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第39話:どうしてこんな事になったんだ~ライアン視点~
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俺の誕生日以降、マリアはなぜか俺を避ける様になった。もしかして、俺の事が嫌いになったのか?そんな不安が俺を襲う。
俺はマリアが俺から離れていく事が怖くて、逐一マリアの居場所をチェックした。マリアに贈ったエメラルドのネックレスには、居場所が特定できる機能が備わっている。他にも録音機能なども付いているが、さすがにその機能を使うつもりはない。
そんなある日、マリアの居場所を確認すると、裏庭を指していた。急いで向かうと、そこにはなんと、マリアがあれほど拒絶していた王太子殿下と2人でいたのだ。
何を話しているのかは聞こえなかったが、2人とも泣いていた。さすがにそんな2人の間に割って入る勇気はないため、その場を後にした。
一体マリアは、何を隠しているんだ?どうして王太子殿下と2人で泣いていたんだ?もしかして本当は、2人は愛し合っているのか?でも、王族は一夫多妻制。1人の男性と幸せになりたと言っていたマリアは、泣く泣く王太子殿下を諦めたのかもしれない。
考えれば考えるほど、悪い方へと進んでしまう。
そんな不安な日々を送っているうちに、気が付けばマリアの誕生日まで1ヶ月を切っていた。あの日以来、王太子殿下はマリアに絡むことは無くなった。とにかくマリアが15歳になったら、すぐに婚約を申し込まないと。
そう思いながら、学院が終わると、いつもの様に騎士団の稽古へと向かった。最近では、リリア嬢やミリアナ嬢と一緒にいる事も多く、今日も3人で話をしていた。本当は俺が馬車まで見送ってやりたいのだが、マリアに“私は大丈夫だから、ライアンは稽古に行って”と言われてから、送るのを止めたのだ。
貴族学院は警備もしっかりしているし、マリアが誘拐されることもないだろう。それに、居場所を特定できる機械も付けさせているしな。そう思っていた。
いつもの様に稽古を終え、家に帰る為に馬車に乗り込む。マリアの奴、最近帰りが遅いんだよな。いつも通り、マリアの居場所をチェックする。
「どういう事だ…なぜこんなところを指しているんだ…」
なんと機械は、貴族学院の外れにある林を指していたのだ。一体こんな場所で何をしているんだ?
「おい、悪いがすぐに貴族学院へ向かってくれ」
急いで御者に指示を出す。なんだか嫌な予感がする。もしかして、貴族学院内で誘拐されたのか?イヤ…でもあの林は貴族学院が管理している場所だ。林の周りを大きな塀で覆われているうえ、護衛もいる。外部の人間が入る事なんて出来ないはずだ。
もしかしたら、ピクニックでもしているのか?こんな日も暮れかけた時にか?あり得ない。やっぱり嫌な予感しかしない。
貴族学院に着くと急いで馬車を降りた。
「悪いが君も来てもらえるか?」
何かトラブルに巻き込まれているのなら、俺が1人で行くより、誰かと一緒に行った方がいい。そんな思いから、御者も連れていく事にした。
マリアの居場所を特定できる機械を頼りに、どんどん奥へと進んでいく。
「坊ちゃま、どこまで行かれるのですか?」
不審に思った御者が、俺に話しかけてきた。
「マリアがこの奥にいるんだ。とにかく急ごう」
「マリア様がですか?こんな場所に?」
あり得ないと言った表情を浮かべつつも付いてくる御者。そして、小さな小屋の前で止まった。ここにマリアがいるはずだ。
「マリア、大丈夫か?」
そう叫ぶが、返答がない。増々不安になってきた。扉に手を掛けるが、南京錠で鍵をかけられているため、開かない。
間違いない、マリアはここに閉じ込められているんだ。俺は思いっきり扉をぶち壊し、急いで中に入った。
そこにいたのは…
口から血を流し、苦しそうに倒れているマリアの姿だった。その姿を見た瞬間、一気に血の気が引いていくのが分かった。
急いでマリアを抱き起す。どうやら意識はある様で、俺を見るとヘラっと笑ったのだ。なんて事だ、マリアが…
近くにいた御者も、マリアの姿を見てかなり驚いている。とにかく、早くマリアを助けないと。そんな思いから、御者に指示を出し、俺もマリアを抱き、急いで医務室へと向かった。
息も荒く苦しそうなマリア。必死に俺に話しかけようとしたのだが、吐血してしまった。俺の服が真っ赤に染まる。その姿を見た瞬間、今まで感じた事のない恐怖が俺を襲う。
俺は一体何をしていたんだ。マリアが誘拐されたとき、もう二度と怖い思いをさせないと誓ったのに。その為に、必死に強くなったのに…それなのに、マリアを命の危機にさらしてしまうなんて。
なぜ俺は、すぐにマリアの居場所を確認しなかったんだ。なぜマリアを馬車まで送らなかったんだ。悔しくて情けなくて、どうしようもない思いが、俺の心を支配する。気が付くと、涙が溢れていた。
そして、何度もマリアに謝った。そんな俺に向かって、マリアが何かを訴えようとしている。頼む、これ以上話さないでくれ。また吐血してしまう。
とにかく急がないと。
急いで医務室に向かうと、先生たちが待っていてくれた。すぐに治療が始まった。どうやら毒を飲まされているらしい。
毒の種類を調べている間も、顔色がどんどん悪くなり、激痛からかうめき声をあげ涙を流している。いてもたってもいられなくて、先生に何度も問いかけた。
マリアがこんなにも苦しんでいるのに、何もできない自分が無性に腹立だしい。どれくらい時間が経っただろう。やっと解毒剤が出来たのだ。
早速解毒剤を打ってもらったマリアは、段々楽になってきたのか、呼吸も整い始めた。ただ酷い眠気に襲われている様で、酷く眠そうだ。
その時だった。マリアが
「ライアン…ありがとう…あい…して…い…」
そう呟いたのだ。
今、マリアは確かに“あいしてい”と言ったよな?
「先生、今マリアは何て言ったのか聞こえましたか?」
俺はつい傍にいた先生に聞き返してしまった。
「“ライアン、ありがとう、愛している”とおっしゃっておりましたね。こんな時に愛の言葉を嘆かれるなんて、よほどライアン殿はマリア嬢に愛されているのですね」
そう言ってにっこり笑っていた。
やっぱり、俺の聞き間違えじゃなかったよな?本当にマリアは俺の事を愛しているのか?なあ、マリア。早く目を覚ましてくれ。そして、お前の気持ちを聞かせてくれ。
眠るマリアをそっと抱きしめたのだった。
俺はマリアが俺から離れていく事が怖くて、逐一マリアの居場所をチェックした。マリアに贈ったエメラルドのネックレスには、居場所が特定できる機能が備わっている。他にも録音機能なども付いているが、さすがにその機能を使うつもりはない。
そんなある日、マリアの居場所を確認すると、裏庭を指していた。急いで向かうと、そこにはなんと、マリアがあれほど拒絶していた王太子殿下と2人でいたのだ。
何を話しているのかは聞こえなかったが、2人とも泣いていた。さすがにそんな2人の間に割って入る勇気はないため、その場を後にした。
一体マリアは、何を隠しているんだ?どうして王太子殿下と2人で泣いていたんだ?もしかして本当は、2人は愛し合っているのか?でも、王族は一夫多妻制。1人の男性と幸せになりたと言っていたマリアは、泣く泣く王太子殿下を諦めたのかもしれない。
考えれば考えるほど、悪い方へと進んでしまう。
そんな不安な日々を送っているうちに、気が付けばマリアの誕生日まで1ヶ月を切っていた。あの日以来、王太子殿下はマリアに絡むことは無くなった。とにかくマリアが15歳になったら、すぐに婚約を申し込まないと。
そう思いながら、学院が終わると、いつもの様に騎士団の稽古へと向かった。最近では、リリア嬢やミリアナ嬢と一緒にいる事も多く、今日も3人で話をしていた。本当は俺が馬車まで見送ってやりたいのだが、マリアに“私は大丈夫だから、ライアンは稽古に行って”と言われてから、送るのを止めたのだ。
貴族学院は警備もしっかりしているし、マリアが誘拐されることもないだろう。それに、居場所を特定できる機械も付けさせているしな。そう思っていた。
いつもの様に稽古を終え、家に帰る為に馬車に乗り込む。マリアの奴、最近帰りが遅いんだよな。いつも通り、マリアの居場所をチェックする。
「どういう事だ…なぜこんなところを指しているんだ…」
なんと機械は、貴族学院の外れにある林を指していたのだ。一体こんな場所で何をしているんだ?
「おい、悪いがすぐに貴族学院へ向かってくれ」
急いで御者に指示を出す。なんだか嫌な予感がする。もしかして、貴族学院内で誘拐されたのか?イヤ…でもあの林は貴族学院が管理している場所だ。林の周りを大きな塀で覆われているうえ、護衛もいる。外部の人間が入る事なんて出来ないはずだ。
もしかしたら、ピクニックでもしているのか?こんな日も暮れかけた時にか?あり得ない。やっぱり嫌な予感しかしない。
貴族学院に着くと急いで馬車を降りた。
「悪いが君も来てもらえるか?」
何かトラブルに巻き込まれているのなら、俺が1人で行くより、誰かと一緒に行った方がいい。そんな思いから、御者も連れていく事にした。
マリアの居場所を特定できる機械を頼りに、どんどん奥へと進んでいく。
「坊ちゃま、どこまで行かれるのですか?」
不審に思った御者が、俺に話しかけてきた。
「マリアがこの奥にいるんだ。とにかく急ごう」
「マリア様がですか?こんな場所に?」
あり得ないと言った表情を浮かべつつも付いてくる御者。そして、小さな小屋の前で止まった。ここにマリアがいるはずだ。
「マリア、大丈夫か?」
そう叫ぶが、返答がない。増々不安になってきた。扉に手を掛けるが、南京錠で鍵をかけられているため、開かない。
間違いない、マリアはここに閉じ込められているんだ。俺は思いっきり扉をぶち壊し、急いで中に入った。
そこにいたのは…
口から血を流し、苦しそうに倒れているマリアの姿だった。その姿を見た瞬間、一気に血の気が引いていくのが分かった。
急いでマリアを抱き起す。どうやら意識はある様で、俺を見るとヘラっと笑ったのだ。なんて事だ、マリアが…
近くにいた御者も、マリアの姿を見てかなり驚いている。とにかく、早くマリアを助けないと。そんな思いから、御者に指示を出し、俺もマリアを抱き、急いで医務室へと向かった。
息も荒く苦しそうなマリア。必死に俺に話しかけようとしたのだが、吐血してしまった。俺の服が真っ赤に染まる。その姿を見た瞬間、今まで感じた事のない恐怖が俺を襲う。
俺は一体何をしていたんだ。マリアが誘拐されたとき、もう二度と怖い思いをさせないと誓ったのに。その為に、必死に強くなったのに…それなのに、マリアを命の危機にさらしてしまうなんて。
なぜ俺は、すぐにマリアの居場所を確認しなかったんだ。なぜマリアを馬車まで送らなかったんだ。悔しくて情けなくて、どうしようもない思いが、俺の心を支配する。気が付くと、涙が溢れていた。
そして、何度もマリアに謝った。そんな俺に向かって、マリアが何かを訴えようとしている。頼む、これ以上話さないでくれ。また吐血してしまう。
とにかく急がないと。
急いで医務室に向かうと、先生たちが待っていてくれた。すぐに治療が始まった。どうやら毒を飲まされているらしい。
毒の種類を調べている間も、顔色がどんどん悪くなり、激痛からかうめき声をあげ涙を流している。いてもたってもいられなくて、先生に何度も問いかけた。
マリアがこんなにも苦しんでいるのに、何もできない自分が無性に腹立だしい。どれくらい時間が経っただろう。やっと解毒剤が出来たのだ。
早速解毒剤を打ってもらったマリアは、段々楽になってきたのか、呼吸も整い始めた。ただ酷い眠気に襲われている様で、酷く眠そうだ。
その時だった。マリアが
「ライアン…ありがとう…あい…して…い…」
そう呟いたのだ。
今、マリアは確かに“あいしてい”と言ったよな?
「先生、今マリアは何て言ったのか聞こえましたか?」
俺はつい傍にいた先生に聞き返してしまった。
「“ライアン、ありがとう、愛している”とおっしゃっておりましたね。こんな時に愛の言葉を嘆かれるなんて、よほどライアン殿はマリア嬢に愛されているのですね」
そう言ってにっこり笑っていた。
やっぱり、俺の聞き間違えじゃなかったよな?本当にマリアは俺の事を愛しているのか?なあ、マリア。早く目を覚ましてくれ。そして、お前の気持ちを聞かせてくれ。
眠るマリアをそっと抱きしめたのだった。
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