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18 異変
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「カーラ…カーラ」
朝昼夕夜、ルアヌの声がカーラを呼ぶ。
「はい…陛下」
その度にカーラはルアヌの元へ召される。
「愛おしいぞ、カーラ。特にここが──」
ルアヌはカーラの首筋に唇をそわせる。
「陛…下…」
胸の痛みは前より増えた気がしたがルアヌの腕の中にいるといつも忘れてしまう。
わたくし、幸せですわ。
陛下とこのままずっとずっとこうしていたい──
カーラは恍惚の中で夢に落ちていった。
「最近、おやつれでは?体調は大丈夫なのですか?モンスター退治でお疲れなのでは?」
宰相が心配そうにカーラに声をかけてきた。大なまずの後も幾度となくモンスター退治が続いていた。
「大丈夫ですわよ。王国のためですもの」
宰相が部屋を去った後、カーラはまたルアヌに呼ばれた。
「確かにわたくしちょっと元気が足りないかもしれませんわ。こんな時は」
リュックから小袋を取り出す。
「パワーが欲しい時はこれ飲んで、とわかばが言っていましたわ」
カーラはサプリを数粒まとめて水で流し込んだ。
「陛下、参りました」
カーラがルアヌの部屋に足を数歩踏み入れた時、胸に激痛が走った。
「!!!」
カーラはたまらずうずくまる。近づいてくるルアヌの足がゆがんだ視界に入る。
陛下が助けに来てくれた──
ほっとしたカーラの予想は無惨にも外れた。
「やっと心臓にきたか、カーラ」
「え?」
低く冷たい…陛下はこんな声だったろうか?
混乱ぎみの頭でカーラがルアヌを見上げる。ルアヌは見たこともない残忍な表情でカーラを見下ろしていた。
「お前は聖女の力を使いすぎた。まあ、私がモンスターをわざと呼び寄せてお前に力を使わせたのだがね」
待って。
言ってることが頭に入らない。
わざとって?
カーラの顔がこわばっていく。
ルアヌの瞳は死人のようによどんでいる。
陛下じゃない。
危機を察したカーラの芯が急速に冷えていく。
この男は、誰──?
「まだわからないようだな」
凍りつくような声が刺さる。
「私の母がこの前世話になったようだな」
「──────は?」
カーラの口からやっと聞き取れるような小さな声がもれた。
「お前には何度も楽しませてもらった。私はお前が気に入っている。私の妻になれ」
母って…??
ルアヌの目。
赤く光るその目。
変な角度に曲がった首の、赤眼の側妃と重なった。
頭を殴られたような衝撃がカーラを襲った。
そしてようやく理解した。
「──コウモリ女王!!!!」
「ははは、その通り。私はこの男に植え付けられたコウモリ女王の息子だよ」
「なんてこと──」
カーラは絶句した。コウモリ女王との戦いはあれで終わりではなかった。もっと最悪な事態が今まさに起こっていた。
わたくしが感じていた違和感…
陛下が時々、別人のようにみえた、あの違和感は。
聖女の血からの警告だったのか──
「出ていってバケモノ!!陛下の体から今すぐ──!!」
愛するルアヌをのっとられた怒りと憤りでカーラは目の前の敵に罵声を浴びせた。言葉を繋げようとした途端。
「ぐ…」
激痛で息が詰まった。心臓の痛みはどんどん増していく。
わたくし、もうその時が来ましたの?
「そうだ、滅びの時がきたのだよ、カーラ」
吸血ルアヌは勝ち誇ったようにカーラを見下ろす。
「私は聖女が力を使いすぎて短命に終わることを知っている。だが、私に血を捧げお前が忠誠を誓うなら、モンスターとしての寿命をお前に授けよう」
吸血ルアヌが手を差し伸べる。
力が、出ない──
カーラの視界が霞んできた。
「さあ、妻になれ。永遠にふたりで楽しもうぞ」
ああ…
もっと陛下と一緒にいたかった。
人としての陛下と…
カーラは悔しさに唇を噛んだ。
もう抵抗する力も残っていなかった。
吸血ルアヌはカーラを持ち上げ、その首元に牙を近づけていった。
朝昼夕夜、ルアヌの声がカーラを呼ぶ。
「はい…陛下」
その度にカーラはルアヌの元へ召される。
「愛おしいぞ、カーラ。特にここが──」
ルアヌはカーラの首筋に唇をそわせる。
「陛…下…」
胸の痛みは前より増えた気がしたがルアヌの腕の中にいるといつも忘れてしまう。
わたくし、幸せですわ。
陛下とこのままずっとずっとこうしていたい──
カーラは恍惚の中で夢に落ちていった。
「最近、おやつれでは?体調は大丈夫なのですか?モンスター退治でお疲れなのでは?」
宰相が心配そうにカーラに声をかけてきた。大なまずの後も幾度となくモンスター退治が続いていた。
「大丈夫ですわよ。王国のためですもの」
宰相が部屋を去った後、カーラはまたルアヌに呼ばれた。
「確かにわたくしちょっと元気が足りないかもしれませんわ。こんな時は」
リュックから小袋を取り出す。
「パワーが欲しい時はこれ飲んで、とわかばが言っていましたわ」
カーラはサプリを数粒まとめて水で流し込んだ。
「陛下、参りました」
カーラがルアヌの部屋に足を数歩踏み入れた時、胸に激痛が走った。
「!!!」
カーラはたまらずうずくまる。近づいてくるルアヌの足がゆがんだ視界に入る。
陛下が助けに来てくれた──
ほっとしたカーラの予想は無惨にも外れた。
「やっと心臓にきたか、カーラ」
「え?」
低く冷たい…陛下はこんな声だったろうか?
混乱ぎみの頭でカーラがルアヌを見上げる。ルアヌは見たこともない残忍な表情でカーラを見下ろしていた。
「お前は聖女の力を使いすぎた。まあ、私がモンスターをわざと呼び寄せてお前に力を使わせたのだがね」
待って。
言ってることが頭に入らない。
わざとって?
カーラの顔がこわばっていく。
ルアヌの瞳は死人のようによどんでいる。
陛下じゃない。
危機を察したカーラの芯が急速に冷えていく。
この男は、誰──?
「まだわからないようだな」
凍りつくような声が刺さる。
「私の母がこの前世話になったようだな」
「──────は?」
カーラの口からやっと聞き取れるような小さな声がもれた。
「お前には何度も楽しませてもらった。私はお前が気に入っている。私の妻になれ」
母って…??
ルアヌの目。
赤く光るその目。
変な角度に曲がった首の、赤眼の側妃と重なった。
頭を殴られたような衝撃がカーラを襲った。
そしてようやく理解した。
「──コウモリ女王!!!!」
「ははは、その通り。私はこの男に植え付けられたコウモリ女王の息子だよ」
「なんてこと──」
カーラは絶句した。コウモリ女王との戦いはあれで終わりではなかった。もっと最悪な事態が今まさに起こっていた。
わたくしが感じていた違和感…
陛下が時々、別人のようにみえた、あの違和感は。
聖女の血からの警告だったのか──
「出ていってバケモノ!!陛下の体から今すぐ──!!」
愛するルアヌをのっとられた怒りと憤りでカーラは目の前の敵に罵声を浴びせた。言葉を繋げようとした途端。
「ぐ…」
激痛で息が詰まった。心臓の痛みはどんどん増していく。
わたくし、もうその時が来ましたの?
「そうだ、滅びの時がきたのだよ、カーラ」
吸血ルアヌは勝ち誇ったようにカーラを見下ろす。
「私は聖女が力を使いすぎて短命に終わることを知っている。だが、私に血を捧げお前が忠誠を誓うなら、モンスターとしての寿命をお前に授けよう」
吸血ルアヌが手を差し伸べる。
力が、出ない──
カーラの視界が霞んできた。
「さあ、妻になれ。永遠にふたりで楽しもうぞ」
ああ…
もっと陛下と一緒にいたかった。
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カーラは悔しさに唇を噛んだ。
もう抵抗する力も残っていなかった。
吸血ルアヌはカーラを持ち上げ、その首元に牙を近づけていった。
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