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第71話 呪われし兄編 不気味な存在
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砦を覆っていた不穏の気配も払われ、残された者たちはすべて屈服した。私たちはようやく王都への帰路につき、その陰でオリバーとローズは反逆者として鎖に縛られ、冷たい石壁の牢へと連行されていった。
部屋に戻り、二人きりになった瞬間、カイ様は何も言わず私の隣に座った。静かな手つきで濡れた布を取ると、優しく私の頬を撫でるように拭ってくれた。その手はわずかに震えていて、私はその振動が私の心にも伝わるのを感じていた。
「……俺の不注意だ。俺が、アイラをこんな危険な目に遭わせてしまった……すまない」
「違うわ」
私の手が、彼の震える手に触れ自然に包み込んだ。その手のひらに触れると、ひんやりとした感触が私の体温を吸い込んでいくのがわかった。しばしの静寂の中で、二人の心がひとつに繋がるような錯覚に陥った。
「危険だと分かっていても、私は、あなたを愛することを選んだ。これは、私が選んだ道なの。だから、謝らないで」
「アイラ……」
「それに、信じていましたから。あなたは、必ず私を助けに来てくれるって」
私たちの目が深く絡み合い、その間に流れる静かな空気が何かを引き寄せるように唇が触れ合う。そのキスは、ただの欲望や衝動に任せたものではなく、どこかで互いを確かめ合うような深く静かな優しさを含んでいた。お互いの存在が、無言で確実に一つに溶け合う瞬間が、そこにあった。
「もう、二度と君を離さない」
「ええ。私も、もう二度と離れませんわ」
私たちの腕が絡み合う中で、彼の温もりがじんわりと心に染み渡る。それはまるで、時間が止まったかのような瞬間だった。そして、私の人生で最も壮絶な出来事が、ようやく静かに幕を閉じたのだ。
多くのものを失う危機に直面し、傷だらけで歩んできた私たちだったが、その痛みを乗り越えた先には、決して壊れることのない絆という名の宝物が待っていた。
この幸せが、永遠に続きますように。
夜空に輝く一番星に、私はそっとその願いを込めた。星の光が遠く静かに瞬くたびに、私の心の中でその願いが強く深く響き渡るような気がした。その瞬間、時間が止まり、世界のすべてが私たちの幸せを祝福してくれているかのように感じた。
数日後、王都はすっかり落ち着きを取り戻し、私たちの周りにも、ようやく穏やかな日常が訪れた。そんなある日、カイ様が少し緊張した面持ちで私に告げた。
「アイラ。兄が、君に会いたいと言っている」
「お兄様……ですか?」
ルーカス王。王弟であるカイ様とは異なり、彼はまさに国の頂点に君臨する存在。その名は、王国中で語り継がれ、民衆の心をつかんで離さない。彼の姿は、厳格な王としての威厳を漂わせる一方で、どこか魅力的な謎を秘めている。
カイ様のような優れた人物の兄が、どれほど素晴らしい人物なのかと想像せずにはいられない。ああ、ただその名に魅了されるばかりだ。
「……あまり、気乗りしないんだが」
「まあ。どうしてですの?」
「兄上は……少し、変わった人なんだ。だから、失礼なことを言われても、気にしないでくれ」
そう言って困ったように笑うカイ様の様子に、私は少しだけ不安を覚えた。
部屋に戻り、二人きりになった瞬間、カイ様は何も言わず私の隣に座った。静かな手つきで濡れた布を取ると、優しく私の頬を撫でるように拭ってくれた。その手はわずかに震えていて、私はその振動が私の心にも伝わるのを感じていた。
「……俺の不注意だ。俺が、アイラをこんな危険な目に遭わせてしまった……すまない」
「違うわ」
私の手が、彼の震える手に触れ自然に包み込んだ。その手のひらに触れると、ひんやりとした感触が私の体温を吸い込んでいくのがわかった。しばしの静寂の中で、二人の心がひとつに繋がるような錯覚に陥った。
「危険だと分かっていても、私は、あなたを愛することを選んだ。これは、私が選んだ道なの。だから、謝らないで」
「アイラ……」
「それに、信じていましたから。あなたは、必ず私を助けに来てくれるって」
私たちの目が深く絡み合い、その間に流れる静かな空気が何かを引き寄せるように唇が触れ合う。そのキスは、ただの欲望や衝動に任せたものではなく、どこかで互いを確かめ合うような深く静かな優しさを含んでいた。お互いの存在が、無言で確実に一つに溶け合う瞬間が、そこにあった。
「もう、二度と君を離さない」
「ええ。私も、もう二度と離れませんわ」
私たちの腕が絡み合う中で、彼の温もりがじんわりと心に染み渡る。それはまるで、時間が止まったかのような瞬間だった。そして、私の人生で最も壮絶な出来事が、ようやく静かに幕を閉じたのだ。
多くのものを失う危機に直面し、傷だらけで歩んできた私たちだったが、その痛みを乗り越えた先には、決して壊れることのない絆という名の宝物が待っていた。
この幸せが、永遠に続きますように。
夜空に輝く一番星に、私はそっとその願いを込めた。星の光が遠く静かに瞬くたびに、私の心の中でその願いが強く深く響き渡るような気がした。その瞬間、時間が止まり、世界のすべてが私たちの幸せを祝福してくれているかのように感じた。
数日後、王都はすっかり落ち着きを取り戻し、私たちの周りにも、ようやく穏やかな日常が訪れた。そんなある日、カイ様が少し緊張した面持ちで私に告げた。
「アイラ。兄が、君に会いたいと言っている」
「お兄様……ですか?」
ルーカス王。王弟であるカイ様とは異なり、彼はまさに国の頂点に君臨する存在。その名は、王国中で語り継がれ、民衆の心をつかんで離さない。彼の姿は、厳格な王としての威厳を漂わせる一方で、どこか魅力的な謎を秘めている。
カイ様のような優れた人物の兄が、どれほど素晴らしい人物なのかと想像せずにはいられない。ああ、ただその名に魅了されるばかりだ。
「……あまり、気乗りしないんだが」
「まあ。どうしてですの?」
「兄上は……少し、変わった人なんだ。だから、失礼なことを言われても、気にしないでくれ」
そう言って困ったように笑うカイ様の様子に、私は少しだけ不安を覚えた。
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