫人も、お前には本当に感謝していたぞ。でも…百歩譲って居場所を特定できる機械はいいとしても、録音までするなんて、さすがに気持ち悪いぞ…」
父上がジト目で俺を見てくる。
「あなた、その録音のお陰で、今回犯人を捕まえる事が出来たのでしょう。そもそも、会話を聞くためには、ネックレスを回収しないといけない訳だし。毎回私の会話を盗み聞きしていたあなたが言える事かしら?」
「違う…あれは誤解なんだ…」
「何が誤解なの!ライアンの嫉妬深さはあなたに似たのだから、仕方がないでしょう」
目の前で両親がギャーギャー騒いでいる。正直父上が嫉妬深いなんて今はどうでもいい。食事なんて喉を通らないが、それでもなんとか胃におさめ、自室へと向かう。
騎士団の衣装に着替えると、馬車に乗り込んだ。
後ろで父上が「待ってくれ、私も行く」と叫んでいたが、無視して出発した。いい大人なんだから、1人で王宮に来られるだろう。それに俺には、寄らないといけないところがあるからな。
そう、マリアの元だ。侯爵家に着くと、改めておじさんとおばさんに頭を下げられた。2人に軽く会釈をした後、すぐにマリアの部屋へと向かった。
「マリア」
ベッドに駆け寄ると、眠るマリアの姿が。全身綺麗に洗ってもらったのだろう。血一つ付いていない。
「マリア、昨日は助けるのが遅くなってごめんな。俺もお前を愛している」
そう耳元で囁くと、そのまま抱き起して抱きしめた。温かい…よかった、マリアは生きているんだな。
ギューッとマリアを抱きしめた後、ベッドに寝かせた。そして首には、ネックレスを付けた。これはマリアのものだ。勝手に持ち出して悪かったな。
本当はずっと傍にいたい。でも、俺にはやらなければいけない事がある。おでこに口づけを落とすと、そのまま部屋を出た。
「ライアン様」
俺に声を掛けてきたのは、マリアの専属メイド、リラだ。後ろには何人かの使用人もいる。
「ライアン様、お嬢様を助けて頂き、ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
深々と頭を下げる使用人たち。
「頭を上げてくれ。それに、俺に礼を言う必要は無い。俺はマリアをすぐに助けられなかったのだから。それより、マリアの事を頼んだぞ」
使用人たちにそう伝え、急いで馬車へと乗り込む。
「ライアン、待ってくれ。王宮に行くのだろう。私も一緒に行くよ」
乗り込んできたのは、マリアの父親だ。
「おじさん、俺さ。あの後、あの女に小屋に閉じ込められた後のマリアの様子を、音声で聞いたんだ。そしたらさ…何度も何度も俺に助けを求めていたんだよ…きっとものすごく苦しかっただろうに…途中で血を吐きながらも、何度も何度も。その音声を聞いた時、俺は自分の無力さ、無能さに心底幻滅した。マリアが誘拐されたとき、もう二度とマリアを傷つける者を近寄らせないって、マリアを守るって誓ったのに、俺は…」
抑えていた涙が、溢れ出す。
「ライアン、私はね。君には本当に感謝しているのだよ。ライアンが発見してくれなければ、マリアは間違いなく命はなかった。マリアに居場所が特定できる機械を付けていたと聞いた時は驚いたが、それだけマリアを守ろうとしてくれていたのだろう?たとえあの事件を防げたとしても、きっとディースティン男爵令嬢は、別の方法を考えただろうからね。だから、どうか自分を責めないでくれ。君はマリアの命の恩人なのだから」
「おじさん…ありがとう…」
涙を流す俺の背中を、優しくさすってくれるおじさん。
「さあ、ライアン、いつまでも泣いていられないぞ。もうすぐ王宮に着く。私たちの可愛いマリアを傷つけたあの女を、しっかりと裁こうではないか」
そうだ、今はあの女を裁くことが先決だ。馬車から降りると、大会議室へと通された。そこには既に陛下や王太子殿下、騎士団長や副騎士団長、さらに伯爵以上の貴族も集まっていた。
「ライアン、お前先に出て行ったのに、来るのが遅かったじゃないか?そうか、マリアの様子を見に行っていたんだな。さあ、早く座れ」
父上に促され、席に付いた。いよいよ話し合いが始まる。
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