112 / 184
第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝
第110話・大切にされるということ
しおりを挟む
翌朝――。
シグは夜明けとともに目を覚ました。
隣では、ルナフィエラがまだ深い眠りの中にいる。
穏やかな寝顔と、ゆったりとした呼吸。
昨夜までの甘く激しい時間の余韻が、ほんのりとその顔に残っていた。
(……まだ起こすわけにはいかねぇな)
そう心の中で呟き、シグはただ静かに彼女を抱き寄せたまま、目を閉じずにその温もりを感じ続けた。
やがて朝食の時刻になっても、彼女はまったく起きる気配を見せなかった。
シグが様子を見に廊下へ出たところで、ヴィクトル、ユリウス、フィンが揃って現れる。
軽く「おはよう」と言葉を交わすと、自然と足はルナフィエラの寝室へ向かった。
ベッドの上で眠る彼女は、まるで小さな子どものように無防備で、あどけない表情を浮かべている。
ヴィクトルがそっと額に手を置き、熱の有無を確かめた。
「……平熱ですね。疲れが出ているだけでしょう」
ユリウスも横から頷き、「なら、自然に目を覚ますのを待とう」と静かに言った。
フィンは足元に腰を下ろし、「こうして待ってるのも悪くないよね」と微笑み、シグも「……ああ」と短く返す。
4人はそれぞれの位置で、ただ静かにルナフィエラの眠りを見守った。
誰も声を荒げず、足音ひとつ立てない。
部屋には柔らかな陽光と、彼女の寝息だけが満ちていた。
そして――お昼前。
ルナフィエラがゆっくりとまぶたを開く。
視界に映ったのは、揃ってこちらを見つめる4人の姿。
「…ん…あれ……おはよう……?」
寝ぼけ混じりの声に、4人の表情がふっと緩んだ。
「……おはようございます、ルナ様」
ヴィクトルが優しく答える。
しかし、上体を起こそうとした瞬間――。
「……っ」
小さな声が漏れ、枕へと沈み込んだ。
体が鉛のように重い。
腰や脚はこわばり、動かそうとするたびに鈍い痛みがじんわり広がる。
「……ルナ様?」
すぐそばのヴィクトルが、心配そうに覗き込む。
「……ごめんなさい……起きられない……」
情けなさと申し訳なさが入り混じった声。
そんな彼女の言葉に、4人の表情が一瞬だけ固まった。
原因はわかりきっていた。
昨夜、自分たちが――大切にしながらも、確かに無理をさせたのだ。
「謝る必要なんてないよ」
ユリウスが柔らかく制し、そっとルナフィエラの頭を撫でる。
「これは僕たちの責任だ。今日は安静にしていよう」
「そうだよ、ルナが動けないのは僕らのせいなんだから」
フィンが少し苦笑しながらも、彼女の手を包み込み治癒魔法をかける。
シグは視線を外し、短く「……動かなくていい。全部任せろ」とだけ言ったが、その声音には罪悪感が滲んでいた。
ルナフィエラは、4人がそんなふうに思ってくれているとわかって、胸の奥が少しだけ温かくなった。
けれど、同時に――(……みんなに迷惑かけちゃった……)という小さな棘も残る。
「……ほんとに、ごめんね」
もう一度そう呟くと、ヴィクトルがそっと掛け布を直し、目を細めて言った。
「謝られることではありません。……今は、ただお休みください」
その言葉に、ルナフィエラは素直に頷き、再び枕へ頭を預けた。
4人の視線は、まるで守る壁のように彼女を囲んでいた。
その日、ルナフィエラは自力でベッドを出ることはなかった。
朝昼晩の食事はすべて寝室まで運ばれ、フィンやヴィクトルが自然にスプーンを差し出す。
「ほら、あーん」
いたずらっぽく笑うフィンは、口元を丁寧に拭ってくれる。
ヴィクトルは一口ごとに「おいしいですか」と優しく問いかけた。
退屈しないようにと、ユリウスは書庫から何冊も本を持ってきてくれた。
表紙から、彼が「これなら楽しめるはず」と選んだのがわかる。
シグは何も言わず隣に座り、ページをめくる音や窓の外の鳥の声を一緒に聞いてくれる。
窓辺に行きたい、少し体を伸ばしたい――そんな願いにも無言で片腕を差し出し、抱き上げてくれた。
そうして一日がゆっくりと過ぎていく中で、ルナフィエラはふと気づく。
自分が今、どれだけ大切にされているのか。
守られて、甘やかされて、そして心配されて――そのすべてが、心を温かく満たしていく。
(……幸せだな、私……)
そう胸の中で呟いた瞬間、全身が柔らかい布に包まれたような感覚になり、ルナフィエラは自然と微笑みを浮かべていた。
シグは夜明けとともに目を覚ました。
隣では、ルナフィエラがまだ深い眠りの中にいる。
穏やかな寝顔と、ゆったりとした呼吸。
昨夜までの甘く激しい時間の余韻が、ほんのりとその顔に残っていた。
(……まだ起こすわけにはいかねぇな)
そう心の中で呟き、シグはただ静かに彼女を抱き寄せたまま、目を閉じずにその温もりを感じ続けた。
やがて朝食の時刻になっても、彼女はまったく起きる気配を見せなかった。
シグが様子を見に廊下へ出たところで、ヴィクトル、ユリウス、フィンが揃って現れる。
軽く「おはよう」と言葉を交わすと、自然と足はルナフィエラの寝室へ向かった。
ベッドの上で眠る彼女は、まるで小さな子どものように無防備で、あどけない表情を浮かべている。
ヴィクトルがそっと額に手を置き、熱の有無を確かめた。
「……平熱ですね。疲れが出ているだけでしょう」
ユリウスも横から頷き、「なら、自然に目を覚ますのを待とう」と静かに言った。
フィンは足元に腰を下ろし、「こうして待ってるのも悪くないよね」と微笑み、シグも「……ああ」と短く返す。
4人はそれぞれの位置で、ただ静かにルナフィエラの眠りを見守った。
誰も声を荒げず、足音ひとつ立てない。
部屋には柔らかな陽光と、彼女の寝息だけが満ちていた。
そして――お昼前。
ルナフィエラがゆっくりとまぶたを開く。
視界に映ったのは、揃ってこちらを見つめる4人の姿。
「…ん…あれ……おはよう……?」
寝ぼけ混じりの声に、4人の表情がふっと緩んだ。
「……おはようございます、ルナ様」
ヴィクトルが優しく答える。
しかし、上体を起こそうとした瞬間――。
「……っ」
小さな声が漏れ、枕へと沈み込んだ。
体が鉛のように重い。
腰や脚はこわばり、動かそうとするたびに鈍い痛みがじんわり広がる。
「……ルナ様?」
すぐそばのヴィクトルが、心配そうに覗き込む。
「……ごめんなさい……起きられない……」
情けなさと申し訳なさが入り混じった声。
そんな彼女の言葉に、4人の表情が一瞬だけ固まった。
原因はわかりきっていた。
昨夜、自分たちが――大切にしながらも、確かに無理をさせたのだ。
「謝る必要なんてないよ」
ユリウスが柔らかく制し、そっとルナフィエラの頭を撫でる。
「これは僕たちの責任だ。今日は安静にしていよう」
「そうだよ、ルナが動けないのは僕らのせいなんだから」
フィンが少し苦笑しながらも、彼女の手を包み込み治癒魔法をかける。
シグは視線を外し、短く「……動かなくていい。全部任せろ」とだけ言ったが、その声音には罪悪感が滲んでいた。
ルナフィエラは、4人がそんなふうに思ってくれているとわかって、胸の奥が少しだけ温かくなった。
けれど、同時に――(……みんなに迷惑かけちゃった……)という小さな棘も残る。
「……ほんとに、ごめんね」
もう一度そう呟くと、ヴィクトルがそっと掛け布を直し、目を細めて言った。
「謝られることではありません。……今は、ただお休みください」
その言葉に、ルナフィエラは素直に頷き、再び枕へ頭を預けた。
4人の視線は、まるで守る壁のように彼女を囲んでいた。
その日、ルナフィエラは自力でベッドを出ることはなかった。
朝昼晩の食事はすべて寝室まで運ばれ、フィンやヴィクトルが自然にスプーンを差し出す。
「ほら、あーん」
いたずらっぽく笑うフィンは、口元を丁寧に拭ってくれる。
ヴィクトルは一口ごとに「おいしいですか」と優しく問いかけた。
退屈しないようにと、ユリウスは書庫から何冊も本を持ってきてくれた。
表紙から、彼が「これなら楽しめるはず」と選んだのがわかる。
シグは何も言わず隣に座り、ページをめくる音や窓の外の鳥の声を一緒に聞いてくれる。
窓辺に行きたい、少し体を伸ばしたい――そんな願いにも無言で片腕を差し出し、抱き上げてくれた。
そうして一日がゆっくりと過ぎていく中で、ルナフィエラはふと気づく。
自分が今、どれだけ大切にされているのか。
守られて、甘やかされて、そして心配されて――そのすべてが、心を温かく満たしていく。
(……幸せだな、私……)
そう胸の中で呟いた瞬間、全身が柔らかい布に包まれたような感覚になり、ルナフィエラは自然と微笑みを浮かべていた。
10
あなたにおすすめの小説
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
召喚先は、誰も居ない森でした
みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて──
次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず──
その先で、茉白が見たモノは──
最初はシリアス展開が続きます。
❋他視点のお話もあります
❋独自設定有り
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる