婚約破棄された公爵令嬢は真の聖女でした ～偽りの妹を追放し、冷徹騎士団長に永遠を誓う～

第26話: 王位の変動

 第26話: 王位の変動

王宮の広間は、審議会の余韻に包まれていた。

ルキノの王位継承権剥奪宣言。  
エテルナの永久追放。  
すべてが、決着した。

王妃イザベラが、玉座からゆっくりと立ち上がった。

「ルキノ・エドワードの王位継承権剥奪を、正式に承認する。  
後継者は、重臣会議で選出するまで、私が摂政を務める」

重臣たちが、次々に賛同の意を表す。

「王妃様の御裁可に、異存なし」

ルキノは、跪いたまま動けない。  
金髪が床に触れ、肩が震えていた。

衛兵が、ルキノを支えて立ち上がらせる。

「殿下……お立ちください」

ルキノは、アプリリアの方を見た。

「……アプリリア。  
お前が、正しかった」

アプリリアは、静かに頷いた。

「ルキノ殿下。  
あなたは、自分の道を選んだ。  
これからは、静かに生きてください」

ルキノは、衛兵に連れられ、広間を去った。

彼の末路は、王族の隠棲所。  
権力も、名誉も、すべて失った平穏な生活。

だが、それは彼自身が望んだ贖罪だった。

エテルナは、すでに馬車で王都を追放されていた。  
鎖を外され、わずかな旅費だけを与えられ、  
王国領土の外へ、永久に。

彼女の叫び声は、もう聞こえない。

王妃が、アプリリアに歩み寄った。

「アプリリア。  
あなたは、王国を救った英雄だ。  
新王妃の候補として、迎えたい。  
王位を支え、民を導く存在として」

広間が、静まり返る。

貴族たちが、息を呑む。

アプリリアが、新王妃に？

民の代表たちが、歓声を上げかけた。

しかし、アプリリアは、静かに首を振った。

「王妃様。  
お気持ちは、ありがたく存じます。  
ですが、私はお受けできません」

王妃が、驚きの目を向ける。

「なぜだ？  
あなたなら、王国はさらに繁栄する」

アプリリアは、ガイアの手を取った。

ガイアが、胸を張って前に出る。

「私は、ガイア・ヴァルハルトを選びました。  
彼と共に、聖女として王国を支えたい。  
王妃の座ではなく、自由な立場で」

ガイアが、アプリリアを見つめ、頷く。

「俺は、アプリリアの夫として、  
彼女を支え、王国を守る」

広間が、どよめいた。

王妃が、ゆっくりと微笑んだ。

「そうか……  
あなたの意志を、尊重する。  
ガイア・ヴァルハルトを、聖女の伴侶として認める」

貴族たちが、次々に拍手を送る。

「聖女様と騎士団長！ お似合いです！」  
「王国は、安泰だ！」

ゼストが、妹を抱きしめた。

「アプリリア……お前は、ほんとに強くなったな」

リオが、涙を流しながら駆け寄る。

「アプリリア様！ おめでとうございます！  
ガイア様も！」

カイルが、ガイアの背中を叩く。

「団長！ やったな！  
聖女様と結婚かよ！」

ガイアの耳が、赤くなる。

レオンハルト公爵が、娘の前に跪いた。

「アプリリア……お前を選ばなかった俺は、愚かだった。  
だが、今はお前の幸せを、心から祈る」

アプリリアは、父を起こした。

「父上。  
ありがとうございます」

王位の変動は、静かに決まった。

ルキノの剥奪。  
エテルナの完全追放。

アプリリアは、王妃の座を拒否し、  
ガイアを選んだ。

彼女は、聖女として自由に王国を支える存在に。

民の歓声が、王宮の外に響く。

「聖女様と騎士団長！ 万歳！」

アプリリアは、ガイアと手を繋ぎ、バルコニーに出た。

民に、手を振る。

ガイアが、小声で言った。

「お前は、俺のすべてだ」

アプリリアが、微笑む。

「あなたもよ」

二人は、短くキスを交わした。

民の歓声が、さらに高まる。

王位は、新たな者に移る。

だが、王国は、アプリリアの光で輝く。

ルキノは、隠棲所で静かに暮らす。

エテルナは、荒野の向こうで、孤独に生きる。

アプリリアは、  
ガイアを選び、  
自分の幸せを選んだ。

華麗なる逆転は、  
完璧に完結した。

王宮の空は、  
祝福の光に満ちていた。

新しい時代が、  
始まる。

アプリリアとガイアの、  
愛の時代が。