「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜

鷹 綾

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第11話 魔物大発生 〜王都の崩壊寸前と、使者の到着〜

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第11話 魔物大発生 ~王都の崩壊寸前と、使者の到着~

王都オルティアの街は、夜の闇に包まれながらも、恐怖に震えていた。  
城壁の外から、次々と魔物の咆哮が響く。  
これまで抑え込んでいた群れが、一斉に押し寄せていた。  
衛兵たちは火矢を放ち、剣を振るうが、魔物の数は減らない。  
街の住民たちは、家に閉じこもり、窓から怯えた顔を覗かせた。

王宮の謁見の間では、ヴァレンティン王太子が玉座に座り、青ざめていた。  
使者が、血まみれの鎧で駆け込んできた。

「王太子殿下! 南門が突破されました!  
魔物が街中に侵入し、市民が犠牲に……!」

ヴァレンティンは、拳を玉座の肘掛けに叩きつけた。

「フィオナはどこだ! 彼女の癒しの力で、浄化しろ!」

フィオナ・セレナは、謁見の間の隅で震えていた。  
彼女の白いドレスは、汗と埃で汚れ、顔色は土気色だった。

「ヴァレンティン様……私の力が、もう……」

彼女は手を翳すが、光は弱々しく瞬くだけ。  
魔物の呪いが、彼女自身に跳ね返り、体を蝕んでいた。

「アリシア様の呪いが……私を阻害しているのですわ……」

ヴァレンティンの表情が、初めて崩れた。  
プライドの高い彼が、膝に顔を埋め、呟いた。

「アリシア……」

使者が、息を切らして続けた。

「殿下……もう、時間はありません。  
アリシア・ルナミア様に、助けを求めるしか……」

ヴァレンティンは、ゆっくりと顔を上げた。

「使者を送れ。  
今すぐ、ルミナス領へ。  
アリシアに……助けを求めろ」

使者は、深く頭を下げ、すぐに馬を飛ばした。

一方、ルミナス領の丘の上。  
アリシアは、星空を見上げながら、シルヴァン・レイヴンと並んで座っていた。  
ガレン・ブライトは、少し離れて警護に立っていた。

シルヴァンが、静かに口を開いた。

「王都の魔物被害が、限界に達しているらしい。  
使者が来るだろう」

アリシアは、優しく微笑んだ。

「みんなが苦しんでいるなら、助けたいわ。  
でも、条件は……」

シルヴァンの銀色の瞳が、鋭くなった。

「俺が決める。  
契約金1000万ゴールド。  
そして、王太子の謝罪文を、全国に公開させる」

アリシアは、驚いてシルヴァンを見た。

「そんな……高すぎるわ」

シルヴァンは、冷たく笑った。

「高すぎる? お前を傷つけた代償としては、安いものだ。  
拒否すれば、王都は滅ぶ」

アリシアは、静かに目を伏せた。

「私は……みんなを救いたいだけよ」

シルヴァンは、アリシアの手を握った。

「わかっている。  
だから、俺がお前の代わりに、厳しくする」

その時、遠くから馬の蹄の音が聞こえた。  
王都からの使者が、埃まみれで丘に駆け上がってきた。  
彼は馬から転げ落ち、土下座した。

「アリシア様! 王太子殿下より、至急の使者です!  
王都が魔物に襲われ、崩壊寸前です!  
どうか、助けをお願いいたします!」

アリシアは、使者の前に立ち、静かに言った。

「わかりました。  
でも、条件があります」

使者は、顔を上げた。

「どのような……」

アリシアは、シルヴァンをちらりと見た。  
シルヴァンが、冷徹な声で代弁した。

「契約金1000万ゴールド。  
そして、ヴァレンティン王太子の謝罪文を、全国の街に公開せよ。  
内容は『アリシア・ルナミアを偽りの聖女と罵り、婚約破棄したのは誤りだった』と明記すること」

使者は、目を丸くした。

「そ、そんな……王太子殿下に、そんなことを……」

シルヴァンは、冷たく言った。

「拒否すれば、助けない。  
王都は滅ぶだけだ」

使者は、震えながら頭を下げた。

「わかりました……すぐに、殿下に伝えます」

使者が去った後、アリシアはシルヴァンに微笑んだ。

「ありがとう、シルヴァン様。  
あなたがいてくれて、心強いわ」

シルヴァンは、アリシアを抱き寄せた。

「俺がお前を守る。  
それだけだ」

丘の下では、村人たちが不安げに集まっていた。  
ガレンが、静かに言った。

「アリシア様……王都へ行くのですか?」

アリシアは、優しく頷いた。

「ええ。  
みんなの苦しみを、終わらせたい」

村人たちは、涙を浮かべて見送る準備を始めた。

王都では、ヴァレンティンが謁見の間に座り、使者の帰りを待っていた。  
フィオナが、震える声で言った。

「ヴァレンティン様……本当に、彼女を呼ぶのですか?」

ヴァレンティンは、目を閉じた。

「国が滅ぶなら……仕方ない」

心の奥で、初めての後悔が、静かに広がっていた。

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