今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi

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吸血ルアヌがカーラの首の血を吸おうとしている時、カーラにあることが閃いた。


わたくしの血は聖女の血。
ならば、吸血鬼にもダメージを与えられるかもしれない!!


カーラの心にともった希望の光はだが無慈悲に砕かれる。


「お前今思ったな?聖女の血が吸血鬼に効くと。ざーんねん」


吸血ルアヌはほくそ笑みながら絶望のセリフを吐いた。


「お前と何度も交わっているこの体は、聖女への耐性が備わっているのだよ。つまり」


耐性…?それって──


「聖女の血は私には効かぬ」


闇のどん底へと突き落とされる感覚がカーラを覆う。


もう、おしまいなの──?
このままわたくしとルアヌ様はモンスターに…


カーラの首元をひと舐めしたあと、吸血ルアヌの牙がその首に喰らい付いた。


「ああっ!!」


痛みとぞわぞわする恍惚感の中を漂うカーラ。
身体中の血が吸い取られていく感覚に意識が薄れていく。


陛下…ルアヌ様…せめてもう一度ルアヌ様に会いたい──


カーラの目から涙が一粒こぼれたその時。




「ぐうううあああああああ!!!!」


カーラから弾け飛ぶように離れ、吸血ルアヌが苦しみ始めた。


「お前、お前私に何をしたあ!!!」

「え?え?」


カーラは見当もつかず呆気に取られている。


「苦しい!!うぐああああ!!!」


喉元を掻きむしりながら悶絶する吸血ルアヌの体。


「この匂いはまさか──ぎゃあああああ!!!」


内側から白光が放たれる。






まばゆい光の中、コウモリが一匹ふらふらとルアヌの体から飛び出し、塵のように消滅した。
カーラは見事ルアヌの体内の吸血鬼を駆逐した。


「何…何が起こったの?もしかして──」


カーラは一つの可能性を思い浮かべる。


「さっき飲んだの、ニン…ニクサ、プリって書いてあったけど、それのおかげ?」


カーラは安堵の息を漏らす。



よかった、でも。
体は鉛のように重く、なんだか瞼も開けづらい。
私、もう──




ズキュ!!!


剣を突き刺すような激痛がカーラの心臓を襲った。


やっぱり。



「カーラ!!!」


正気に戻ったルアヌがカーラを抱き起こす。


「陛…」


吸血ルアヌが言っていた通りだった。
吸血鬼が死んだ今、聖女の力を使いすぎ衰弱したカーラには吸血鬼の牙の猛毒は強すぎた。


「宿命、なのです…わたくしの…代わりに…他の聖女をめとって…」

「何を言っている!?」

「わたくし…聖女の力があってよかった…ですわ…そのおかげでこ…の国に望まれ…王妃…になれた」

「違う!そうではない!」


ルアヌは全力で否定した。


「聖女の力がそなたを妃に迎えた一番の理由ではない!」

「え…?」

「初めて会った時から…一目惚れだったのだ!!」

「え…」


ルアヌとの思い出がカーラの脳内に走馬灯のように駆け巡った。





初めての出会い。
王宮の庭で緊張してちらっとルアヌを盗み見るカーラ。
花のようにふわりと笑うルアヌ。
顔を赤らめ、うつむくカーラ。

初めてのキス。
王宮の柱の陰で唇を重ねるカーラとルアヌ。
宰相がルアヌを探しにやってきて、慌てて離れる二人。

結婚式。
多くの民に祝福され幸せいっぱいのカーラ。
誓いの口付け──


薄れていく幸福の記憶──…




「私の妃は生涯そなただけだ!!」


最後のルアヌの言葉はもうカーラには聞こえていなかった。


「ル、…ぐほっ」


カーラの口から鮮血が弾け飛ぶ。
猛毒で壊死していく心臓の痛みからか、ルアヌとの今生の別れの悲しみからか、カーラの目から大粒の涙が幾筋も流れ出た。


「愛、…し…──」


その言葉を最後にカーラの目から光が消えた。
もう手遅れだった。
医師が到着した頃には、カーラの体は石のように冷たくなっていた。
カーラは聖女の力を使い果たし、吸血鬼の毒に耐えられず息絶えた。


「カーラ!カーラああ!!嘘だ、嘘だと言ってくれ!!」


カーラの遺骸を抱きしめながら慟哭するルアヌの声が、いつまでも響いていた。



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