今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi

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20 最後の望み

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王都はカーラの死を悼むように静まり返っていた。

ルアヌはカーラの棺からいっときも離れずずっとそばに居続けた。兵士も民も宰相もかつてのカーラを思い出しては涙にくれていた。

カーラの訃報を聞き、カーラのひいばあ様が王宮に駆けつけた。


「カーラよ…無念じゃのう」


そう語りかけると、花がたくさん敷き詰められた棺の中で冷たく眠るカーラの頬をなでた。


聖女の力は無限ではなかった。
カーラの家系は代々聖女を輩出してきたが、多くの者が若いうちに命尽きている。モンスターの魔力を抑えることで力を使い心身ともに衰弱しやすく短命の一族だったのだ。


「わしは運良く長生きできたほうじゃ。この子の母も姉も妹も、すでにこの世におらん。カーラはわしに次いで力の強い聖女だったのだが…」


棺のそばでルアヌはその話を聞いてか聞かずか、じっと一点を見つめたまま微動だにしなかった。


「医師の見立てでは血の色からして心臓が壊死したのではないかと。もし、もしも何かお知恵があれば教授願いたい!」


宰相は打ちひしがれたルアヌをいたましそうに見やりながら、藁にもすがる思いでひいばあ様に問うた。ひいばあ様はふと思いついたように語り始めた。


「吸血鬼は心臓が二つあると聞く。一度吸血鬼を体内に取り込んだのなら、陛下もそうなっているかもしれぬ。二つあるうちのひとつをカーラの壊死した心臓と取り替えれば、カーラは生きかえるかもしれん」


ひいばあ様の話は途方もない内容だった。心臓を取り替えるなど、そんな技、この国にはない。


誰もが絶望し口をつぐんだが、その沈黙をルアヌが破った。


「日本国はどうだ…?」


皆が顔を上げる。


「カーラは日本国の不思議な道具でモンスターを倒していた」


宰相も閃いたように賛同する。


「確かに異世界日本になら何か手立てがあるかもしれません!なにせ手強いモンスターもことごとく駆逐した優れた道具を開発した国ですから!」


「私も行く」


旅支度を始めた宰相にルアヌが同行を求めた。


「しかし、陛下…!まがりなりにも異世界です。陛下の身に万一のことがあったら──」

「最愛の妻を救うためなら、異世界でもどこへでも行く」


ルアヌの意思は固かった。宰相とルアヌはカーラの棺と共に転送装置で異世界日本へ旅立った。


-------------------


「カーラちゃんの彼氏!?すごいイケメンじゃーん!!」
 
「病気治ったの??よかったね!」

公園の隅に宰相に呼ばれたわかばとこよみがルアヌを見た途端、歓喜の声をあげた。


「あれ、カーラちゃんは?どこ?」


ルアヌがだまって指さす方向に棺があった。ルアヌは棺の扉を開いた。
なんだろう?とわかばとこよみが覗き込んだ小さい扉の向こうに、白い顔のカーラが横たわっていた。


「カ、──」


すぐにわかった。息をしていないと。
もう冷たくなってしまっていると。


「嘘!!!カーラちゃん!!!」


ふたりは棺に取りすがって大声で泣きはじめた。


「なんで!?なんでこんなことになったの!?彼氏、守ってあげられなかったの!?」


「カーラちゃん、彼氏のこと、世界中のだれよりも大好きだったのに──」


ふたりは立て続けにルアヌに憤りと悲しみをぶつけた。


「すまぬ…」


ルアヌは言い訳もせず、ただ悔しそうに下を向いた。


「吸血鬼の毒にやられ心臓が壊死してしまい…心臓を取り替えれば助かるかもしれないのですが…」


宰相の説明にわかばが「心臓?」と反応した。


「私には心臓が二つあるかもしれないのだ。そのうちの一つをカーラにあげたいと思っている。何か方法はないだろうか…?」


「ねえ!カーラちゃんがこうなってからどれくらい時間経った!?」


わかばが飛びかかるようにルアヌに尋ねた。


「6時間…くらいだ」


こよみがわかばに「わかばちゃん、まだ間に合う!?」と声をかけた。


わかばはうなずくとルアヌたちに申し出た。


「うちのパパなら治せるかも…パパ、心臓外科医なんだ」



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