次は絶対に幸せになって見せます!

Karamimi

文字の大きさ
41 / 62

第41話:犯人を捕まえろ~ライアン視点~

しおりを挟む
「悪いが一度、家に帰りたいんだ。どうしても取りに行きたいものがあってな」

馬車に乗り込むと、すかさず御者に指示を出した。一旦屋敷の戻ると、俺はあるものをポケットに入れると、専属執事と一緒に馬車に乗り込み、貴族学院を目指す。

貴族学院に着くと、学院の先生たちはもちろん、既に陛下と王太子殿下、さらに騎士団長と副騎士団長たちも集まっていた。

「ライアン、マリア嬢が何者かに毒を盛られたと聞いた。それで、マリア嬢は大丈夫なのか?」

真っ青な顔で俺に話しかけてきたのは、王太子殿下だ。

「はい、何度か吐血したりしておりましたが、解毒剤のお陰で一命は取り留めました。だた、2~3日間眠り続けるそうです」

「そうか…一体誰がそんなひどい事を…」

ギューッと唇を噛む王太子殿下。こいつ、きっとまだマリアが好きなのだろう。

「ライアン、それでマリア嬢を見つけた場所はどこだ。案内してくれ」

「わかりました、こっちです」

皆でマリアが閉じ込められていた場所へと向かった。辺りは既に真っ暗なので、灯りを照らしながらゆっくり進んでいく。

「ここです。ドアには南京錠が掛けられていたので、俺がけ破りました」

皆がゆっくりと中に入って行く。

「ここは確か、以前ピクニックを開催していた時、ちょっとした荷物置き場に使っていた場所ですね。ピクニックが中止になってからは使われていなかったので、存在を忘れていたくらいですよ」

「なるほど。だから中には何にもないのか。マリアはここで倒れていたのだな」

父上が指さした場所には、大量の血が…

「こんなに大量に血を吐いたのか?本当にマリア嬢は無事なんだろうな!」

王太子殿下が俺に詰め寄って来る。

「大丈夫です。心臓はしっかり動いておりました。ただ、俺が見つけた時は、痛みと苦しみで、もう動けなくなっていましたが…本当に見ていられませんでした…」

あんなに苦しそうなマリアは初めて見た。もう二度と、あんな姿は見たくない。唇を噛み、強く拳を握った。

「ここには何もなさそうだが、とにかく犯人の手掛かりがこの林にあるかもしれない。今日はもう暗い、明日の朝から捜索しよう。それから、犯人が見つかるまでは、貴族学院は休みにしよう。明日の朝一番に、生徒たちに伝えろ」

陛下自ら指示を出している。

「犯人なら…わかるかもしれません…」

俺のつぶやきに、一斉に皆がこちらを見た。

「ライアン、お前、何を言っているんだ?どういう事が説明しろ」

「ライアン、どういう事だい?僕たちにわかる様に話してくれ」

一斉に皆が詰め寄って来る。

「ここではお話しは出来ません。一度貴族学院へ戻りましょう」

速足で貴族学院に戻ると、専属執事が飛んできた。

「坊ちゃま、お戻りをお待ちしておりました。坊ちゃまがおっしゃった通り、バッチリ音声が録音されていましたよ」

「そうか、それは良かった」

「おいライアン、さっき犯人が分かるかもしれないと言っていたな。どういう事が説明しろ」

父上が俺に詰め寄って来た。皆も俺に注目している。

「俺はマリアに、居場所を特定できる機械だけでなく、録音機能が付いたネックレスを持たせていたのです。それがこのネックレスです」

「それは、いつもマリア嬢が首から下げていたネックレス」

「そうです。このネックレスが、全てを録音していたのです。俺たちが現場に行っている間に、執事に確認させました。悪いが音声を流してくれるか?」

「はい、かしこまりました」

ネックレスを専用の機械にセットすると、マリアの声が聞こえてきた。どうやら貴族学院が終わったあたりから再生されている様だ。

そこには、全ての真実が収められていた。そうか、あの女がマリアを…

そう、犯人は男爵令嬢、クラシエ・ディースティンだったのだ。どうやら王太子殿下が好きなあの女は、マリアがいる限り自分は愛されないと勝手に思い込み、マリアを殺そうとしたらしい。

今まで感じた事のない怒りが、体中から湧き上がる。

「ドン!何なんだあの女は!今すぐクラシエ・ディースティンを捕まえろ!ディースティン男爵家、絶対に許さない!私の可愛いマリアに手を出した事、絶対に後悔させてやる」

いつも穏やかなマリアの父親が、顔を真っ赤にして怒り狂っている。そりゃそうだ、俺も怒りで頭がおかしくなりそうだ。

「とにかく、今すぐディースティン男爵家に向かい、家宅捜索を行え。もちろん、クラシエ嬢も捕まえるんだ」

陛下の指示で、騎士団長たちがディースティン男爵家へ向かう準備を始めた。

「団長、俺も連れて行ってください。あの女だけは、絶対に許せないんです。俺の手で、捕まえたいのです」

マリアを苦しめたあの女だけは、絶対に許せない!

「わかった、お前も騎士団員だ。俺たちと一緒に来い。ただ…お前、マリア嬢の血を浴びたのだろう。団服が血だらけだぞ。着替えてこい」

「坊ちゃま、新しいお召し物です」

すぐに執事が新しい騎士団の服を持ってきてくれたので、急いで着替えた。そして、そのまま団長たちと一緒に、馬車に乗り込んだのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。

MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。 記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。 旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。 屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。 旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。 記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ? それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…? 小説家になろう様に掲載済みです。

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。 新聞と涙 それでも恋をする  あなたの照らす道は祝福《コーデリア》 君のため道に灯りを点けておく 話したいことがある 会いたい《クローヴィス》  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます 2025.2.14 後日談を投稿しました

【完結】出来損ないと罵られ続けた“無能な姫”は、姉の代わりに嫁ぐ事になりましたが幸せです ~あなた達の後悔なんて知りません~

Rohdea
恋愛
──隠されていた私の真実(ほんとう)の力はあなたに愛されて知りました。 小国の末姫、クローディアは、王族なら誰もが持つはずの特殊能力を授からなかったせいで、 誰からも愛されず“無能な姫”と罵られて来た。 そんなある日、大国の王から姉に縁談話が舞い込む。 王妃待遇だけど後妻、年齢も親子ほど離れている為、 泣いて嫌がった姉は自分の身代わりとしてクローディアを嫁がせればいいと言う。 反発するクローディア。 しかし、国としてクローディアは身代わりとして嫁ぐ事が決定してしまう。 罪悪感に苛まれたまま、大国に嫁いでいくクローディア。 しかし、何故かそんなクローディアを出迎えたのは…… (あれ? 私、後妻になるのでは??) それだけでなく、嫁ぎ先での生活は想像したものと大きく違っていた。 嫁いだ先でクローディアは愛される事を知り、 また、自分に隠された真実(ほんとう)の力を知る事になる。 一方、何も知らず“無能な姫”だと言ってクローディアを手放した祖国の者達は──……

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】 幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。 そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。 クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。

【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

藍生蕗
恋愛
 子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。  しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。  いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。 ※ 本編は4万字くらいのお話です ※ 他のサイトでも公開してます ※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。 ※ ご都合主義 ※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!) ※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。  →同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

処理中です...