148 / 184
第八章:湯けむりに包まれて
第146話・君に刻む、永遠の印
しおりを挟む
「ルナ」
囁くような声が降りてきて、ユリウスの指先がそっと彼女の髪をかき上げる。
その仕草の柔らかさに、ルナフィエラは思わず身を任せた。
「……少しだけ、我慢して」
何が?と尋ねるより先に、
彼の唇が――首筋に、そっと触れた。
「……っ……」
ぴくんと肩が跳ねる。
くすぐったいような、甘い痺れが背筋を伝って走る。
そのまま押し当てられる唇。
時間がゆっくりと引き伸ばされて、熱が、刻み込まれていく。
そして、ふと離れたあと。
彼女の白い肌に、淡く紅を帯びた――確かな“痕”が残されていた。
「ユリウス……な、に……これ……」
「あげたかったんだ。“印”を。……僕のものだって、ちゃんと、君自身に刻んでおきたかった」
そう言って微笑むユリウスの表情は、とても優しい。
でもその奥に、確かな独占欲が滲んでいた。
そのときだった。
「……ずるいよ、ユリウス!」
不意に背後からフィンの声が上がり、
あっという間にルナフィエラの肩口へ腕を回してくる。
「ルナは、僕のだよね?」
「ふぇ……? ちょ、フィン……」
次の瞬間――
今度は鎖骨の上に、そっと唇が触れた。
「ひゃ……!」
熱を持った柔らかな感触。
押し当てられて、少しだけ吸い上げられる。
彼女の身体がびくんと跳ねた。
「はい、完成♪」
誇らしげに笑うフィンの隣から、シグが静かに歩み寄ってきた。
「……」
「え、ちょっと待っ――」
言いかけた彼女の声を、シグの大きな手がそっと後ろから支える。
そのまま、肩甲骨のあたり。
露出していた背中に――
「っ、ん……っ……!」
彼の唇が静かに触れた。
吸い上げられた感覚に、思わず息が詰まる。
最後にそっと唇が離れると、
そこにもまた、紅い“しるし”が残されていた。
「……ルナ様。失礼いたします」
静かに頭を下げたヴィクトルが、
彼女の左腕をとり、手首の内側に押し当てるように口づける。
「っ……!」
まるで忠誠を誓うかのようなキス。
それでも、最後はほんの一瞬、唇が名残惜しげに吸い上げる。
彼女の瞳が潤み、頬が一気に熱を帯びた。
「や、だ、なにこれ……っ、みんなして……!」
「可愛いものだね」「似合ってる」「悪くねえ」「とても、綺麗です」
4人が口々に言うその声が、どれも甘くて、優しくて。
けれど彼女は――
「……ぅぅ、恥ずかしい……!」
顔を覆って、もぞもぞと布団に潜ろうとする。
けれどその腕は、すぐに誰かに引き止められ、
「逃がさないよ?」という囁きが、どこからともなく聞こえてきた。
ルナフィエラの体には今――
4人からの“愛の刻印”が宿っている。
それは目に見える、確かな幸せの証。
胸の奥がくすぐったくて、息が詰まりそうなくらい、嬉しくて。
(……もう、知らない……)
その後も、4人からのキスが重なり、溶けていく。
肌に触れた唇の温もりが、静かに、でも確かに、胸の奥をとかしていった。
ルナフィエラは、そっと目を閉じる。
誰の手かはもう、わからない。
けれど、すべてが優しくて、心地よくて、
胸の奥から息がこぼれるような甘さだった。
(……キスだけなのに、どうして……)
触れられるたび、名前を呼ばれるたび、心が溶けていく。
誰かの手が頬を撫で、誰かの吐息が耳元をかすめる。
「ルナ……」
「……愛してる」
ささやきが肌に触れた瞬間、はぁ、と熱を含んだ吐息が漏れる。
自分の声があまりにも甘くて、驚く。
(こんなふうに求められるの、ずるい……)
指先が絡み、背に腕がまわる。
吐息に溶けた声が、耳の奥で震える。
髪を撫でられ、額にキスを落とされると、もう自分がどこにいるのかもわからない。
ただ、深く深く、甘さの中に沈んでいく。
「君のすべてが、愛おしい」
その一言で、心が震えた。
(私……今、こんなにも……)
愛されている。
全身で、心の奥で、骨の髄まで。
4人の想いが、指先や唇を通して流れ込んでくる。
(もう、なにも……こわくない……)
何度も名を呼ばれ、抱きしめられ、重なって──
幸福に満たされた意識が、ふっと糸が切れたように、光の中に溶けていった。
やがて、夜が深くなるころ。
ルナフィエラはヴィクトルの胸の中、宝物のように大切に抱きしめられながら眠りに落ちた。
そっと額に、最後のキスが落とされる。
「……おやすみなさい、ルナ様」
それは永遠を誓う、静かな祈りのようだった。
囁くような声が降りてきて、ユリウスの指先がそっと彼女の髪をかき上げる。
その仕草の柔らかさに、ルナフィエラは思わず身を任せた。
「……少しだけ、我慢して」
何が?と尋ねるより先に、
彼の唇が――首筋に、そっと触れた。
「……っ……」
ぴくんと肩が跳ねる。
くすぐったいような、甘い痺れが背筋を伝って走る。
そのまま押し当てられる唇。
時間がゆっくりと引き伸ばされて、熱が、刻み込まれていく。
そして、ふと離れたあと。
彼女の白い肌に、淡く紅を帯びた――確かな“痕”が残されていた。
「ユリウス……な、に……これ……」
「あげたかったんだ。“印”を。……僕のものだって、ちゃんと、君自身に刻んでおきたかった」
そう言って微笑むユリウスの表情は、とても優しい。
でもその奥に、確かな独占欲が滲んでいた。
そのときだった。
「……ずるいよ、ユリウス!」
不意に背後からフィンの声が上がり、
あっという間にルナフィエラの肩口へ腕を回してくる。
「ルナは、僕のだよね?」
「ふぇ……? ちょ、フィン……」
次の瞬間――
今度は鎖骨の上に、そっと唇が触れた。
「ひゃ……!」
熱を持った柔らかな感触。
押し当てられて、少しだけ吸い上げられる。
彼女の身体がびくんと跳ねた。
「はい、完成♪」
誇らしげに笑うフィンの隣から、シグが静かに歩み寄ってきた。
「……」
「え、ちょっと待っ――」
言いかけた彼女の声を、シグの大きな手がそっと後ろから支える。
そのまま、肩甲骨のあたり。
露出していた背中に――
「っ、ん……っ……!」
彼の唇が静かに触れた。
吸い上げられた感覚に、思わず息が詰まる。
最後にそっと唇が離れると、
そこにもまた、紅い“しるし”が残されていた。
「……ルナ様。失礼いたします」
静かに頭を下げたヴィクトルが、
彼女の左腕をとり、手首の内側に押し当てるように口づける。
「っ……!」
まるで忠誠を誓うかのようなキス。
それでも、最後はほんの一瞬、唇が名残惜しげに吸い上げる。
彼女の瞳が潤み、頬が一気に熱を帯びた。
「や、だ、なにこれ……っ、みんなして……!」
「可愛いものだね」「似合ってる」「悪くねえ」「とても、綺麗です」
4人が口々に言うその声が、どれも甘くて、優しくて。
けれど彼女は――
「……ぅぅ、恥ずかしい……!」
顔を覆って、もぞもぞと布団に潜ろうとする。
けれどその腕は、すぐに誰かに引き止められ、
「逃がさないよ?」という囁きが、どこからともなく聞こえてきた。
ルナフィエラの体には今――
4人からの“愛の刻印”が宿っている。
それは目に見える、確かな幸せの証。
胸の奥がくすぐったくて、息が詰まりそうなくらい、嬉しくて。
(……もう、知らない……)
その後も、4人からのキスが重なり、溶けていく。
肌に触れた唇の温もりが、静かに、でも確かに、胸の奥をとかしていった。
ルナフィエラは、そっと目を閉じる。
誰の手かはもう、わからない。
けれど、すべてが優しくて、心地よくて、
胸の奥から息がこぼれるような甘さだった。
(……キスだけなのに、どうして……)
触れられるたび、名前を呼ばれるたび、心が溶けていく。
誰かの手が頬を撫で、誰かの吐息が耳元をかすめる。
「ルナ……」
「……愛してる」
ささやきが肌に触れた瞬間、はぁ、と熱を含んだ吐息が漏れる。
自分の声があまりにも甘くて、驚く。
(こんなふうに求められるの、ずるい……)
指先が絡み、背に腕がまわる。
吐息に溶けた声が、耳の奥で震える。
髪を撫でられ、額にキスを落とされると、もう自分がどこにいるのかもわからない。
ただ、深く深く、甘さの中に沈んでいく。
「君のすべてが、愛おしい」
その一言で、心が震えた。
(私……今、こんなにも……)
愛されている。
全身で、心の奥で、骨の髄まで。
4人の想いが、指先や唇を通して流れ込んでくる。
(もう、なにも……こわくない……)
何度も名を呼ばれ、抱きしめられ、重なって──
幸福に満たされた意識が、ふっと糸が切れたように、光の中に溶けていった。
やがて、夜が深くなるころ。
ルナフィエラはヴィクトルの胸の中、宝物のように大切に抱きしめられながら眠りに落ちた。
そっと額に、最後のキスが落とされる。
「……おやすみなさい、ルナ様」
それは永遠を誓う、静かな祈りのようだった。
0
あなたにおすすめの小説
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…
宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。
いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。
しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。
だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。
不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。
差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、
彼女は“自分のための人生”を選び初める。
これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる