【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝

第114話・膝の上の囁き、旅の夜に

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宿に戻ると、ユリウスは迷いなくルナフィエラの手を取った。
軽やかに引き寄せられ、次の瞬間には彼の膝の上に座らされている。

「え……!?」

驚いて逃げようと身を捩るが、腰をしっかり抱き寄せられ、抜け出せない。
温かな体温と力強さに、胸の鼓動は急に速まっていった。

「ルナ、落ち着いて。……ここが一番安心だろう?」

耳元で囁く声は穏やかなのに、決して拒めない強さを帯びていた。

その時、ヴィクトルが膝を折り、彼女の前に座り込む。
琥珀色の瞳が彼女の足元をとらえた。

「……随分、ふくらはぎに疲れが溜まっているようですね。少し、失礼いたします」

返事を待つことなく、大きな手がそっと脚を包み込み、ゆっくりと揉み解していく。
じんわりとした心地よさが、重だるさを溶かすように広がって――

「……ん……っ」

抑えきれずに小さな声が漏れた。
途端に、耳元でユリウスの低い囁きが落ちる。

「……可愛い声が出てるよ、ルナ」

「っ……!」

顔が一気に真っ赤になる。

恥ずかしくて逃げ出そうとするも、腰はユリウスに掴まれ、脚はヴィクトルに解されて動けない。
結局ルナフィエラは両手で顔を隠し、膝の上でもじもじと悶えるしかなかった。

「……だめ……恥ずかしい……」

そんな呟きさえ甘やかすように、ユリウスは抱き寄せる腕の力を強めた。

「素直に感じていればいい。……君は、守られていればいいんだ」

しばらくマッサージが続くと、彼女の身体はすっかり緩み、頬も上気して、瞳がとろんと霞んでいった。
疲労感と心地よさ、そしてユリウスの体温に包まれて、抗う気力すら奪われていく。

「……ルナ、可愛いね」

囁いた次の瞬間、ユリウスの唇が深く重なる。
逃げ場をなくしたルナフィエラは戸惑いながらも受け入れ、息を奪われる。

「……んっ……」

唇が離れ、途切れた息を整える間もなく、今度はヴィクトルが顎を支え、熱を重ねた。
一度深く味わった後、さらに重ねられる口づけに、ルナフィエラの吐息は切なく震える。

「……っ……もう……」

甘い熱に翻弄され、声も途切れ途切れになっていく。

ふたりの唇が離れた頃には、ルナフィエラの呼吸はすっかり乱れ、肩で息をするばかりだった。

ユリウスはそんな彼女を抱き上げ、ベッドへと横たえる。
そのまま隣に入り、腕で優しく抱き寄せた。

「おやすみ、ルナ」

胸に頬を預けると、安心感が全身を包み込む。
こうして旅の初めての夜は、ユリウスの腕に抱かれながら、穏やかな眠りへと落ちていった。


翌日ー。
まだ太陽が昇りきらないうちに、一行は身支度を整えて宿を出た。
石畳の通りにはすでに屋台が並び始めており、湯気と香ばしい匂いが朝の空気に混じって漂っている。

「わぁ……」

ルナの瞳が自然と輝きを帯びる。

「ね、ね! ルナ、あっちに揚げパンの屋台があるよ!」

フィンが嬉しそうに彼女の手を引き、人混みの中を駆け出していく。

「フィン、急がせすぎるな」

後方からユリウスの落ち着いた声が響く。
だがフィンは聞き流し、笑顔でルナフィエラを振り返った。

「ほら、食べてみて!」

差し出された揚げたてのパンを小さくかじると、ほんのり甘くて思わず微笑む。

「おいしい……」

その笑顔に、フィンは胸を張り、得意げに笑った。

一方、ヴィクトルは手際よく買い物をまとめ、荷を整えている。

「ルナ様、日持ちする乾燥スープの素や酢漬けの野菜もございます。道中の携帯に最適かと」

そう差し出され、ルナは素直に頷く。

シグは人混みの後方で腕を組み、周囲を威圧するような眼差しを向けていた。
近づこうとした酔客や行商人が、その一瞥だけで道を譲る。

ユリウスは保存食や水袋、地図を確かめると、短く告げた。

「これで十分だ。昼食分も確保できた。……次は馬車乗り場へ向かおう」

「もう行くの?」

少し名残惜しそうにルナフィエラが問うと、ユリウスは柔らかく目を細める。

「旅はこれからが本番だからね」

ルナフィエラの胸はまた高鳴り、フィンに手引かれながら人混みを抜けていく。
その背を、ヴィクトルとシグが守り、ユリウスが全体を見渡して導いていく。

——こうして二日目の朝は、街の活気と甘やかなひとときに包まれて始まった。
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