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第14話 国は守られていると、誰もが思っていた
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第14話 国は守られていると、誰もが思っていた
王都南区。
朝の市場は、いつもより騒がしかった。
「……おい、今日も動いてないぞ」
「何だって?」
露店の店主が、頭上を見上げながら呟く。
魔導街灯――王都の象徴とも言える公共設備が、昼間だというのに不安定に明滅していた。
「またか……」
「昨日も北区で止まったらしいぞ」
「最近、多すぎないか?」
人々は、自然と声を潜める。
誰も大声では言わないが、共通の不安があった。
――本当に、結界は大丈夫なのか?
その疑問は、昼過ぎにははっきりとした形になる。
南区外縁。
商業倉庫街の一角で、魔導防護柵が一時的に停止した。
「魔物だ!」
「柵が開いてる!」
幸い侵入したのは小型の魔物一体。
警備兵がすぐに対処したが、倉庫一棟が半壊した。
被害者は、怒りを隠さなかった。
「結界があるから、ここに倉庫を構えたんだぞ!」
「補償はどうなる!」
叫び声は、すぐに広がる。
王宮。
緊急報告を受けたアラルガン王太子は、机を叩いた。
「またか!」
「……はい。
幸い人的被害は――」
「そういう問題じゃない!」
王太子は、報告官を睨みつける。
「なぜ、完全に止められない!」
「……応急安定化が、行われていないため……」
その言葉に、王太子の表情が歪む。
「……隣国の返事は?」
「修正案への返答は、まだです」
それは、事実上の拒否だった。
王太子は、苛立ちを隠そうともしない。
「……あの女め」
だが、その感情は、すでに遅い。
街では、不満が“声”になり始めていた。
南区の広場。
自然発生的に人が集まり、議論が起きる。
「最近、おかしいよな」
「エルフレイド様がいた頃は、こんなことなかった」
「名前、出すなよ……」
「でも、事実だろ!」
誰かが、勇気を出したように声を張り上げる。
「前は、結界が揺れたことなんて一度もなかった!」
「そうだ!
魔導具も、暖房も、全部安定してた!」
噂は、確信に変わっていく。
「……あの人が、全部管理してたって聞いたぞ」
「王太子殿下が、追い出したんだろ?」
「なんでだよ……」
その疑問に、誰も答えられない。
答えられないまま、怒りだけが残る。
夕方。
王都北区でも、同様の騒ぎが起きた。
魔導暖房の再停止。
子どもを抱えた母親が、涙声で訴える。
「寒いんです……
子どもが、風邪を……」
その声は、周囲の人々の胸を打った。
「結界は国が守るって、言ってたじゃないか!」
「税金は、何のために払ってる!」
怒号が、渦を巻く。
その夜。
王宮前に、人が集まり始めた。
最初は数十人。
だが、噂が噂を呼び、数は膨れ上がる。
「説明しろ!」
「安全だって言っただろ!」
「誰が責任を取るんだ!」
兵士たちは、必死に制止する。
だが、民衆は引かない。
王太子は、宮殿の窓からその様子を見下ろしていた。
「……ここまでとは」
側近が、震える声で言う。
「殿下、これ以上は……」
「静まる」
王太子は、強く言い切る。
「一時的な混乱だ。
時間が経てば――」
「殿下!」
ローディアスが、思わず声を上げる。
「民は、“時間”を持っていません!」
その言葉は、正しかった。
民は、今夜を、明日を、生きなければならない。
結界が揺れ、暖房が止まり、魔物が侵入する。
それは、生活の崩壊だ。
一方、隣国。
エルフレイドは、静かに報告書を閉じた。
「……民衆が動き始めました」
ゼノスは、頷く。
「指導者が決断を誤ると、
最後に動くのは、民だ」
「はい」
彼女は、淡々と答える。
「そして、民は理屈ではなく、
“結果”で判断します」
ペンを取り、白紙の紙に視線を落とす。
「……そろそろですね」
「最終条件か」
「ええ」
エルフレイドは、はっきりと言った。
「次は、“選択”ではありません」
それは、宣告に近い声だった。
「受け入れるか、崩壊するか」
その夜、王都では不安の声が止まらなかった。
そして、アラルガン王太子は、ようやく理解し始める。
――これは、
自分とあの女の問題ではない。
――国そのものの問題だと。
だが、その理解は、
あまりにも――遅すぎた。
王都南区。
朝の市場は、いつもより騒がしかった。
「……おい、今日も動いてないぞ」
「何だって?」
露店の店主が、頭上を見上げながら呟く。
魔導街灯――王都の象徴とも言える公共設備が、昼間だというのに不安定に明滅していた。
「またか……」
「昨日も北区で止まったらしいぞ」
「最近、多すぎないか?」
人々は、自然と声を潜める。
誰も大声では言わないが、共通の不安があった。
――本当に、結界は大丈夫なのか?
その疑問は、昼過ぎにははっきりとした形になる。
南区外縁。
商業倉庫街の一角で、魔導防護柵が一時的に停止した。
「魔物だ!」
「柵が開いてる!」
幸い侵入したのは小型の魔物一体。
警備兵がすぐに対処したが、倉庫一棟が半壊した。
被害者は、怒りを隠さなかった。
「結界があるから、ここに倉庫を構えたんだぞ!」
「補償はどうなる!」
叫び声は、すぐに広がる。
王宮。
緊急報告を受けたアラルガン王太子は、机を叩いた。
「またか!」
「……はい。
幸い人的被害は――」
「そういう問題じゃない!」
王太子は、報告官を睨みつける。
「なぜ、完全に止められない!」
「……応急安定化が、行われていないため……」
その言葉に、王太子の表情が歪む。
「……隣国の返事は?」
「修正案への返答は、まだです」
それは、事実上の拒否だった。
王太子は、苛立ちを隠そうともしない。
「……あの女め」
だが、その感情は、すでに遅い。
街では、不満が“声”になり始めていた。
南区の広場。
自然発生的に人が集まり、議論が起きる。
「最近、おかしいよな」
「エルフレイド様がいた頃は、こんなことなかった」
「名前、出すなよ……」
「でも、事実だろ!」
誰かが、勇気を出したように声を張り上げる。
「前は、結界が揺れたことなんて一度もなかった!」
「そうだ!
魔導具も、暖房も、全部安定してた!」
噂は、確信に変わっていく。
「……あの人が、全部管理してたって聞いたぞ」
「王太子殿下が、追い出したんだろ?」
「なんでだよ……」
その疑問に、誰も答えられない。
答えられないまま、怒りだけが残る。
夕方。
王都北区でも、同様の騒ぎが起きた。
魔導暖房の再停止。
子どもを抱えた母親が、涙声で訴える。
「寒いんです……
子どもが、風邪を……」
その声は、周囲の人々の胸を打った。
「結界は国が守るって、言ってたじゃないか!」
「税金は、何のために払ってる!」
怒号が、渦を巻く。
その夜。
王宮前に、人が集まり始めた。
最初は数十人。
だが、噂が噂を呼び、数は膨れ上がる。
「説明しろ!」
「安全だって言っただろ!」
「誰が責任を取るんだ!」
兵士たちは、必死に制止する。
だが、民衆は引かない。
王太子は、宮殿の窓からその様子を見下ろしていた。
「……ここまでとは」
側近が、震える声で言う。
「殿下、これ以上は……」
「静まる」
王太子は、強く言い切る。
「一時的な混乱だ。
時間が経てば――」
「殿下!」
ローディアスが、思わず声を上げる。
「民は、“時間”を持っていません!」
その言葉は、正しかった。
民は、今夜を、明日を、生きなければならない。
結界が揺れ、暖房が止まり、魔物が侵入する。
それは、生活の崩壊だ。
一方、隣国。
エルフレイドは、静かに報告書を閉じた。
「……民衆が動き始めました」
ゼノスは、頷く。
「指導者が決断を誤ると、
最後に動くのは、民だ」
「はい」
彼女は、淡々と答える。
「そして、民は理屈ではなく、
“結果”で判断します」
ペンを取り、白紙の紙に視線を落とす。
「……そろそろですね」
「最終条件か」
「ええ」
エルフレイドは、はっきりと言った。
「次は、“選択”ではありません」
それは、宣告に近い声だった。
「受け入れるか、崩壊するか」
その夜、王都では不安の声が止まらなかった。
そして、アラルガン王太子は、ようやく理解し始める。
――これは、
自分とあの女の問題ではない。
――国そのものの問題だと。
だが、その理解は、
あまりにも――遅すぎた。
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