純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第三章:堕ちた月、騎士たちの誓約

第44話・ありがとう

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朝の光が差し込む中庭に、4人の騎士たちが集まっていた。
ルナフィエラも、少しだけふらつきながらも自力で歩き、彼らのもとへと向かう。

フィンが小さく手を振り、ユリウスはやんわりと笑みを浮かべ、シグは無言でルナフィエラの様子を見守り――
そしてヴィクトルは、一歩前に出て椅子を引いて彼女を迎えた。

「ルナ様、どうぞ」

「ありがとう、ヴィクトル」

ルナは椅子に腰かけ、深呼吸を一つしてから、4人に向かってゆっくりと顔を上げた。

「……あのね」

4人の視線が一斉に彼女に向く。

「今まで、毎晩……交代で、一緒にいてくれて……ありがとう。すごく……安心できたの」

その言葉に、ユリウスが目を細めて微笑んだ。

「それは何よりだね。ルナが心穏やかに過ごせることが、僕らにとっても嬉しいことだから」

「気にすんな。ああいうのはな、任せたもん勝ちだろ」

シグが軽く肩をすくめながらも、どこか優しさをにじませる。

フィンは小さく頷きながら言った。

「一緒に寝てくれたおかげで、僕も幸せだったよ。……ルナと一緒の時間、全部、大事だったから」

その一言に、ルナフィエラは少し目を伏せる。
そして最後にヴィクトルが静かに口を開いた。

「……これで終わりではありません。今日以降も、私はルナ様と毎晩共に過ごすつもりです」

「……え?」

「もちろん、私だけでなく――」

「僕も!」

フィンがすぐに声を上げた。

「当然、俺もだ」

「僕も同じ気持ちだよ」

ユリウスも続く。

ルナフィエラは驚いたように彼らを見渡し、すぐにぽつりと小さく笑った。

「……過保護だよ」

「そうかもしれません。でも……」

ヴィクトルがルナフィエラの隣に静かに腰を下ろす。

「貴女がもう二度と一人で泣かないように。私は、傍にいると決めました」

その言葉に、ルナフィエラの胸がじんと熱くなる。

夢遊病の恐怖、囚われの苦しみ、身体の痛み――
すべてがまだ癒えたわけではない。けれど、彼らの存在が、確かに支えになっている。

「……ありがとう。みんなのおかげで、私……怖くないって思えた」

風がそっと吹き抜ける。
桜のような花びらが舞い、ルナフィエラの髪を揺らした。

彼女の周囲には、誰よりも信頼できる4人の騎士たちがいる。
その温もりに包まれながら、ルナフィエラは小さく微笑んだ。
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