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21 奇跡
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「パパ、パパ、急患だよ!」
わかばが病院の院長室に駆け込む。
「なにい!?すぐに連れて来い!!」
カーラの棺を運び込むルアヌと宰相にわかばが囁いた。
「うちのパパ、急患は絶対に治さなきゃ気が済まないの」
ルアヌたちは診察室に通された。自分たちの世界の説明とカーラの死因を伝える。
「何?異世界から来たのか?この人たちは」
「信じられないかもしれないが、どうか頼む!カーラを助けて欲しい」
「うむ…」
一心に頭をさげるルアヌと宰相。わかばの父・玄斗は熱心にルアヌの検査結果を注視している。
「こりゃあ驚いたな。心臓が二つある!」
ひいばあ様の推察は当たっていた。一度吸血鬼をその身に宿したルアヌの心臓は二つに増えていた。
「私はどうなってもいい。カーラを助けてやって欲しい」
わかばの父・玄斗はあっさりと答えた。
「いいとも、助けよう。ただし、二人とも、な」
「私たちの話を、信じてくれるのか…?」
快諾の返事にルアヌは感動の眼差しを玄斗に向ける。
「異世界だろうが吸血鬼だろうが関係ない。俺にとって大事なのは目の前にいる患者を助けることだ」
「なんと漢気あふれる医師でしょう…!」
宰相は涙をにじませた。
「さあ、長い手術になるぞ」
-------------------
手術室のランプが点灯した。ルアヌとカーラが手術台に並べられている。
「最愛の人と同じ景色をまた見たいだろう?頑張ろうな」
玄斗はそう言ってルアヌを元気づけた。ルアヌは人形のように固く冷たくなっているカーラの横顔を見つめたあと、玄斗に答える間も無く麻酔で深い眠りに落ちた──
長い長い時間が過ぎていく。待合室で宰相と一緒に待っていたわかばとこよみがふいに立ち上がった。
「うちら、ちょっと行ってくる!」
「おじさんはここで一生懸命、祈っててね!」
宰相が「どちらに?」と問うた頃には二人は廊下の彼方に消えていた。
-------------------
「手術は成功だ」
汗まみれで手術室から出てきた玄斗が宰相に報告する。
「よかった…本当によかった…ありがとうございます、本当にありがとうございます!!」
「あとは目を覚ましてくれさえすれば…」
玄斗は少し心配そうに呟いた。
数時間たった。だが玄斗の予言めいた言葉どおり、二人は一向に目を覚さなかった。
「陛下、カーラ様…どうか、どうか目をお覚ましください…」
宰相が不安に押しつぶされそうになっていた頃、わかばとこよみが病室に飛び込んできた。
「ありったけもらってきたよ!」
二人は何やら大きなダンボールを抱えている。中を覗くと病気平癒お守りが一杯にあふれていた。驚いている宰相にわかばがにっこりして答えた。
「こよみの家、神社なんだ」
ルアヌとカーラが並んで眠るベッドの周りにお守りを全部並べた。
三人は祈る。
「神様お願い!カーラちゃんと彼氏の目を覚ましてあげて!」
「日本国の神よ…!どうか、陛下とカーラ様をお救いください…っ!」
「また二人が…」
こよみがルアヌとカーラの手をつないであげた。
「二人がこの先の未来でもどうか幸せになりますように…!」
三人は目をつむって一心に祈り続けた。数時間経っても三人は祈りをやめなかった。
日が傾き始めた頃、お守りが光り始めたことを三人は知らなかった。
空気が微動しはじめる。お守りの光がルアヌとカーラの体を包み込む──
あたたかい…
あの世かしら?
陛下は?
岸の向こうにいる。
陛下~!
カーラはルアヌに駆け寄り、手をつないだ。
もう離れませんわ。ずっと、ずーっと…
まぶしい。
「──ここは?」
気づくとカーラは見知らぬベッドの上にいた。長い長い眠りから覚めたように、カーラはしばらくぼうっとしていた。
隣を見ると、カーラと手をつないだルアヌが「う…ん」とまぶたを開いた。
「カーラあああ!!」
「陛下ああああ!!」
わかばとこよみがカーラに、宰相がルアヌに抱きついた。抱きついた三人の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「何が起こったのかよくわからないけれど、わたくし生きているのね?」
「カーラ…よかった──」
陛下が涙ぐみながら、カーラをかき抱いた。
「行ってまいりますわ!」
日本での手術のおかげですっかり元気になったカーラは再び転送装置の上に立っていた。
「なるべく早く戻ってくるのだぞ?」
「カーラ様、どうかご無事で」
ルアヌが少し寂しそうに手を振る。宰相は泣いている。聖女の力は失ったが、カーラはその圧倒的な科学技術を学ぶべく日本国への留学を決めたのだ。
「モンスター退治の道具をたくさん開発して必ずまた戻ってきますわ…!」
さわやかなカーラの声が空に舞った。
<終>
わかばが病院の院長室に駆け込む。
「なにい!?すぐに連れて来い!!」
カーラの棺を運び込むルアヌと宰相にわかばが囁いた。
「うちのパパ、急患は絶対に治さなきゃ気が済まないの」
ルアヌたちは診察室に通された。自分たちの世界の説明とカーラの死因を伝える。
「何?異世界から来たのか?この人たちは」
「信じられないかもしれないが、どうか頼む!カーラを助けて欲しい」
「うむ…」
一心に頭をさげるルアヌと宰相。わかばの父・玄斗は熱心にルアヌの検査結果を注視している。
「こりゃあ驚いたな。心臓が二つある!」
ひいばあ様の推察は当たっていた。一度吸血鬼をその身に宿したルアヌの心臓は二つに増えていた。
「私はどうなってもいい。カーラを助けてやって欲しい」
わかばの父・玄斗はあっさりと答えた。
「いいとも、助けよう。ただし、二人とも、な」
「私たちの話を、信じてくれるのか…?」
快諾の返事にルアヌは感動の眼差しを玄斗に向ける。
「異世界だろうが吸血鬼だろうが関係ない。俺にとって大事なのは目の前にいる患者を助けることだ」
「なんと漢気あふれる医師でしょう…!」
宰相は涙をにじませた。
「さあ、長い手術になるぞ」
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手術室のランプが点灯した。ルアヌとカーラが手術台に並べられている。
「最愛の人と同じ景色をまた見たいだろう?頑張ろうな」
玄斗はそう言ってルアヌを元気づけた。ルアヌは人形のように固く冷たくなっているカーラの横顔を見つめたあと、玄斗に答える間も無く麻酔で深い眠りに落ちた──
長い長い時間が過ぎていく。待合室で宰相と一緒に待っていたわかばとこよみがふいに立ち上がった。
「うちら、ちょっと行ってくる!」
「おじさんはここで一生懸命、祈っててね!」
宰相が「どちらに?」と問うた頃には二人は廊下の彼方に消えていた。
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「手術は成功だ」
汗まみれで手術室から出てきた玄斗が宰相に報告する。
「よかった…本当によかった…ありがとうございます、本当にありがとうございます!!」
「あとは目を覚ましてくれさえすれば…」
玄斗は少し心配そうに呟いた。
数時間たった。だが玄斗の予言めいた言葉どおり、二人は一向に目を覚さなかった。
「陛下、カーラ様…どうか、どうか目をお覚ましください…」
宰相が不安に押しつぶされそうになっていた頃、わかばとこよみが病室に飛び込んできた。
「ありったけもらってきたよ!」
二人は何やら大きなダンボールを抱えている。中を覗くと病気平癒お守りが一杯にあふれていた。驚いている宰相にわかばがにっこりして答えた。
「こよみの家、神社なんだ」
ルアヌとカーラが並んで眠るベッドの周りにお守りを全部並べた。
三人は祈る。
「神様お願い!カーラちゃんと彼氏の目を覚ましてあげて!」
「日本国の神よ…!どうか、陛下とカーラ様をお救いください…っ!」
「また二人が…」
こよみがルアヌとカーラの手をつないであげた。
「二人がこの先の未来でもどうか幸せになりますように…!」
三人は目をつむって一心に祈り続けた。数時間経っても三人は祈りをやめなかった。
日が傾き始めた頃、お守りが光り始めたことを三人は知らなかった。
空気が微動しはじめる。お守りの光がルアヌとカーラの体を包み込む──
あたたかい…
あの世かしら?
陛下は?
岸の向こうにいる。
陛下~!
カーラはルアヌに駆け寄り、手をつないだ。
もう離れませんわ。ずっと、ずーっと…
まぶしい。
「──ここは?」
気づくとカーラは見知らぬベッドの上にいた。長い長い眠りから覚めたように、カーラはしばらくぼうっとしていた。
隣を見ると、カーラと手をつないだルアヌが「う…ん」とまぶたを開いた。
「カーラあああ!!」
「陛下ああああ!!」
わかばとこよみがカーラに、宰相がルアヌに抱きついた。抱きついた三人の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「何が起こったのかよくわからないけれど、わたくし生きているのね?」
「カーラ…よかった──」
陛下が涙ぐみながら、カーラをかき抱いた。
「行ってまいりますわ!」
日本での手術のおかげですっかり元気になったカーラは再び転送装置の上に立っていた。
「なるべく早く戻ってくるのだぞ?」
「カーラ様、どうかご無事で」
ルアヌが少し寂しそうに手を振る。宰相は泣いている。聖女の力は失ったが、カーラはその圧倒的な科学技術を学ぶべく日本国への留学を決めたのだ。
「モンスター退治の道具をたくさん開発して必ずまた戻ってきますわ…!」
さわやかなカーラの声が空に舞った。
<終>
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