地方の田舎に住む女性、妹に幼馴染の彼をとられたけど、生徒に溺愛される医療魔法師

佐藤 美奈

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第6話

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「先生が『基本』だと言って教えてくださった治癒魔法の術式、あれは王宮の医療師の中でも、ごく一部の人間しか知らない超高度なものでした。先生が『常識よ』と言っていた薬草の調合も、今では画期的な新薬として王都で重宝されています。先生、ご自分がどれだけすごいことを、こともなげに僕たちに教えていたか、分かっていますか?」

「え……?」

言っている意味が、分からない。私が教えていたのは、父や母から教わった、ごくありふれた医療魔法のはずだ。だって、父も母も、ごく普通の田舎貴族の医療師だったのだから。

「先生は、ご両親から教わったことをそのまま教えていたんですよね?」

「ええ、そうよ」

「やはり……。先生のご両親も、おそらくは正体を隠して田舎で暮らしていた、とんでもないレベルの医療魔法師だったんですよ。だから、先生ご自身も、ご自分の能力を『普通』だと思い込んでしまっているんです」

私の知らない両親の姿。自分自身の、本当の能力。レオナールの言葉は、私の足元をぐらぐらと揺さぶる。

「さて、本題に入りましょうか、先生」

レオナールは、握っていた私の手にさらに力を込めた。彼の蒼い瞳が、まっすぐに私を見つめる。

「セシリア先生。あなたを、王国直属の医療魔法師団の《特別指南役》として、王都にお迎えしたい」

「……は?」

「僕たちを育ててくれた先生に、今度は王国の未来を担う医療魔法師たちを育ててほしいんです。先生ほど、この役にふさわしい方はいません!」

特別、指南役? この私が? 無理に決まっている。だって、私はただの田舎の、しがない医療師なのに。

「む、無理よ! 私なんかに、そんな大役が務まるわけないじゃない!」

思わず、大声で叫んでいた。自信なんて、一ミリもない。妹に婚約者を奪われ、田舎でひっそりと暮らしてきた私に、そんな華々しい舞台が用意されるなんて、悪質な冗談としか思えなかった。

「買いかぶりすぎよ、レオ! 私は、本当に、何も……」

「断っても無駄ですよ、先生」

私の必死の抵抗を、彼はあっさりと受け流した。そして、懐から一通の羊皮紙を取り出した。そこには、きらびやかな印が王の名とともに刻まれている。

「これは、国王陛下の正式な任命書です。つまり、国王命令。……逆らえませんよね?」

いたずらっぽく笑う彼の顔は、昔のやんちゃな少年の面影と、今の自信に満ちた青年の顔が重なって見えた。国王命令。その言葉の重みに、私はぐっと言葉を詰まらせる。もう、逃げ道はどこにもなかった。
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