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第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝
第111話・小さな願いから始まる旅
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初めて結ばれた夜から、いくつか季節が過ぎた。
古城での日々は穏やかで、あたたかくて、そして満ち足りている。
恋人として過ごすことにも慣れ、4人との距離はさらに近くなっていた。
ある日の午後。
読書の合間に窓の外へ視線を向けていたルナフィエラが、ふと小さくつぶやく。
「……もっと、外を見てみたいな」
近くにいたユリウスが顔を上げる。
「外、とは?」
「うん……前に古城の近くの街には行ったことがあるけど、それだけでしょ? 本には、もっと色んな景色が載ってるから…
海とか、山とか、大きな湖とか……」
言葉を重ねるうちに、ルナフィエラの瞳は少しずつ輝きを帯びていく。
「せっかくみんなと一緒なんだし……遠くまで、行ってみたいなって」
数秒の静けさのあと――
「いいね、それ!」
フィンが真っ先に笑顔で応じる。
「僕、旅好きだし! ルナと行くなら最高だよ!」
「……安全面の準備は必要ですが、私も賛成です」
ヴィクトルが真剣な表情で頷く。
「ルナ様の望みなら、全力で叶えたい」
「行くなら計画はしっかり立てよう」
ユリウスはすでに道順を思案しているようだった。
「……道中の安全は任せろ」
シグは短くそう言い切る。
思いがけず全員が即答で賛同してくれたことに、ルナフィエラは目を丸くする。
「……ほんとにいいの?」
「ああ、本当に」
4人の視線と声が重なり、胸の奥に温かいものが広がった。
こうして――小さな呟きから始まった「初めての遠出」は、その日のうちに計画が動き出すことになった。
——————
出発の朝、古城の前には旅支度を整えた5人が並んでいた。
ルナフィエラも、いつものドレスではなく動きやすい旅装に着替え、背には軽い荷を背負っている。
行き先は――温泉郷・クルミアの谷。
話し合いの末に決まった目的地だ。
フィンが以前任務で訪れた経験があり「珍しいお風呂があるんだ!」という言葉に、ルナフィエラは本でしか知らない景色への憧れを強くした。
ただ、そこまでの道のりは長い。
最寄りの街から馬車を利用してもひと月以上かかる。
古城の前に馬車を呼ぶ案も出たが、彼女は首を横に振った。
「……ここに馬車を呼ぶのは、少し……」
言葉を選びながらも、彼女の胸にあるのは過去の記憶――ヴァンパイアとして人々から向けられた視線や恐れ。
それを思えば、知らぬ者に古城を知られることは避けたかった。
その想いを察したヴィクトルが、静かに頷く。
「では、街までは徒歩で行きましょう。その方が安全です」
他の三人も異論なく同意し、準備は整った。
そして出発前、ユリウスは古城を守るための結界の準備を始めた。
長期間、古城を空けた経験がないため、ルナフィエラの胸に小さな不安が渦巻いていたが、その心を察したのは、ユリウスだった。
「……留守の間は守護結界を張っておこう」
結界は、ルナフィエラの血と魔力を使い、彼女が解除しない限り誰も立ち入れない強力なもの。
さらに存在認識阻害が組み込まれ、外からは古城の存在自体がわからなくなるという。
「これなら、よほどの力を持った者でもなければ、近づくことさえできないよ」
説明を聞くたびに、ルナフィエラの胸の重みが少しずつほどけていく。
「……ありがとう、ユリウス」
彼女の微笑みに、ユリウスは柔らかく目を細めた。
こうして5人は歩き出した。
森を抜け、小川を渡り、鳥のさえずりを聞きながら――。
背後にあるはずの古城は、もう誰の目にも映らない。
古城での日々は穏やかで、あたたかくて、そして満ち足りている。
恋人として過ごすことにも慣れ、4人との距離はさらに近くなっていた。
ある日の午後。
読書の合間に窓の外へ視線を向けていたルナフィエラが、ふと小さくつぶやく。
「……もっと、外を見てみたいな」
近くにいたユリウスが顔を上げる。
「外、とは?」
「うん……前に古城の近くの街には行ったことがあるけど、それだけでしょ? 本には、もっと色んな景色が載ってるから…
海とか、山とか、大きな湖とか……」
言葉を重ねるうちに、ルナフィエラの瞳は少しずつ輝きを帯びていく。
「せっかくみんなと一緒なんだし……遠くまで、行ってみたいなって」
数秒の静けさのあと――
「いいね、それ!」
フィンが真っ先に笑顔で応じる。
「僕、旅好きだし! ルナと行くなら最高だよ!」
「……安全面の準備は必要ですが、私も賛成です」
ヴィクトルが真剣な表情で頷く。
「ルナ様の望みなら、全力で叶えたい」
「行くなら計画はしっかり立てよう」
ユリウスはすでに道順を思案しているようだった。
「……道中の安全は任せろ」
シグは短くそう言い切る。
思いがけず全員が即答で賛同してくれたことに、ルナフィエラは目を丸くする。
「……ほんとにいいの?」
「ああ、本当に」
4人の視線と声が重なり、胸の奥に温かいものが広がった。
こうして――小さな呟きから始まった「初めての遠出」は、その日のうちに計画が動き出すことになった。
——————
出発の朝、古城の前には旅支度を整えた5人が並んでいた。
ルナフィエラも、いつものドレスではなく動きやすい旅装に着替え、背には軽い荷を背負っている。
行き先は――温泉郷・クルミアの谷。
話し合いの末に決まった目的地だ。
フィンが以前任務で訪れた経験があり「珍しいお風呂があるんだ!」という言葉に、ルナフィエラは本でしか知らない景色への憧れを強くした。
ただ、そこまでの道のりは長い。
最寄りの街から馬車を利用してもひと月以上かかる。
古城の前に馬車を呼ぶ案も出たが、彼女は首を横に振った。
「……ここに馬車を呼ぶのは、少し……」
言葉を選びながらも、彼女の胸にあるのは過去の記憶――ヴァンパイアとして人々から向けられた視線や恐れ。
それを思えば、知らぬ者に古城を知られることは避けたかった。
その想いを察したヴィクトルが、静かに頷く。
「では、街までは徒歩で行きましょう。その方が安全です」
他の三人も異論なく同意し、準備は整った。
そして出発前、ユリウスは古城を守るための結界の準備を始めた。
長期間、古城を空けた経験がないため、ルナフィエラの胸に小さな不安が渦巻いていたが、その心を察したのは、ユリウスだった。
「……留守の間は守護結界を張っておこう」
結界は、ルナフィエラの血と魔力を使い、彼女が解除しない限り誰も立ち入れない強力なもの。
さらに存在認識阻害が組み込まれ、外からは古城の存在自体がわからなくなるという。
「これなら、よほどの力を持った者でもなければ、近づくことさえできないよ」
説明を聞くたびに、ルナフィエラの胸の重みが少しずつほどけていく。
「……ありがとう、ユリウス」
彼女の微笑みに、ユリウスは柔らかく目を細めた。
こうして5人は歩き出した。
森を抜け、小川を渡り、鳥のさえずりを聞きながら――。
背後にあるはずの古城は、もう誰の目にも映らない。
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