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第42話:あの女だけは絶対に許さない~ライアン視点~

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一旦騎士団の本部に向かうと、ジャックやジンたちも来ていた。

「ライアン、話しは聞いたぞ。それで、マリアちゃんは…」

「ああ、一命を取り留めたよ。とにかく、今から俺は犯人を捕まえに行ってくる」

「俺たちも行くよ。話は全て通信機で聞いたからな。それにしても、ディースティン男爵令嬢め。なんて恐ろしい女なんだ…。とにかく、早く捕まえに行こうぜ」

騎士団員たちと一緒に、それぞれ馬にまたがり、男爵家を目指す。男爵家の前に着いたところで、団長に話しかけられた。

「ライアン、これは陛下から預かった逮捕状だ。これをお前に渡す。お前の手で、犯人を捕まえて、王宮の地下牢に運べ。俺は男爵家の家宅捜索に参加する。ジャック、ジン、お前たちはライアンの補助をしてやれ」

「「はい」」

「ありがとうございます、団長。それじゃあ、行きましょう」

ゆっくりと男爵家に近づく。すると門番が飛んできた。

「これは騎士団長様、どうされましたか?大きな事件でも起きたのですか?」

「ああ…侯爵令嬢マリア・レィークスを毒殺しようとした罪で、男爵令嬢クラシエ・ディースティンに逮捕状が出ている。今すぐ屋敷に案内しろ」

「何ですって…お嬢様が?かしこまりました…どうぞこちらです」

門番が門を開けたところで、一斉に屋敷へと突入していく。

「クラシエ・ディースティンはいるか?」

玄関に入ると、すぐにあの女の名前を呼んだ。メイドたちが何事かと固まっている。

「騎士団の皆様、一体どうされたのですか?」

やって来たのは、ディースティン男爵と夫人だ。

「侯爵令嬢マリア・レィークスを毒殺しようとした罪で、男爵令嬢クラシエ・ディースティンに逮捕状が出ている。今すぐ娘を呼んでこい」

「クラシエが…マリア様を…そんな、何かの間違いでは」

「いいや、決定的証拠もある。これを聞け」

俺は証拠として持ってきていた音声を両親に聞かせてやった。

「そんな…クラシエが…」

フラフラとその場にへたり込む両親。

「男爵家を家宅捜索させてもらう。ライアン、容疑者を確保しろ」

「はい!」

屋敷に入ろうとした時だった。

「ライアン、クラシエ嬢を捕まえたぜ。窓から逃げようとしてやがったんだ」

「離して、どうして私が罪に問われるのよ。証拠はあるの?証拠は?第一、どうやってあの女を見つけたのよ。人目に付かない林の建屋に置いて来たのに」

こいつ、自分で暴露しやがったな。

「クラシエ、あなた…なんて事を…」

夫人が泣き崩れている。こうなった以上、男爵家はもう取り潰されるだろう。こんなバカな娘を育てたのだから、自業自得だな。

「とにかくこの女を王宮の地下牢に連れていくぞ。話はそれからだ!」

「嫌よ、離して!」

暴れる女を縄で縛り上げると、そのまま馬車に放り込んだ。そして向かいに座る。女の隣にはジンが、俺の隣にはジャックが座っている。

女が俺を睨みつけている。この女、相当気が強いんだな。

「ねえ、どうやってマリア嬢を助け出したの?それくらい教えてくれてもいいじゃない」

ギャーギャー騒ぐ女を睨みつけた。

「黙れ!俺は今、ものすごく機嫌が悪いんだ。これ以上話すと、お前の舌を切り落とすぞ」

この女の顔を見ているだけで、虫唾が入る。本当はこの場で八つ裂きしてやりたい。でも、俺を信じて任せてくれた騎士団長の顔を潰すわけにはいかない。怒りを必死に抑え、なんとか王宮の地下牢に連れて来た。

そして、女を地下牢にぶち込んだ。

「おい、悪いが今からこの女の事情聴取をする。すぐに手配を整えてくれ」

看守に指示を出し、取調室へと向かった。

「ライアン、今から取り調べをするのか?もう遅いぞ」

「何を言っているんだ。団長たちも今、必死に男爵家を家宅捜索しているんだ。それに俺は一刻も早く、あの女を裁きたいんだ」

「…わかったよ。それじゃあ、やるか」

俺とジャック、ジン、さらに副騎士団長も今回の立ち合いに参加してくれるとの事。取り調べの様子は、録画されることになっている。

しばらくすると、縄で縛られた女がやって来た。さっきとは打って変わって、泣きそうな顔をしている。そんな顔をしても、俺には通用しないがな。

席に付くと、ポロポロと涙を流す女。

「あの…私がマリア様を毒殺しようと先ほどお伺いしましたが、私はそんな事をしておりません。無実です。どうか信じて下さい」

上目使いで泣きながら訴える女。さすがの変貌ぶりに、ジャックやジン、副騎士団長までも目を丸くしている。こいつ、俺たちをバカにしているのか?


「何を今さらバカな事を…いいだろう、お前がマリアを毒殺しようとした証拠を見せてやる」

俺は持っていたネックレスを機械にセットし、音声を聞かせてやった。クソ、何度聞いても胸糞悪い!

「こんなの出鱈目だわ。そもそも、どうやって音声を録音したのよ。あの時あの場所には、マリア様と私しかいなかったはずよ!」

またこいつ、自分で暴露したな。本当に頭の悪い奴だ。

「マリアには常に居場所を特定できるネックレスを付けさせていたんだよ。ちなみにこのネックレス、24時間分の音声も録音できる優れものだ」

「そのネックレス…確かにマリア様が付けていたわ。それにしても、そんなものを付けさせるなんて、気持ち悪い男ね。この変態!」

「うるさい!俺はマリアを守る為なら、何だってする。とにかく、こっちには証拠がそろっているんだ。お前は罪から逃げられない。しっかり罪を償うんだな」

「うるさいのはあんたでしょう!あの女が全て悪いのよ!あの女さえいなければ、ヒューゴ様は私を愛してくれたのに」

興奮状態からか、ガタガタと暴れ始めた女。

「犯人がかなり興奮している。一旦取り調べは終わりだ。この女を地下牢に連れていけ」

副騎士団長の指示で、再び地下牢へと運ばれて行った。

「ライアン、気持ちはわかるが少し落ち着け。とにかく、今日はもう帰れ。色々とあって疲れているだろう。ジャック、ジン、悪いがライアンを送ってやれ」

「「はい」」

「ほら、ライアン、行くぞ」

何があの女が全て悪いだ!何があの女がいなければヒューゴ様は愛してくれたはずだ!そんなふざけた理由でマリアを!

バァァン!

どうしても怒りを抑えられなかった俺は、近くにあった壁を思いっきり叩いたのだった。
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