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第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝
第110話・大切にされるということ
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翌朝――。
シグは夜明けとともに目を覚ました。
隣では、ルナフィエラがまだ深い眠りの中にいる。
穏やかな寝顔と、ゆったりとした呼吸。
昨夜までの甘く激しい時間の余韻が、ほんのりとその顔に残っていた。
(……まだ起こすわけにはいかねぇな)
そう心の中で呟き、シグはただ静かに彼女を抱き寄せたまま、目を閉じずにその温もりを感じ続けた。
やがて朝食の時刻になっても、彼女はまったく起きる気配を見せなかった。
シグが様子を見に廊下へ出たところで、ヴィクトル、ユリウス、フィンが揃って現れる。
軽く「おはよう」と言葉を交わすと、自然と足はルナフィエラの寝室へ向かった。
ベッドの上で眠る彼女は、まるで小さな子どものように無防備で、あどけない表情を浮かべている。
ヴィクトルがそっと額に手を置き、熱の有無を確かめた。
「……平熱ですね。疲れが出ているだけでしょう」
ユリウスも横から頷き、「なら、自然に目を覚ますのを待とう」と静かに言った。
フィンは足元に腰を下ろし、「こうして待ってるのも悪くないよね」と微笑み、シグも「……ああ」と短く返す。
4人はそれぞれの位置で、ただ静かにルナフィエラの眠りを見守った。
誰も声を荒げず、足音ひとつ立てない。
部屋には柔らかな陽光と、彼女の寝息だけが満ちていた。
そして――お昼前。
ルナフィエラがゆっくりとまぶたを開く。
視界に映ったのは、揃ってこちらを見つめる4人の姿。
「…ん…あれ……おはよう……?」
寝ぼけ混じりの声に、4人の表情がふっと緩んだ。
「……おはようございます、ルナ様」
ヴィクトルが優しく答える。
しかし、上体を起こそうとした瞬間――。
「……っ」
小さな声が漏れ、枕へと沈み込んだ。
体が鉛のように重い。
腰や脚はこわばり、動かそうとするたびに鈍い痛みがじんわり広がる。
「……ルナ様?」
すぐそばのヴィクトルが、心配そうに覗き込む。
「……ごめんなさい……起きられない……」
情けなさと申し訳なさが入り混じった声。
そんな彼女の言葉に、4人の表情が一瞬だけ固まった。
原因はわかりきっていた。
昨夜、自分たちが――大切にしながらも、確かに無理をさせたのだ。
「謝る必要なんてないよ」
ユリウスが柔らかく制し、そっとルナフィエラの頭を撫でる。
「これは僕たちの責任だ。今日は安静にしていよう」
「そうだよ、ルナが動けないのは僕らのせいなんだから」
フィンが少し苦笑しながらも、彼女の手を包み込み治癒魔法をかける。
シグは視線を外し、短く「……動かなくていい。全部任せろ」とだけ言ったが、その声音には罪悪感が滲んでいた。
ルナフィエラは、4人がそんなふうに思ってくれているとわかって、胸の奥が少しだけ温かくなった。
けれど、同時に――(……みんなに迷惑かけちゃった……)という小さな棘も残る。
「……ほんとに、ごめんね」
もう一度そう呟くと、ヴィクトルがそっと掛け布を直し、目を細めて言った。
「謝られることではありません。……今は、ただお休みください」
その言葉に、ルナフィエラは素直に頷き、再び枕へ頭を預けた。
4人の視線は、まるで守る壁のように彼女を囲んでいた。
その日、ルナフィエラは自力でベッドを出ることはなかった。
朝昼晩の食事はすべて寝室まで運ばれ、フィンやヴィクトルが自然にスプーンを差し出す。
「ほら、あーん」
いたずらっぽく笑うフィンは、口元を丁寧に拭ってくれる。
ヴィクトルは一口ごとに「おいしいですか」と優しく問いかけた。
退屈しないようにと、ユリウスは書庫から何冊も本を持ってきてくれた。
表紙から、彼が「これなら楽しめるはず」と選んだのがわかる。
シグは何も言わず隣に座り、ページをめくる音や窓の外の鳥の声を一緒に聞いてくれる。
窓辺に行きたい、少し体を伸ばしたい――そんな願いにも無言で片腕を差し出し、抱き上げてくれた。
そうして一日がゆっくりと過ぎていく中で、ルナフィエラはふと気づく。
自分が今、どれだけ大切にされているのか。
守られて、甘やかされて、そして心配されて――そのすべてが、心を温かく満たしていく。
(……幸せだな、私……)
そう胸の中で呟いた瞬間、全身が柔らかい布に包まれたような感覚になり、ルナフィエラは自然と微笑みを浮かべていた。
シグは夜明けとともに目を覚ました。
隣では、ルナフィエラがまだ深い眠りの中にいる。
穏やかな寝顔と、ゆったりとした呼吸。
昨夜までの甘く激しい時間の余韻が、ほんのりとその顔に残っていた。
(……まだ起こすわけにはいかねぇな)
そう心の中で呟き、シグはただ静かに彼女を抱き寄せたまま、目を閉じずにその温もりを感じ続けた。
やがて朝食の時刻になっても、彼女はまったく起きる気配を見せなかった。
シグが様子を見に廊下へ出たところで、ヴィクトル、ユリウス、フィンが揃って現れる。
軽く「おはよう」と言葉を交わすと、自然と足はルナフィエラの寝室へ向かった。
ベッドの上で眠る彼女は、まるで小さな子どものように無防備で、あどけない表情を浮かべている。
ヴィクトルがそっと額に手を置き、熱の有無を確かめた。
「……平熱ですね。疲れが出ているだけでしょう」
ユリウスも横から頷き、「なら、自然に目を覚ますのを待とう」と静かに言った。
フィンは足元に腰を下ろし、「こうして待ってるのも悪くないよね」と微笑み、シグも「……ああ」と短く返す。
4人はそれぞれの位置で、ただ静かにルナフィエラの眠りを見守った。
誰も声を荒げず、足音ひとつ立てない。
部屋には柔らかな陽光と、彼女の寝息だけが満ちていた。
そして――お昼前。
ルナフィエラがゆっくりとまぶたを開く。
視界に映ったのは、揃ってこちらを見つめる4人の姿。
「…ん…あれ……おはよう……?」
寝ぼけ混じりの声に、4人の表情がふっと緩んだ。
「……おはようございます、ルナ様」
ヴィクトルが優しく答える。
しかし、上体を起こそうとした瞬間――。
「……っ」
小さな声が漏れ、枕へと沈み込んだ。
体が鉛のように重い。
腰や脚はこわばり、動かそうとするたびに鈍い痛みがじんわり広がる。
「……ルナ様?」
すぐそばのヴィクトルが、心配そうに覗き込む。
「……ごめんなさい……起きられない……」
情けなさと申し訳なさが入り混じった声。
そんな彼女の言葉に、4人の表情が一瞬だけ固まった。
原因はわかりきっていた。
昨夜、自分たちが――大切にしながらも、確かに無理をさせたのだ。
「謝る必要なんてないよ」
ユリウスが柔らかく制し、そっとルナフィエラの頭を撫でる。
「これは僕たちの責任だ。今日は安静にしていよう」
「そうだよ、ルナが動けないのは僕らのせいなんだから」
フィンが少し苦笑しながらも、彼女の手を包み込み治癒魔法をかける。
シグは視線を外し、短く「……動かなくていい。全部任せろ」とだけ言ったが、その声音には罪悪感が滲んでいた。
ルナフィエラは、4人がそんなふうに思ってくれているとわかって、胸の奥が少しだけ温かくなった。
けれど、同時に――(……みんなに迷惑かけちゃった……)という小さな棘も残る。
「……ほんとに、ごめんね」
もう一度そう呟くと、ヴィクトルがそっと掛け布を直し、目を細めて言った。
「謝られることではありません。……今は、ただお休みください」
その言葉に、ルナフィエラは素直に頷き、再び枕へ頭を預けた。
4人の視線は、まるで守る壁のように彼女を囲んでいた。
その日、ルナフィエラは自力でベッドを出ることはなかった。
朝昼晩の食事はすべて寝室まで運ばれ、フィンやヴィクトルが自然にスプーンを差し出す。
「ほら、あーん」
いたずらっぽく笑うフィンは、口元を丁寧に拭ってくれる。
ヴィクトルは一口ごとに「おいしいですか」と優しく問いかけた。
退屈しないようにと、ユリウスは書庫から何冊も本を持ってきてくれた。
表紙から、彼が「これなら楽しめるはず」と選んだのがわかる。
シグは何も言わず隣に座り、ページをめくる音や窓の外の鳥の声を一緒に聞いてくれる。
窓辺に行きたい、少し体を伸ばしたい――そんな願いにも無言で片腕を差し出し、抱き上げてくれた。
そうして一日がゆっくりと過ぎていく中で、ルナフィエラはふと気づく。
自分が今、どれだけ大切にされているのか。
守られて、甘やかされて、そして心配されて――そのすべてが、心を温かく満たしていく。
(……幸せだな、私……)
そう胸の中で呟いた瞬間、全身が柔らかい布に包まれたような感覚になり、ルナフィエラは自然と微笑みを浮かべていた。
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