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第8話: 魔物の脅威
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第8話: 魔物の脅威
夜明け前の空が、薄紫に染まり始めていた。
アプリリアは館のバルコニーで、森の方向をじっと見つめていた。
予知の力が、はっきりと告げている。
今日、魔物が襲ってくる。
数は十数頭。フォレストウルフの群れだ。
「アプリリア様、もう朝ですよ。
少しお休みになってください」
リオが心配そうにマントを持ってきてくれた。
「ありがとう、リオ。
でも、もうすぐ来るわ。
村の人たちに、避難の準備をさせて」
二人は急いで村へ向かった。
村人たちはすでに起きていて、アプリリアの言葉を聞いてすぐに動き始めた。
昨日癒してもらった恩義もあり、誰もが彼女を信頼していた。
「アプリリア様の言う通りなら、間違いない!」
「子供たちと年寄りを、まず館へ!」
村は慌ただしくなったが、混乱はなかった。
アプリリアの落ち着いた指示が、皆をまとめていた。
広場に簡易のバリアを張る準備をする。
アプリリアは地面に手を触れ、聖女の力で光の膜を展開した。
淡い白い光が、村全体を覆う。
これは、魔物を弱体化させる浄化のバリア。
完全な防御ではないが、時間を稼げる。
「これで、少しは守れるわ」
リオが感嘆の声を上げる。
「すごい……アプリリア様の魔法、どんどん強くなってます!」
アプリリアは微笑んだが、心の中では少し不安があった。
魔物の数は予想以上かもしれない。
戦闘は得意ではない。
治癒と浄化が専門だ。
その時――
遠くの森から、獣の咆哮が響いた。
ゴオオオオオッ!
木々が揺れ、鳥が一斉に飛び立つ。
黒い影が、村に向かって疾走してくる。
フォレストウルフの群れだった。
体長二メートルを超える巨体。
赤く光る目、鋭い牙。
村人たちが悲鳴を上げる。
「来たぞ!」
「バリアの中に急げ!」
アプリリアは広場の中心に立ち、両手を掲げた。
光のバリアが、魔物たちに触れる。
狼たちの動きがわずかに鈍る。
毛皮が焦げ、力が抜けるような様子。
しかし、数が多い。
バリアを突破しようと、体当たりを繰り返す。
「リオ、みんなを館へ!
私はここで食い止めるわ」
「アプリリア様、危ないです!
一緒に――」
「大丈夫。
早く!」
リオは涙目で頷き、村人たちを誘導し始めた。
アプリリアは一人、魔物たちに向き合った。
浄化の光を強め、狼たちを後退させる。
一頭が飛びかかってきた瞬間、光の矢を放って怯ませる。
だが、疲労が蓄積していた。
昨日からほとんど休んでいない。
力の消費が激しい。
――このままでは、持たないかも。
その時。
銀色の閃光が、森から飛んできた。
剣の軌跡だった。
一頭の狼が、首を刎ねられて倒れる。
血しぶきが上がり、次の狼が横様に吹き飛ばされる。
「――っ!」
アプリリアが振り返る。
そこに、男が立っていた。
銀髪を風に揺らし、青い瞳が鋭く光る。
黒い騎士服に身を包み、長い剣を軽々と扱う。
完璧な容姿。
冷徹な雰囲気。
王国最強の騎士団長――
ガイア・ヴァルハルト。
彼は無言で魔物の群れに飛び込み、剣を振るう。
一閃ごとに、狼が倒れる。
動きは美しく、圧倒的だった。
十数頭の群れが、数分で全滅した。
最後の狼が倒れると、ガイアは剣を収め、ゆっくりとアプリリアに向き直った。
「……君か」
低く、落ち着いた声。
アプリリアの心臓が、どきりと鳴った。
「あなたは……?」
「ガイア・ヴァルハルト。
騎士団長だ。
この辺りの魔物討伐で、領地を視察していた」
ガイアの青い瞳が、アプリリアをまっすぐに見つめる。
その視線は、冷たく、しかしどこか興味を帯びていた。
「君の力、見た。
聖女の力だな」
アプリリアは少し警戒しながら、頭を下げた。
「アプリリア・フォン・ロズウェルです。
この領地の領主をしています。
お助けいただき、ありがとうございます」
ガイアは軽く頷いた。
「礼はいい。
むしろ、君のバリアがなければ、村に被害が出ていただろう」
村人たちが、恐る恐る広場に戻ってきた。
リオが先頭で、アプリリアに駆け寄る。
「アプリリア様! 大丈夫ですか!?
それに、この人……すごい剣さばきでした!」
ガイアは村人たちを見回し、静かに言った。
「魔物は一掃した。
だが、また来るかもしれない。
この領地は、魔物の通り道になっている」
村人たちが不安げにざわつく。
アプリリアは前に出た。
「皆さん、大丈夫です。
ガイア様がいてくださるなら、きっと守れます」
ガイアが、わずかに眉を上げた。
「……俺は、ただの通りすがりだ」
しかし、その瞳には、アプリリアの力に興味を持っている様子が伺えた。
村人たちが、ガイアにも感謝の言葉をかける。
「騎士団長様、ありがとうございます!」
「アプリリア様と一緒に、うちの領地を守ってください!」
ガイアは少し戸惑ったように視線を逸らした。
アプリリアは、静かに微笑んだ。
――この人が、ガイア。
予知で感じた、銀色の気配。
クールで、無口で、でも圧倒的に強い。
心が、わずかに揺れた。
「ガイア様。
今日はお疲れのところ、ありがとうございました。
せめて、館でお茶でもいかがですか?」
ガイアは一瞬黙ってから、頷いた。
「……短時間なら、構わん」
二人は並んで館へ向かった。
リオが、後ろで小声で囁く。
「アプリリア様、あの人……めっちゃイケメンですね!
銀髪に青い目って、王子様みたい!」
「リオ、声が大きいわよ」
アプリリアは苦笑したが、頰が少し熱くなった。
館の応接間で、簡単なお茶を用意した。
ガイアは椅子に座り、無言で紅茶を飲む。
アプリリアは向かいに座り、静かに尋ねた。
「ガイア様は、なぜこの辺りに?」
「魔物の異常発生を調査している。
最近、王国全体で魔物が増えている。
原因は不明だ」
アプリリアは、胸の内で思った。
――エテルナの策略、かな。
まだ証拠はないが、予知でぼんやりと感じていた。
ガイアが、ふと視線を上げた。
「君の力……本物だな。
王宮で、噂になっている」
アプリリアの表情が、少し曇る。
「王宮の噂、ですか……」
ガイアは気づいたように、言葉を濁した。
「……すまない。
余計なことを言った」
「いえ。
もう、過去のことです」
二人の間に、短い沈黙が流れた。
ガイアが立ち上がる。
「今日はこれで失礼する。
また、魔物が出たら連絡しろ。
騎士団が対応する」
アプリリアも立ち上がり、頭を下げた。
「ありがとうございました。
また、お会いできるのを楽しみにしています」
ガイアは一瞬、アプリリアの顔を見つめた。
「……ああ」
彼は館を出て、馬に乗り、森の方向へ去っていった。
銀髪が、朝陽に輝く。
アプリリアはバルコニーから、その背中を見送った。
心が、静かに高鳴っていた。
――強い人。
でも、どこか寂しそう。
あの瞳の奥に、何か深い影を感じた。
リオが、横でニヤニヤしている。
「アプリリア様、顔赤いですよ~?」
「リオ!」
二人は笑い合った。
村は平和を取り戻した。
魔物の脅威は去り、アプリリアの力とガイアの剣で守られた。
だが、これは始まりに過ぎない。
ガイアは、また来る。
そして、アプリリアの心に、少しずつ入り込んでいく。
辺境の空に、朝陽が昇っていた。
新しい出会いの予感とともに。
夜明け前の空が、薄紫に染まり始めていた。
アプリリアは館のバルコニーで、森の方向をじっと見つめていた。
予知の力が、はっきりと告げている。
今日、魔物が襲ってくる。
数は十数頭。フォレストウルフの群れだ。
「アプリリア様、もう朝ですよ。
少しお休みになってください」
リオが心配そうにマントを持ってきてくれた。
「ありがとう、リオ。
でも、もうすぐ来るわ。
村の人たちに、避難の準備をさせて」
二人は急いで村へ向かった。
村人たちはすでに起きていて、アプリリアの言葉を聞いてすぐに動き始めた。
昨日癒してもらった恩義もあり、誰もが彼女を信頼していた。
「アプリリア様の言う通りなら、間違いない!」
「子供たちと年寄りを、まず館へ!」
村は慌ただしくなったが、混乱はなかった。
アプリリアの落ち着いた指示が、皆をまとめていた。
広場に簡易のバリアを張る準備をする。
アプリリアは地面に手を触れ、聖女の力で光の膜を展開した。
淡い白い光が、村全体を覆う。
これは、魔物を弱体化させる浄化のバリア。
完全な防御ではないが、時間を稼げる。
「これで、少しは守れるわ」
リオが感嘆の声を上げる。
「すごい……アプリリア様の魔法、どんどん強くなってます!」
アプリリアは微笑んだが、心の中では少し不安があった。
魔物の数は予想以上かもしれない。
戦闘は得意ではない。
治癒と浄化が専門だ。
その時――
遠くの森から、獣の咆哮が響いた。
ゴオオオオオッ!
木々が揺れ、鳥が一斉に飛び立つ。
黒い影が、村に向かって疾走してくる。
フォレストウルフの群れだった。
体長二メートルを超える巨体。
赤く光る目、鋭い牙。
村人たちが悲鳴を上げる。
「来たぞ!」
「バリアの中に急げ!」
アプリリアは広場の中心に立ち、両手を掲げた。
光のバリアが、魔物たちに触れる。
狼たちの動きがわずかに鈍る。
毛皮が焦げ、力が抜けるような様子。
しかし、数が多い。
バリアを突破しようと、体当たりを繰り返す。
「リオ、みんなを館へ!
私はここで食い止めるわ」
「アプリリア様、危ないです!
一緒に――」
「大丈夫。
早く!」
リオは涙目で頷き、村人たちを誘導し始めた。
アプリリアは一人、魔物たちに向き合った。
浄化の光を強め、狼たちを後退させる。
一頭が飛びかかってきた瞬間、光の矢を放って怯ませる。
だが、疲労が蓄積していた。
昨日からほとんど休んでいない。
力の消費が激しい。
――このままでは、持たないかも。
その時。
銀色の閃光が、森から飛んできた。
剣の軌跡だった。
一頭の狼が、首を刎ねられて倒れる。
血しぶきが上がり、次の狼が横様に吹き飛ばされる。
「――っ!」
アプリリアが振り返る。
そこに、男が立っていた。
銀髪を風に揺らし、青い瞳が鋭く光る。
黒い騎士服に身を包み、長い剣を軽々と扱う。
完璧な容姿。
冷徹な雰囲気。
王国最強の騎士団長――
ガイア・ヴァルハルト。
彼は無言で魔物の群れに飛び込み、剣を振るう。
一閃ごとに、狼が倒れる。
動きは美しく、圧倒的だった。
十数頭の群れが、数分で全滅した。
最後の狼が倒れると、ガイアは剣を収め、ゆっくりとアプリリアに向き直った。
「……君か」
低く、落ち着いた声。
アプリリアの心臓が、どきりと鳴った。
「あなたは……?」
「ガイア・ヴァルハルト。
騎士団長だ。
この辺りの魔物討伐で、領地を視察していた」
ガイアの青い瞳が、アプリリアをまっすぐに見つめる。
その視線は、冷たく、しかしどこか興味を帯びていた。
「君の力、見た。
聖女の力だな」
アプリリアは少し警戒しながら、頭を下げた。
「アプリリア・フォン・ロズウェルです。
この領地の領主をしています。
お助けいただき、ありがとうございます」
ガイアは軽く頷いた。
「礼はいい。
むしろ、君のバリアがなければ、村に被害が出ていただろう」
村人たちが、恐る恐る広場に戻ってきた。
リオが先頭で、アプリリアに駆け寄る。
「アプリリア様! 大丈夫ですか!?
それに、この人……すごい剣さばきでした!」
ガイアは村人たちを見回し、静かに言った。
「魔物は一掃した。
だが、また来るかもしれない。
この領地は、魔物の通り道になっている」
村人たちが不安げにざわつく。
アプリリアは前に出た。
「皆さん、大丈夫です。
ガイア様がいてくださるなら、きっと守れます」
ガイアが、わずかに眉を上げた。
「……俺は、ただの通りすがりだ」
しかし、その瞳には、アプリリアの力に興味を持っている様子が伺えた。
村人たちが、ガイアにも感謝の言葉をかける。
「騎士団長様、ありがとうございます!」
「アプリリア様と一緒に、うちの領地を守ってください!」
ガイアは少し戸惑ったように視線を逸らした。
アプリリアは、静かに微笑んだ。
――この人が、ガイア。
予知で感じた、銀色の気配。
クールで、無口で、でも圧倒的に強い。
心が、わずかに揺れた。
「ガイア様。
今日はお疲れのところ、ありがとうございました。
せめて、館でお茶でもいかがですか?」
ガイアは一瞬黙ってから、頷いた。
「……短時間なら、構わん」
二人は並んで館へ向かった。
リオが、後ろで小声で囁く。
「アプリリア様、あの人……めっちゃイケメンですね!
銀髪に青い目って、王子様みたい!」
「リオ、声が大きいわよ」
アプリリアは苦笑したが、頰が少し熱くなった。
館の応接間で、簡単なお茶を用意した。
ガイアは椅子に座り、無言で紅茶を飲む。
アプリリアは向かいに座り、静かに尋ねた。
「ガイア様は、なぜこの辺りに?」
「魔物の異常発生を調査している。
最近、王国全体で魔物が増えている。
原因は不明だ」
アプリリアは、胸の内で思った。
――エテルナの策略、かな。
まだ証拠はないが、予知でぼんやりと感じていた。
ガイアが、ふと視線を上げた。
「君の力……本物だな。
王宮で、噂になっている」
アプリリアの表情が、少し曇る。
「王宮の噂、ですか……」
ガイアは気づいたように、言葉を濁した。
「……すまない。
余計なことを言った」
「いえ。
もう、過去のことです」
二人の間に、短い沈黙が流れた。
ガイアが立ち上がる。
「今日はこれで失礼する。
また、魔物が出たら連絡しろ。
騎士団が対応する」
アプリリアも立ち上がり、頭を下げた。
「ありがとうございました。
また、お会いできるのを楽しみにしています」
ガイアは一瞬、アプリリアの顔を見つめた。
「……ああ」
彼は館を出て、馬に乗り、森の方向へ去っていった。
銀髪が、朝陽に輝く。
アプリリアはバルコニーから、その背中を見送った。
心が、静かに高鳴っていた。
――強い人。
でも、どこか寂しそう。
あの瞳の奥に、何か深い影を感じた。
リオが、横でニヤニヤしている。
「アプリリア様、顔赤いですよ~?」
「リオ!」
二人は笑い合った。
村は平和を取り戻した。
魔物の脅威は去り、アプリリアの力とガイアの剣で守られた。
だが、これは始まりに過ぎない。
ガイアは、また来る。
そして、アプリリアの心に、少しずつ入り込んでいく。
辺境の空に、朝陽が昇っていた。
新しい出会いの予感とともに。
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