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第40話:マリアの家族が来ました~ライアン視点~
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「ライアン殿、マリア嬢はもう大丈夫ですよ。ただ、解毒剤の影響で、2~3日目覚めないかもしれません」
「先生、ありがとうございます。とにかく、マリアは連れて帰ります」
先生たちに頭を下げ、マリアを抱きかかえようとした時だった。
「「マリア」」
「姉上」
マリアの両親とヴァン、さらに家の両親が真っ青な顔をしてやってきた。
「あぁ…マリア…なんて事だ。血だらけではないか」
「マリア…可哀そうに…」
俺からマリアを奪い取り、泣きながら抱きしめるおじさんとおばさん。いつも穏やかなヴァンですら、怒りで顔が歪んでいる。
「先生、マリアは…マリアは大丈夫なのでしょうか?」
泣きながら先生に詰め寄るおじさん。きっとマリアが助かった事を、まだ知らないのだろう。
「マリア嬢はもう大丈夫ですよ。どうやら何者かに毒を飲まされていた様で、ライアン殿がここまで運んできてくれたのです。毒は徐々に体を蝕んでいくタイプのものだった事と、発見が早かったのが不幸中の幸いでした。ただ、解毒剤の影響で、2~3日程度は眠ったままでしょう」
「でも先生、マリアは血だらけですわ。本当に大丈夫なのですか?」
マリアを抱きしめながら、先生に訴えるのはおばさんだ。
「はい、毒のせいで何度か吐血してしまった様ですが、問題ありません」
先生の言葉にホッと胸をなでおろすおばさん。
「ライアン、お前も血が服に付いているぞ。それにしても、お前の御者から話を聞いてびっくりしたよ。それで、一体何があったんだ?」
父上が俺に話しかけてきた。
「それが…放課後俺はいつもの様に騎士団の稽古に行っていたんだ。稽古が終わった後、マリアがきちんと家に帰ったか確認するため、居場所を特定する機械を確認したら、貴族学院の林を指していて。何かあったのではと、慌ててマリアのいる林に向かったら、苦しそうにもがいているマリアを見つけたんだ。この血は、林から医務室まで運ぶ途中、マリアが吐血してしまって、それが掛かっただけだ。それにしても、一体誰がマリアをこんな酷い目に合わせたんだ!」
今まではマリアの事が心配すぎて、犯人の事を考える余裕はなかった。でも、マリアが助かった今、急に怒りが沸き上がって来た。
「ライアン、お前がマリアを助けてくれたんだな。ありがとう」
「本当にありがとう、ライアン」
「おじさん、おばさん、俺に礼なんて言わないでくれ。俺はマリアが誘拐されたとき、もう二度とマリアに怖い思いをさせないと誓ったんだ。それなのに、俺はマリアを守れなかった…」
悔しくて、唇を噛む。
「落ち着け、ライアン。それにしてもお前、まさかマリアに居場所を特定できる機械を付けていたなんてな。さすがにドン引きだが、でもそのお陰でマリアは助かったんだ。お前の嫉妬深さも、たまには役に立つんだな」
俺の肩を叩きながら、笑っている父上。こんな時に笑うなんて!
「父上、何が可笑しいんだ。マリアが死にかけたんだぞ!俺はマリアを見つけた時、本当に生きた心地がしなかったんだ!」
「そうだな…笑ったりしてすまなかった。とにかく、すぐに王宮と騎士団にも連絡を入れよう。マリアを殺そうとした犯人を絶対に捕まえないと」
「そうね。でも、まずはマリアちゃんをお家に返してあげましょう。制服は血だらけだし、このまま医務室に寝かせておくのは可哀そうだわ」
確かに母上の言う通りだ。とにかく、まずはマリアを屋敷に連れて行かないと。
「俺がマリアを屋敷まで運ぶ。屋敷に運んだらすぐに戻るから、父上とおじさんは、後を頼む」
「おい、ライアン。お前がここを離れたらまずいだろう。とにかく…」
「いいや、俺がマリアを運ぶ。それに王族も騎士団長たちもすぐには来ないでしょうから。それじゃあ、急いで行ってきます」
マリアを抱きかかえると、門を目指す。後ろから、母上とおばさん、さらにヴァンが付いてくる。門に着くと、そのまま馬車に乗り込んだ。
改めてマリアを見ると、顔色は随分戻ってきてはいるが、服は血だらけ、さらに口の周りにも血が付いている。
「マリア、あの場所でずっと1人で痛みや苦しみに耐えていたんだな。ごめんな、マリア」
ギューッとマリアを抱きしめた。このまま息を引き取ってしまうのではないかと思うほど、ピクリとも動かない。俺は急に不安になり、マリアの胸に耳を当てた。
「よかった…心臓、ちゃんと動いている」
ドクドクと聞こえる心臓の音。この音が、妙に心地いい。
屋敷に着くと、マリアの専属メイドのリラが真っ青な顔をして飛んできた。
「お嬢様…どうして…」
そう言って泣き崩れてしまった。そんなリラを、他のメイドたちが支えている。ただ他の使用人たちも、皆真っ青な顔をしている。中にはリラと同じように泣き崩れているメイドもいた。
「リラ、それに皆、心配かけたわね。でも、マリアは無事よ。ちょっと毒を盛られて、吐血したみたいだから血だらけだけれど。命に別状はないから」
おばさんが使用人に説明をしている。ホッと胸をなでおろす使用人たち。俺はマリアを連れ、マリアの部屋へと向かう。そして、ベッドに寝かせた。久しぶりに入ったマリアの部屋。あの頃と、あまり変わっていないな…
「ライアン、ありがとう。とにかくこのまま寝かせておくのは可哀そうだから、まずは体を綺麗にしてから寝かせようと思っているの。だから、あなたはもう戻って。あなたは第一発見者なのよ。色々と説明しなければいけない事もあるだろうし。何より、マリアの為にも犯人を捕まえて」
ふとマリアの方を見ると、リラを含めたメイドたちが、マリアの顔を丁寧に拭いていた。そんなマリアにそっと近づく。
「マリア、お前をこんな目に合わせた犯人は、絶対俺が捕まえてやるからな」
マリアの頭を撫でながら、そう話しかける。胸には俺がプレゼントしたネックレスが光っていた。俺はそのネックレスをそっと首から外した。
「それじゃあおばさん、ヴァン、母上、マリアの事、頼んだぞ」
そう伝え、部屋を後にする。
「待って、ライアン。本当は僕も父上やライアンと一緒に、姉上をこんな目に合わせた犯人を捕まえたい。でも僕はまだ幼くて、足手まといになってしまうから…だからお願い、絶対姉上をこんな目に合わせた犯人を捕まえて」
必死に俺に訴えてくるヴァン。
「当たり前だろう、俺が必ずマリアに毒を盛った犯人を捕まえてやる。だから、安心しろ」
そうヴァンに伝えた。
そして俺は、再び馬車に乗り込んだのだった。
「先生、ありがとうございます。とにかく、マリアは連れて帰ります」
先生たちに頭を下げ、マリアを抱きかかえようとした時だった。
「「マリア」」
「姉上」
マリアの両親とヴァン、さらに家の両親が真っ青な顔をしてやってきた。
「あぁ…マリア…なんて事だ。血だらけではないか」
「マリア…可哀そうに…」
俺からマリアを奪い取り、泣きながら抱きしめるおじさんとおばさん。いつも穏やかなヴァンですら、怒りで顔が歪んでいる。
「先生、マリアは…マリアは大丈夫なのでしょうか?」
泣きながら先生に詰め寄るおじさん。きっとマリアが助かった事を、まだ知らないのだろう。
「マリア嬢はもう大丈夫ですよ。どうやら何者かに毒を飲まされていた様で、ライアン殿がここまで運んできてくれたのです。毒は徐々に体を蝕んでいくタイプのものだった事と、発見が早かったのが不幸中の幸いでした。ただ、解毒剤の影響で、2~3日程度は眠ったままでしょう」
「でも先生、マリアは血だらけですわ。本当に大丈夫なのですか?」
マリアを抱きしめながら、先生に訴えるのはおばさんだ。
「はい、毒のせいで何度か吐血してしまった様ですが、問題ありません」
先生の言葉にホッと胸をなでおろすおばさん。
「ライアン、お前も血が服に付いているぞ。それにしても、お前の御者から話を聞いてびっくりしたよ。それで、一体何があったんだ?」
父上が俺に話しかけてきた。
「それが…放課後俺はいつもの様に騎士団の稽古に行っていたんだ。稽古が終わった後、マリアがきちんと家に帰ったか確認するため、居場所を特定する機械を確認したら、貴族学院の林を指していて。何かあったのではと、慌ててマリアのいる林に向かったら、苦しそうにもがいているマリアを見つけたんだ。この血は、林から医務室まで運ぶ途中、マリアが吐血してしまって、それが掛かっただけだ。それにしても、一体誰がマリアをこんな酷い目に合わせたんだ!」
今まではマリアの事が心配すぎて、犯人の事を考える余裕はなかった。でも、マリアが助かった今、急に怒りが沸き上がって来た。
「ライアン、お前がマリアを助けてくれたんだな。ありがとう」
「本当にありがとう、ライアン」
「おじさん、おばさん、俺に礼なんて言わないでくれ。俺はマリアが誘拐されたとき、もう二度とマリアに怖い思いをさせないと誓ったんだ。それなのに、俺はマリアを守れなかった…」
悔しくて、唇を噛む。
「落ち着け、ライアン。それにしてもお前、まさかマリアに居場所を特定できる機械を付けていたなんてな。さすがにドン引きだが、でもそのお陰でマリアは助かったんだ。お前の嫉妬深さも、たまには役に立つんだな」
俺の肩を叩きながら、笑っている父上。こんな時に笑うなんて!
「父上、何が可笑しいんだ。マリアが死にかけたんだぞ!俺はマリアを見つけた時、本当に生きた心地がしなかったんだ!」
「そうだな…笑ったりしてすまなかった。とにかく、すぐに王宮と騎士団にも連絡を入れよう。マリアを殺そうとした犯人を絶対に捕まえないと」
「そうね。でも、まずはマリアちゃんをお家に返してあげましょう。制服は血だらけだし、このまま医務室に寝かせておくのは可哀そうだわ」
確かに母上の言う通りだ。とにかく、まずはマリアを屋敷に連れて行かないと。
「俺がマリアを屋敷まで運ぶ。屋敷に運んだらすぐに戻るから、父上とおじさんは、後を頼む」
「おい、ライアン。お前がここを離れたらまずいだろう。とにかく…」
「いいや、俺がマリアを運ぶ。それに王族も騎士団長たちもすぐには来ないでしょうから。それじゃあ、急いで行ってきます」
マリアを抱きかかえると、門を目指す。後ろから、母上とおばさん、さらにヴァンが付いてくる。門に着くと、そのまま馬車に乗り込んだ。
改めてマリアを見ると、顔色は随分戻ってきてはいるが、服は血だらけ、さらに口の周りにも血が付いている。
「マリア、あの場所でずっと1人で痛みや苦しみに耐えていたんだな。ごめんな、マリア」
ギューッとマリアを抱きしめた。このまま息を引き取ってしまうのではないかと思うほど、ピクリとも動かない。俺は急に不安になり、マリアの胸に耳を当てた。
「よかった…心臓、ちゃんと動いている」
ドクドクと聞こえる心臓の音。この音が、妙に心地いい。
屋敷に着くと、マリアの専属メイドのリラが真っ青な顔をして飛んできた。
「お嬢様…どうして…」
そう言って泣き崩れてしまった。そんなリラを、他のメイドたちが支えている。ただ他の使用人たちも、皆真っ青な顔をしている。中にはリラと同じように泣き崩れているメイドもいた。
「リラ、それに皆、心配かけたわね。でも、マリアは無事よ。ちょっと毒を盛られて、吐血したみたいだから血だらけだけれど。命に別状はないから」
おばさんが使用人に説明をしている。ホッと胸をなでおろす使用人たち。俺はマリアを連れ、マリアの部屋へと向かう。そして、ベッドに寝かせた。久しぶりに入ったマリアの部屋。あの頃と、あまり変わっていないな…
「ライアン、ありがとう。とにかくこのまま寝かせておくのは可哀そうだから、まずは体を綺麗にしてから寝かせようと思っているの。だから、あなたはもう戻って。あなたは第一発見者なのよ。色々と説明しなければいけない事もあるだろうし。何より、マリアの為にも犯人を捕まえて」
ふとマリアの方を見ると、リラを含めたメイドたちが、マリアの顔を丁寧に拭いていた。そんなマリアにそっと近づく。
「マリア、お前をこんな目に合わせた犯人は、絶対俺が捕まえてやるからな」
マリアの頭を撫でながら、そう話しかける。胸には俺がプレゼントしたネックレスが光っていた。俺はそのネックレスをそっと首から外した。
「それじゃあおばさん、ヴァン、母上、マリアの事、頼んだぞ」
そう伝え、部屋を後にする。
「待って、ライアン。本当は僕も父上やライアンと一緒に、姉上をこんな目に合わせた犯人を捕まえたい。でも僕はまだ幼くて、足手まといになってしまうから…だからお願い、絶対姉上をこんな目に合わせた犯人を捕まえて」
必死に俺に訴えてくるヴァン。
「当たり前だろう、俺が必ずマリアに毒を盛った犯人を捕まえてやる。だから、安心しろ」
そうヴァンに伝えた。
そして俺は、再び馬車に乗り込んだのだった。
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