下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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記憶

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「あのさ、勝手には出来ないから聞くけど、邪魔にならない程度に手擦り付けようか?」

「でも、それは聞かないと……」

「だよな。入口にマットが敷いてあるんだよ。そこで、歩行器の汚れ取れると思うから、少し動かして落としてから入れよ?」

「分かった」

ついて行こうかとの申し出に大丈夫と言って、マットでキャスターを動かし汚れを落とす。

時間もまだ早かったので、帰ってきた時にみんなが用意してくれたソファに座る前にお茶を入れてテーブルにおいてから、テレビをつける。

21:00からの二時間ロードショーで、サスペンスなのか分からないが『初回拡大!小野寺雪乃の事件簿録』とのタイトルで始まるらしく、知った俳優の名前があったので、座って始まるのを待っていると、ひょこっと、花ちゃんとしーちゃん、小太郎が出てきたので、一緒に座って見る。

「ごめん、座っちゃったからお茶は出して入れてくれる?」

「はい!」

お代わりするだろうとそのままテーブルに出しておいて宣伝の後始まったのを見ていると、祖父母が戻ってきた。

「あ、寝るなら消すけど……」

「まだいいわよ?雪翔はなんでも見るのね」

「知ってる俳優さんの名前があったから。あちらにはテレビはないの?」

「こちらで言うと江戸くらいの街なの。だけど、何故か冷蔵庫はあるのよねぇ」

不思議でしょ?と言われ、氷を入れる初期の冷蔵庫を想像して、家にあるのと変わらないと言われて驚く。

「僕ね、色々と考えたんだ」

「何を?」

「思い出せないことは沢山あるんだけど、みんなに見えないしーちゃんとか見えるし、僕も人じゃないのかなって」

「何を言うておる?お前は人の子に間違いないぞ?」

「薄らとだけど、お祭りがあって……僕、何か作ってて、誰かが空高くに飛んでいく夢たくさん見たんだ。もしそんなことが出来るのなら、超能力者とか、そんなのかなって思っただけ」

「そう……」

「それにみんな、何か隠してるってずっと思ってたんだ。那智さんや秋彪さんに、玲さんと栞さん。それに、おじいちゃん達も……」

「話は明日にしよう。ちゃんと雪翔が知りたいことを話すと約束する。だから、このドラマとやらを見せてくれ」

「そんな簡単に!言い出したら聞かないんですからねぇ」

そう言って空いているスペースに布団を敷き出す。

ドラマを見た後は薬を飲むのを忘れていたと慌ててのみ、トイレだけ済ませて布団に入る。

いつもの様に本を少し読んでから電気を消して眠るが、明日の話は何だろうと気になって中々寝付けずにいた。
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