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第八章:湯けむりに包まれて
第145話・紅の誓い、銀の夜に
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寝室の障子を開けた瞬間、ふわりとした木の香りと、ほんのり残る湯の匂いが鼻をくすぐった。
月明かりが障子越しに差し込み、柔らかな銀の光が布団の上に淡く落ちている。
ぬくもりの余韻を残す体を包むように、柔らかな寝間着が肌に沿う。
その布越しにも、まだ火照りが残っていて、胸の鼓動がわずかに早まった。
そんな彼女の手を、ユリウスがそっと取った。
「おいで、ルナ」
低く、柔らかい声。
呼ばれるがままに歩み寄ると、ユリウスは自然な仕草で彼女の腰に手を添え、自分の膝の上へと座らせた。
「あっ……」
一瞬の戸惑い。
けれど、それ以上に胸の奥があたたかくなる。
背中から伝わる彼の体温が、心の奥まで沁みていくようだった。
彼の長い指が、ルナフィエラの頬にかかる髪を耳にかけ、紅い瞳をのぞき込む。
「僕にこんな気持ちを教えてくれたのは、君が初めてだよ、ルナ」
囁くような声。
その言葉が胸に触れた瞬間、彼の顔が静かに近づいた。
唇が触れ合う刹那、ルナフィエラは小さく息を吸う。
そして、触れた瞬間、吸い込まれるように重なり合う――深く、柔らかく、そして長く。
「……っ」
二度、三度と重なるキスは、次第に深くなり、吐息と吐息が絡み合った。
熱に潤んだ視界の中、彼女の瞳はとろりと揺れている。
ようやく唇が離れると、ルナフィエラは小さく息をこぼした。
ユリウスはその額にそっと口づけを落とす。
「大好きだよ、ルナ。僕の時間が、君と重なったことが、何よりも――幸せだ」
その言葉に、胸の奥がふわりと温かく満たされる。
続いて立ち上がったのは、フィンだった。
「ずるいよ、ユリウスばっかり……」
むくれたような顔をしていたが、その瞳は真っすぐで、どこまでも優しかった。
「ルナ。僕、ちゃんと伝えるね」
フィンは彼女の前に膝をつき、両手で彼女の頬を包む。
「大好きだよ。ルナがいてくれて、ほんとうによかった」
彼女が言葉を返す前に、フィンの唇が触れた。
ふわりと甘く、けれど確かな熱を帯びた口づけ。
触れるだけでは終わらせないという、彼なりの想いが滲んでいた。
(――ん……)
愛しさが波のように押し寄せて、また一滴、胸の奥に幸せが積もる。
名残惜しそうに唇を離すと、フィンは鼻先をこつんと合わせて、囁いた。
「もっと君にふさわしい男になるから、ちゃんと見ててね」
ルナフィエラの頬が、ふわっと熱を帯びる。
その横で、静かに立ち上がったのは、シグだった。
無言で近づいてきた彼は、どこか照れくさそうな顔でルナフィエラを見下ろす。
けれど、言葉はなくても、その眼差しにすべてが込められていた。
彼女が小さく頷くと、シグはそっと手を伸ばし、彼女の腰を引き寄せた。
そのまま腕の中に抱き込み、ルナフィエラの頬に触れる。
その手は大きくて、怖いくらいに強いのに、今は驚くほど優しかった。
「……おまえが、笑ってるのを見るたびに……どうしようもなくなる」
それだけを言って、彼も深く、キスを落とした。
強く、深く。
彼女の唇から、息を奪うような深さで――。
「……ふ、っ……」
唇の端から、熱い吐息がこぼれる。
腕の中で小さく身を震わせたルナフィエラに、シグはもう一度だけ、今度は優しく唇を重ねた。
「……好きだ。命がある限り、おまえだけを守る」
唇が離れたとき、彼女は小さく震えながら、彼の胸に顔をうずめた。
「……シグ……」
その名前を呼ぶ声は、心の奥でほどけるように甘く響いた。
最後に、静かに歩み寄ってきたのはヴィクトルだった。
「……ルナ様」
その声には、恋と忠誠が溶け合った静かな熱があった。
彼女はゆっくりと顔を上げる。
彼は一歩近づくと、ルナフィエラの手を取り、そっとその指先に口づけた。
それから、まっすぐに瞳を見つめながら、頬へと手を添える。
静かに、深く――唇が重なった。
息が奪われるほどの深さ。
けれど、怖くも苦しくもない。
ただ、胸の奥が熱くて、
これ以上、何もいらないと、そう思った。
唇が離れると、ヴィクトルは彼女をそっと抱き寄せ、額を彼女の肩に預ける。
「……ルナ様。あなたは、私のすべてです」
その呟きに、彼女は静かに、微笑んだ。
その夜、ルナフィエラは――
彼らの想いを、ひとつ残らず、その胸に受け止めていた。
月明かりが障子越しに差し込み、柔らかな銀の光が布団の上に淡く落ちている。
ぬくもりの余韻を残す体を包むように、柔らかな寝間着が肌に沿う。
その布越しにも、まだ火照りが残っていて、胸の鼓動がわずかに早まった。
そんな彼女の手を、ユリウスがそっと取った。
「おいで、ルナ」
低く、柔らかい声。
呼ばれるがままに歩み寄ると、ユリウスは自然な仕草で彼女の腰に手を添え、自分の膝の上へと座らせた。
「あっ……」
一瞬の戸惑い。
けれど、それ以上に胸の奥があたたかくなる。
背中から伝わる彼の体温が、心の奥まで沁みていくようだった。
彼の長い指が、ルナフィエラの頬にかかる髪を耳にかけ、紅い瞳をのぞき込む。
「僕にこんな気持ちを教えてくれたのは、君が初めてだよ、ルナ」
囁くような声。
その言葉が胸に触れた瞬間、彼の顔が静かに近づいた。
唇が触れ合う刹那、ルナフィエラは小さく息を吸う。
そして、触れた瞬間、吸い込まれるように重なり合う――深く、柔らかく、そして長く。
「……っ」
二度、三度と重なるキスは、次第に深くなり、吐息と吐息が絡み合った。
熱に潤んだ視界の中、彼女の瞳はとろりと揺れている。
ようやく唇が離れると、ルナフィエラは小さく息をこぼした。
ユリウスはその額にそっと口づけを落とす。
「大好きだよ、ルナ。僕の時間が、君と重なったことが、何よりも――幸せだ」
その言葉に、胸の奥がふわりと温かく満たされる。
続いて立ち上がったのは、フィンだった。
「ずるいよ、ユリウスばっかり……」
むくれたような顔をしていたが、その瞳は真っすぐで、どこまでも優しかった。
「ルナ。僕、ちゃんと伝えるね」
フィンは彼女の前に膝をつき、両手で彼女の頬を包む。
「大好きだよ。ルナがいてくれて、ほんとうによかった」
彼女が言葉を返す前に、フィンの唇が触れた。
ふわりと甘く、けれど確かな熱を帯びた口づけ。
触れるだけでは終わらせないという、彼なりの想いが滲んでいた。
(――ん……)
愛しさが波のように押し寄せて、また一滴、胸の奥に幸せが積もる。
名残惜しそうに唇を離すと、フィンは鼻先をこつんと合わせて、囁いた。
「もっと君にふさわしい男になるから、ちゃんと見ててね」
ルナフィエラの頬が、ふわっと熱を帯びる。
その横で、静かに立ち上がったのは、シグだった。
無言で近づいてきた彼は、どこか照れくさそうな顔でルナフィエラを見下ろす。
けれど、言葉はなくても、その眼差しにすべてが込められていた。
彼女が小さく頷くと、シグはそっと手を伸ばし、彼女の腰を引き寄せた。
そのまま腕の中に抱き込み、ルナフィエラの頬に触れる。
その手は大きくて、怖いくらいに強いのに、今は驚くほど優しかった。
「……おまえが、笑ってるのを見るたびに……どうしようもなくなる」
それだけを言って、彼も深く、キスを落とした。
強く、深く。
彼女の唇から、息を奪うような深さで――。
「……ふ、っ……」
唇の端から、熱い吐息がこぼれる。
腕の中で小さく身を震わせたルナフィエラに、シグはもう一度だけ、今度は優しく唇を重ねた。
「……好きだ。命がある限り、おまえだけを守る」
唇が離れたとき、彼女は小さく震えながら、彼の胸に顔をうずめた。
「……シグ……」
その名前を呼ぶ声は、心の奥でほどけるように甘く響いた。
最後に、静かに歩み寄ってきたのはヴィクトルだった。
「……ルナ様」
その声には、恋と忠誠が溶け合った静かな熱があった。
彼女はゆっくりと顔を上げる。
彼は一歩近づくと、ルナフィエラの手を取り、そっとその指先に口づけた。
それから、まっすぐに瞳を見つめながら、頬へと手を添える。
静かに、深く――唇が重なった。
息が奪われるほどの深さ。
けれど、怖くも苦しくもない。
ただ、胸の奥が熱くて、
これ以上、何もいらないと、そう思った。
唇が離れると、ヴィクトルは彼女をそっと抱き寄せ、額を彼女の肩に預ける。
「……ルナ様。あなたは、私のすべてです」
その呟きに、彼女は静かに、微笑んだ。
その夜、ルナフィエラは――
彼らの想いを、ひとつ残らず、その胸に受け止めていた。
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