114 / 184
第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝
第112話・小さな発見と大きな支え
しおりを挟む
森の小道に、一行の足音が軽やかに響いていた。
ルナフィエラの胸は高鳴り続けている。
古城から外へ出るのは久しぶりで、しかも遠出の旅。
緊張と期待が入り混じり、自然と歩調も少し早くなっていた。
そんな彼女の手を、フィンが明るく引いている。
「ねぇ見て、ルナ! ほら、あそこ、赤い花が咲いてる!」
「ほんとだ……! 本で見たのと同じ……」
景色の新鮮さが次々と目に飛び込み、草花の揺れや小鳥の声さえ胸を躍らせる。
自然と笑みがこぼれ、瞳は好奇心に輝いた。
そんな二人の少し後ろでは、ヴィクトルが黙々と荷を背負い、護衛の視線を絶やさずに歩んでいる。
「……ルナ様、陽射しが強くなってきました。帽子を少し、深めに」
帽子を整えてくれる仕草は自然でありながら、どこか甘やかだ。
ルナフィエラは小さく頷き、「ありがとう」と囁いた。
さらに後方、ユリウスは静かに歩きながら周囲を観察していた。
道の傾斜や獣道の位置、風向きまで見逃さない。
「少し先に開けた場所がある。休憩はそこでとろう」
冷静な声が響くと、前方を警戒していたシグが無言で頷いた。
——だが。
しばらく歩くうちに、ルナフィエラの足取りは徐々に重くなっていった。
高揚感が落ち着くにつれ、体力のなさが現れてしまう。
「……ルナ」
シグが振り返り、短く声をかける。
その表情は変わらないが、その鋭い眼差しは彼女の疲れを見抜いていた。
「だ、大丈夫……」
そう答えた瞬間にはもう、シグの腕が彼女の腰を支えていた。
片腕でひょいと抱き上げるようにして、歩調を落とさず進んでいく。
「……無理すんな。街に着く前に潰れたら困る」
「う……で、でも……」
「任せろ」
揺るぎない声音に、不思議と胸の奥が安らぐ。
腕に支えられる温もりに、緊張が解けていった。
振り返ったフィンが明るく笑う。
「やっぱりシグだね! でも街に着いたら、また僕が一番にルナの手を引くから!」
その明るさに、ルナフィエラもつい小さく笑ってしまう。
——こうして一行は、陽の光を浴びながら森の中を進んでいった。
木漏れ日の差す森の中、小川のせせらぎが耳に心地よく響いていた。
ユリウスの指示で、一行は大きな木の根元に腰を下ろす。
「ここなら風通しもいいし、休める」
ルナフィエラは草の上に座り、背筋をのばして深く息をつく。
全身にじんわりと疲れが広がっていた。
ヴィクトルは水袋を取り出し、彼女の前に差し出した。
「どうぞ、ルナ様。冷たい水です」
「ありがとう、ヴィクトル」
口に含んだ瞬間、喉を潤すひんやりとした感覚に、自然と笑みがこぼれる。
フィンはというと、近くの茂みを探って何かを摘んできた。
「見て見て! 食べられる木の実がなってたんだ!」
小さな掌に乗せられた赤い実を、ルナフィエラの口元へと差し出す。
彼女は戸惑いながらも、ぱくりと口に含んだ。
「……甘い」
「でしょ! 僕の目利きはばっちりだから!」
得意げに胸を張るフィンに、ルナフィエラは思わずくすりと笑ってしまう。
その様子を眺めていたシグが、木の根元から立ち上がった。
「……次は俺が行ってくる。飲み水は多めにあった方がいい」
そう言って小川へ向かう後ろ姿は、相変わらずの寡黙さだが、確かに仲間を気遣っている。
一方、ユリウスは広げた地図に視線を落としながらも、ちらりとルナフィエラの様子を確認する。
「体力は持ちそうか?」
「……うん、大丈夫。みんなが一緒だから」
彼女の答えに、ユリウスはほんのわずかに口元を緩めた。
「ならいい。あと二刻ほど歩けば街が見えてくる」
ヴィクトルは帽子のつばを整えてやり、柔らかく囁く。
「焦らず、ゆっくりでよろしいのです。ルナ様の歩調に合わせますから」
寄り添う温かな声音に、ルナフィエラの胸は満ちていく。
——こうして一行はしばしの休息をとり、再び街道へと足を向けた。
その先に広がる新しい景色を思えば、疲れさえも甘やかなものに変わっていくのだった。
ルナフィエラの胸は高鳴り続けている。
古城から外へ出るのは久しぶりで、しかも遠出の旅。
緊張と期待が入り混じり、自然と歩調も少し早くなっていた。
そんな彼女の手を、フィンが明るく引いている。
「ねぇ見て、ルナ! ほら、あそこ、赤い花が咲いてる!」
「ほんとだ……! 本で見たのと同じ……」
景色の新鮮さが次々と目に飛び込み、草花の揺れや小鳥の声さえ胸を躍らせる。
自然と笑みがこぼれ、瞳は好奇心に輝いた。
そんな二人の少し後ろでは、ヴィクトルが黙々と荷を背負い、護衛の視線を絶やさずに歩んでいる。
「……ルナ様、陽射しが強くなってきました。帽子を少し、深めに」
帽子を整えてくれる仕草は自然でありながら、どこか甘やかだ。
ルナフィエラは小さく頷き、「ありがとう」と囁いた。
さらに後方、ユリウスは静かに歩きながら周囲を観察していた。
道の傾斜や獣道の位置、風向きまで見逃さない。
「少し先に開けた場所がある。休憩はそこでとろう」
冷静な声が響くと、前方を警戒していたシグが無言で頷いた。
——だが。
しばらく歩くうちに、ルナフィエラの足取りは徐々に重くなっていった。
高揚感が落ち着くにつれ、体力のなさが現れてしまう。
「……ルナ」
シグが振り返り、短く声をかける。
その表情は変わらないが、その鋭い眼差しは彼女の疲れを見抜いていた。
「だ、大丈夫……」
そう答えた瞬間にはもう、シグの腕が彼女の腰を支えていた。
片腕でひょいと抱き上げるようにして、歩調を落とさず進んでいく。
「……無理すんな。街に着く前に潰れたら困る」
「う……で、でも……」
「任せろ」
揺るぎない声音に、不思議と胸の奥が安らぐ。
腕に支えられる温もりに、緊張が解けていった。
振り返ったフィンが明るく笑う。
「やっぱりシグだね! でも街に着いたら、また僕が一番にルナの手を引くから!」
その明るさに、ルナフィエラもつい小さく笑ってしまう。
——こうして一行は、陽の光を浴びながら森の中を進んでいった。
木漏れ日の差す森の中、小川のせせらぎが耳に心地よく響いていた。
ユリウスの指示で、一行は大きな木の根元に腰を下ろす。
「ここなら風通しもいいし、休める」
ルナフィエラは草の上に座り、背筋をのばして深く息をつく。
全身にじんわりと疲れが広がっていた。
ヴィクトルは水袋を取り出し、彼女の前に差し出した。
「どうぞ、ルナ様。冷たい水です」
「ありがとう、ヴィクトル」
口に含んだ瞬間、喉を潤すひんやりとした感覚に、自然と笑みがこぼれる。
フィンはというと、近くの茂みを探って何かを摘んできた。
「見て見て! 食べられる木の実がなってたんだ!」
小さな掌に乗せられた赤い実を、ルナフィエラの口元へと差し出す。
彼女は戸惑いながらも、ぱくりと口に含んだ。
「……甘い」
「でしょ! 僕の目利きはばっちりだから!」
得意げに胸を張るフィンに、ルナフィエラは思わずくすりと笑ってしまう。
その様子を眺めていたシグが、木の根元から立ち上がった。
「……次は俺が行ってくる。飲み水は多めにあった方がいい」
そう言って小川へ向かう後ろ姿は、相変わらずの寡黙さだが、確かに仲間を気遣っている。
一方、ユリウスは広げた地図に視線を落としながらも、ちらりとルナフィエラの様子を確認する。
「体力は持ちそうか?」
「……うん、大丈夫。みんなが一緒だから」
彼女の答えに、ユリウスはほんのわずかに口元を緩めた。
「ならいい。あと二刻ほど歩けば街が見えてくる」
ヴィクトルは帽子のつばを整えてやり、柔らかく囁く。
「焦らず、ゆっくりでよろしいのです。ルナ様の歩調に合わせますから」
寄り添う温かな声音に、ルナフィエラの胸は満ちていく。
——こうして一行はしばしの休息をとり、再び街道へと足を向けた。
その先に広がる新しい景色を思えば、疲れさえも甘やかなものに変わっていくのだった。
1
あなたにおすすめの小説
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
召喚先は、誰も居ない森でした
みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて──
次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず──
その先で、茉白が見たモノは──
最初はシリアス展開が続きます。
❋他視点のお話もあります
❋独自設定有り
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる