今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi

文字の大きさ
12 / 21

12 王国滅亡の危機

しおりを挟む
あんなにわたくしを愛してくださった陛下が…!


陛下と側妃が抱擁した場面を思い出すたび、カーラは失恋したような苦しさで胸が詰まった。


もう、わたくしのことなど…


絶望のどん底にいたカーラの頭に、ふと宰相の言葉がよぎった。


”陛下はカーラ様のお部屋に何度も行こうとされました”


ちょっと待ってカーラ。
陛下の行動が物語っているじゃない。
陛下は側妃に行動を止められ、いいように操られているのかもしれないわ…!


気持ちを強く持ち直し、カーラはさっそく宰相に側妃についての情報収集を命じた。


「側妃は夜になると姿を消すようです」

「逆さまになって天井を歩いているのを見ました」

「人の言葉を話したところを見たことがありません」


王宮の者たちによる奇妙な目撃情報が並ぶ。
やはり人外の者なのよ。


もし側妃がモンスターなのだとしたら、わたくしが王都から遠い地に遠征し、盾の加護が弱った隙を狙って入り込まれたのだわ。


カーラは側妃を監視することにした。




夜。
側妃は噂通りこっそり部屋を抜け出した。
カーラが後をつける。

側妃は階段をあがり、城の屋上まで登っていった。
そして、屋上の窓を開けると、そこから飛び降りた。


「!!!」


カーラが急いで窓に駆けつけると、コウモリのような羽を生やした側妃が空を飛んでいる。
みるみるうちに何百匹ものコウモリが空に集まり始めた。


キーキ
キキキ


不気味な鳴き声があたりに満ちていく。


「側妃の正体はコウモリのモンスターだったの!?何をする気?」

「大変です!陛下のお姿が見えません!!」

「ええっ!陛下は一体どこに──」

「あっ!あんなところに陛下があああ!!」


宰相が蒼白になって空を指差した。


暗い空。
玉のようにふくらんだコウモリの集団の上に、横たわるルアヌの姿が現れた。
リアヌを見下ろし、側妃がじゅるりと舌舐めずりをした。


「王とコウモリ…もしやあれは…」


震える声で宰相が呟いた。


「10年前、西の国を一夜で滅ぼしたというコウモリ女王なのでは!?」

「コウモリ女王!?」

「はい。巨大コウモリに変化した後、王を生贄にし、王都を滅ぼす光の玉を吐くとか」

「それって相当やばいんじゃなくて!?」

「やばいです!やばすぎます!皆のもの、早く陛下をお助けするのだ!!」


宰相が兵士たちに号令をかける。
兵士たちは王宮の庭に大砲を急ぎ準備した。


「コウモリ女王を撃ち落とせ!そうすれば他のコウモリは霧散するだろう」


兵士が大砲の照準をコウモリ女王に定めようとした時。


「キーキキキーキキ」


コウモリ女王が何か唱えた。
すると、夜空の満月が異常なほどの光を放ち始めた。


「まっ、まぶしい!!」

「照準スコープをのぞけない!!」


このままではコウモリ女王を撃ち落とせない。
コウモリ女王は嘲笑うかのようにキキキと鳴き、とうとう巨大コウモリに変化した。


「まずい、時間がありません!早く撃ち落とさないと陛下が生贄に!」


巨大コウモリは口をあんぐりと開けずらりと並んだ鋭い牙をみせた。
真っ黒な口の奥からよどんだ光がみるみる大きくなっていく。
このままルアヌごと撃ち抜く気だ。


「生贄になんか、させませんわ…!」


カーラはリュックの中から何かを掴み、顔に装着した。


「見える、見えるわ!全然眩しくない!」


サングラスだ。真っ黒のレンズが眩しさを防いでくれる。
光弾は最大限にまでふくれあがっていった。


「カーラ、落ち着くのよ。絶対に外さないわ…!」


大砲の照準スコープをのぞきながら自身に言い聞かせる。
恐怖でずっと続いていた手の震えがおさまっていく。

カーラの精神は今や波一つ立たない湖のように集中していた。


側妃になど負けるものですか──!!


巨大コウモリが光弾を吐き出すその瞬間。

カーラは叫んだ。


「陛下はわたくしのものよ!!!」


カーラは大砲の紐を力一杯引いた。



どおおおおおんん!!!



発射された弾丸は巨大コウモリに無慈悲に直撃し、その腹にぽっかりと穴をあけた。


グホギア…!!!!


奇妙な断末魔を最後に巨大コウモリは地面に激突し息絶えた。


「撃ち落としたあ!!!」


一気に歓声があがる。


「やりましたわ!!陛下は──」


だがこれで終わりではなかった。

親玉が死んでルアヌを乗せていたコウモリの玉が崩れ始めていた。
このままではルアヌは空から落下し、命を落としてしまう。


「へ、陛下ああああ!!」


宰相や兵士たちの絶叫がこだます。
ついにコウモリが散り散りなり、ルアヌが落ちて来た。
クッションや布団を持ってこようとするがとても間に合わない。
思わずカーラは駆け出していた。


「陛下!いやあ、陛下ああ!!」


わたくしが下敷きになってでもお救いしますわ!


しかし無情にもカーラはその手前でつまずいた。


「あああっ!」


転んだはずみでリュックからポケットティッシュが転び出た。


ぽわん!


そしてルアヌの落下地点で大きなマットのようにふくらみ、見事ルアヌを受け止めた。


「ナイスキャッチ…」


「ナイスキャッチ、カーラ様!!!」


賞賛の声はしばらくやむことはなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~

キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。 パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。 最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。 さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。 その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。 王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。 こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。 ※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。 ※カクヨムにも掲載中です。

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

須木 水夏
恋愛
 大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。 メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。 (そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。) ※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。 ※ヒーローは変わってます。 ※主人公は無意識でざまぁする系です。 ※誤字脱字すみません。

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

処理中です...