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第5話
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「先生は、少しも変わらないんですね。相変わらず、可愛らしい」
「か、かわっ……!」
いきなりの言葉に、私の顔にカッと熱が集まる。何を言っているの、この子は! いや、もう子、なんて呼べる年齢じゃないけれど!
「それより、どうしてここに……? その格好、それにあの馬車は……」
「ああ、これですか」
私が尋ねると、彼は自分の制服に目を落とした。
「今は、王都で医療魔法師をしています。少しだけ、出世しまして」
少しだけ、という彼の言葉とは裏腹に、彼から漂う雰囲気は、ただの医療魔法師のものではなかった。その立ち居振る舞いには、圧倒的な自信と気品が満ち溢れている。
「実は今日、先生にお願いがあって、はるばるここまで来たんです」
「お願い?」
「はい。その前に、少しだけお話をさせてください。先生に、ご報告したいことがたくさんあるんです」
レオナールはそう言うと、私の返事を待たずにずんずんと教室の中に入ってきた。昔と変わらない、強引なところは相変わらずみたいだ。
お茶を淹れて、二人でテーブルに向かい合って座る。なんだか、保護者面談みたいだわ、なんて場違いなことを考えてしまう。目の前の彼は、もう私の手が必要な子供じゃない。立派な、一人の男性だ。
「先生、驚かないで聞いてくださいね」
レオナールは、もったいぶるように前置きをしてから、口を開いた。
「僕、今、王国直属の医療組織で《大典医》を拝命しています」
「……だいてんい?」
聞き慣れない言葉に、私は首を傾げる。彼がわざわざ説明してくれた。王国の医療魔法師たちを束ねる組織のトップ。それが大典医なのだと。
「人々は、敬意を込めて《大神癒師(だいしんゆし)》と呼んでくれたりもします。まあ、ただの尊称や異名みたいなものですが」
大神癒師。神に癒される、と書くのだろうか。そんな大層な名前で呼ばれるほどの地位に、この子がいるというの?
私の驚きをよそに、レオナールはさらに言葉を続けた。
「アレリオを覚えていますか? いつも落ち着きがなくて、先生に叱られてばかりいた」
「ええ、もちろん。あの子、元気にしてる?」
「はい。あいつも今や《副典医》ですよ。僕の補佐として、組織のマネジメントを任せています。昔のあいつからは想像もつかないでしょう?」
副典医。大典医の補佐ということは、ナンバーツーということだろうか。あの、授業中にいつもそわそわしていたアレリオが?
「それから、オルフェウスとロデリックも。二人とも、高度な治療魔法を使いこなす《上級医療師》として、後進の指導にあたっています。その他の子たちも、みんな王都で立派な医療魔法師として活躍していますよ」
信じられなかった。アレリオも、オルフェウスも、ロデリックも、みんな私の小さな教室で学んでいった子たちだ。確かにレオナールは、その中でも飛び抜けて才能があったと思う。でも、他の子たちは、ごくごく普通の子たちだったはずだ。
医療組織の階級名
大典医(だいてんい)通称、大神癒師
総責任者 国王直属の医療組織のトップ
副典医(ふくてんい)通称、副大神癒師
大典医を補佐する副長 組織全体のマネジメントを行う
上級医療師/高位癒術師
高度な治療・魔法を使える熟練者
正医療師/癒術師
一人前の医師・ヒーラー。通常の病院や戦場などで治療にあたる
補佐医療師/補助癒術師
見習いから一段階上。診療補助が可能。
見習い医療師/癒術徒(ゆじゅつと)
学び中の新人。実践不可または制限付き。医療学校の生徒や研修医
「みんな、セシリア先生のおかげです! 先生の教えがあったからこそ、僕たちはここまで来れました。本当に、感謝しきれません!」
レオナールは、テーブル越しに身を乗り出して、私の手をぎゅっと握った。彼の大きな手に包まれて、私の手はすっぽりと隠れてしまう。
「そんな……私は、本当に基本的なことしか教えていないわ。みんなが、自分の力で頑張ったのよ」
「いいえ、違います!」
彼は、強い口調で私の言葉を否定した。
「か、かわっ……!」
いきなりの言葉に、私の顔にカッと熱が集まる。何を言っているの、この子は! いや、もう子、なんて呼べる年齢じゃないけれど!
「それより、どうしてここに……? その格好、それにあの馬車は……」
「ああ、これですか」
私が尋ねると、彼は自分の制服に目を落とした。
「今は、王都で医療魔法師をしています。少しだけ、出世しまして」
少しだけ、という彼の言葉とは裏腹に、彼から漂う雰囲気は、ただの医療魔法師のものではなかった。その立ち居振る舞いには、圧倒的な自信と気品が満ち溢れている。
「実は今日、先生にお願いがあって、はるばるここまで来たんです」
「お願い?」
「はい。その前に、少しだけお話をさせてください。先生に、ご報告したいことがたくさんあるんです」
レオナールはそう言うと、私の返事を待たずにずんずんと教室の中に入ってきた。昔と変わらない、強引なところは相変わらずみたいだ。
お茶を淹れて、二人でテーブルに向かい合って座る。なんだか、保護者面談みたいだわ、なんて場違いなことを考えてしまう。目の前の彼は、もう私の手が必要な子供じゃない。立派な、一人の男性だ。
「先生、驚かないで聞いてくださいね」
レオナールは、もったいぶるように前置きをしてから、口を開いた。
「僕、今、王国直属の医療組織で《大典医》を拝命しています」
「……だいてんい?」
聞き慣れない言葉に、私は首を傾げる。彼がわざわざ説明してくれた。王国の医療魔法師たちを束ねる組織のトップ。それが大典医なのだと。
「人々は、敬意を込めて《大神癒師(だいしんゆし)》と呼んでくれたりもします。まあ、ただの尊称や異名みたいなものですが」
大神癒師。神に癒される、と書くのだろうか。そんな大層な名前で呼ばれるほどの地位に、この子がいるというの?
私の驚きをよそに、レオナールはさらに言葉を続けた。
「アレリオを覚えていますか? いつも落ち着きがなくて、先生に叱られてばかりいた」
「ええ、もちろん。あの子、元気にしてる?」
「はい。あいつも今や《副典医》ですよ。僕の補佐として、組織のマネジメントを任せています。昔のあいつからは想像もつかないでしょう?」
副典医。大典医の補佐ということは、ナンバーツーということだろうか。あの、授業中にいつもそわそわしていたアレリオが?
「それから、オルフェウスとロデリックも。二人とも、高度な治療魔法を使いこなす《上級医療師》として、後進の指導にあたっています。その他の子たちも、みんな王都で立派な医療魔法師として活躍していますよ」
信じられなかった。アレリオも、オルフェウスも、ロデリックも、みんな私の小さな教室で学んでいった子たちだ。確かにレオナールは、その中でも飛び抜けて才能があったと思う。でも、他の子たちは、ごくごく普通の子たちだったはずだ。
医療組織の階級名
大典医(だいてんい)通称、大神癒師
総責任者 国王直属の医療組織のトップ
副典医(ふくてんい)通称、副大神癒師
大典医を補佐する副長 組織全体のマネジメントを行う
上級医療師/高位癒術師
高度な治療・魔法を使える熟練者
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一人前の医師・ヒーラー。通常の病院や戦場などで治療にあたる
補佐医療師/補助癒術師
見習いから一段階上。診療補助が可能。
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「みんな、セシリア先生のおかげです! 先生の教えがあったからこそ、僕たちはここまで来れました。本当に、感謝しきれません!」
レオナールは、テーブル越しに身を乗り出して、私の手をぎゅっと握った。彼の大きな手に包まれて、私の手はすっぽりと隠れてしまう。
「そんな……私は、本当に基本的なことしか教えていないわ。みんなが、自分の力で頑張ったのよ」
「いいえ、違います!」
彼は、強い口調で私の言葉を否定した。
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