婚約者を借りパクされました

朝山みどり

文字の大きさ
3 / 23

03 気にしてない振り

しおりを挟む
わたしが、学院に行くと友人のメアリーとマリリンがやって来た。

「昨日は大変だったわね」

「見てた?」

「見てた。婚約者と久しぶりだったから、ごめん。見捨てた」とマリリンが手を合わせると

「彼が急いでいたから、早く帰ったの」とメアリーも手を合わせてきた。

「いいのよ。返って気を使わせてこっちこそ申し訳ないわ。今度、マイケルになにか買って貰って笑って終わり」とわたしは明るく答えた。

ほんの少し予感があるけど、そこまでひどいことは起きないと思う。

だってわたしだったら婚約者が留学している間はその苦労を思って身を慎むから、お姉さまも同じだと思ったから。


だけど、わたしの期待は期待に終わった。予想はしていたけど・・・

だからマイケルとお姉様は最近ずっと一緒だ。

一人が嫌なら女ともだちと過ごせばいいのだ。だけどお姉様は自分に正直だ。


当然のようにマイケルと過ごすのを選んだ。婚約者と離れて寂しい自分を気づかって妹の婚約者が奉仕してくれている。お姉様の筋書きだ。

お姉様の設定はこうだ。

妹の婚約者のマイケルは義姉を崇拝している。婚約したいと熱心に望んだが、かなわなかった。義姉はアレクサンダー様と婚約した。義姉の婚約者は留学して留守だ。だからマイケルは美しく繊細な義姉を守ろうとそばに侍っている。

マイケルは決して認めないが義姉を女として愛している。それを隠して未来の義弟としてそばに侍っている。誰が見てもマイケルの気持ちは丸分かりだが、自分クリスティーンはそれに気がつかない。ってことだ。


そしてそれは本当に便利だ。大抵のことを正当化する。なにか噂になっても義姉を守っているマイケル。妹の婚約者ですもの疚しいことなどないわ。二人はそう主張するだろう。

妹のレイチャル。つまり、このわたしが
「姉を一番守れるのはマイケルだから、そうお願いしましたのよ。そんな噂下らない」と言えば姉にもマイケルにも傷はつかない。両家の名誉も。

ただ、心がずたずたになったわたしがそこにいるだけだ。たった一人で。

確かに女性に対する気遣いならアレクサンダー様よりマイケルの方が上だと思う。だからお姉様はすごくいい気持ちだと思う。

アレクサンダー様は、見た目の王子様仕様とは違って学究肌の朴念仁だから。

結婚相手としては、宰相の嫡男だから最高。だから彼が留学を終えて帰って来たらお姉様はアレクサンダー様を貞淑な顔で出迎えるだろう。

お姉様にとってマイケルとわたしは、自分が好きに扱っていい相手だ。妹と、一度は自分の婚約者所有物にしようと思った相手だ。

自分が望むのだから従うのは当たり前だ。お姉様はそう思っているのだ。

もしわたしが抗議するとお母様はどう言うだろう。

「婚約者がそばにいない寂しい思いをしているクリスティーンに思いやりがないの?ひどい子ね」と言うだろう。

長く子供便利屋をやっていると予測がつくわね。

わたしは厄介事が起きないように明るく気にしてないと振舞えばいいのだ。

でも、二人が寄り添って食堂に向かうのを見たり、中庭で一緒にバスケットからサンドイッチを食べているのを見るのは辛かった。

わたしはマイケルのことが初対面から好きで、今は愛していると言えるくらいなのだ。

気にしてない振りをする為に中庭で、食事をしている二人に近寄り、話しかけた。

「マイケル。お姉様を好きになってはダメよ。お姉様は魅力的だから」

「わかってるよ。お姉様は僕なんかの手が届く人じゃないよ。今は義弟として守らせて貰ってるだけだよ」

「まぁ、マイケルったら」とお姉様は言った。そしてわたしに向かって

「でも、レイ。マイケルと最近話してないじゃない。マイケルが気の毒だわ」と言った。

その言葉を耳にした回りのベンチに座っている人たちが一斉にこちらに注目した。

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ・取り下げ予定】契約通りに脇役を演じていましたが

曽根原ツタ
恋愛
公爵令嬢ロゼは、優秀な妹の引き立て役だった。周囲は妹ばかりを優先し、ロゼは妹の命令に従わされて辛い日々を過ごしていた。 そんなとき、大公から縁談を持ちかけられる。妹の引き立て役から解放されたロゼは、幸せになっていく。一方の妹は、破滅の道をたどっていき……? 脇役だと思っていたら妹と立場が逆転する話。

これでもう、『恥ずかしくない』だろう?

月白ヤトヒコ
恋愛
俺には、婚約者がいた。 俺の家は傍系ではあるが、王族の流れを汲むもの。相手は、現王室の決めた家の娘だそうだ。一人娘だというのに、俺の家に嫁入りするという。 婚約者は一人娘なのに後継に選ばれない不出来な娘なのだと解釈した。そして、そんな不出来な娘を俺の婚約者にした王室に腹が立った。 顔を見る度に、なぜこんな女が俺の婚約者なんだ……と思いつつ、一応婚約者なのだからとそれなりの対応をしてやっていた。 学園に入学して、俺はそこで彼女と出逢った。つい最近、貴族に引き取られたばかりの元平民の令嬢。 婚約者とは全然違う無邪気な笑顔。気安い態度、優しい言葉。そんな彼女に好意を抱いたのは、俺だけではなかったようで……今は友人だが、いずれ俺の側近になる予定の二人も彼女に好意を抱いているらしい。そして、婚約者の義弟も。 ある日、婚約者が彼女に絡んで来たので少し言い合いになった。 「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」 婚約者の義弟の言葉に同意した。 「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」 それが、こんなことになるとは思わなかったんだ。俺達が、周囲からどう思われていたか…… それを思い知らされたとき、絶望した。 【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、 【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】の続編。元婚約者視点の話。 一応前の話を読んでなくても大丈夫……に、したつもりです。 設定はふわっと。

愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし

香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。  治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。  そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。  二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。  これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。  そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。 ※他サイトにも投稿しています

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。

しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。 全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。 しかも、王妃も父親も助けてはくれない。 だから、私は……。

貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~

キョウキョウ
恋愛
妹、幼馴染、同級生など数多くの令嬢たちと愛し合っているランベルト王子は、私の婚約者だった。 ある日、ランベルト王子から婚約者の立場をとある令嬢に譲ってくれとお願いされた。 その令嬢とは、新しく増えた愛人のことである。 婚約破棄の手続きを進めて、私はランベルト王子の婚約者ではなくなった。 婚約者じゃなくなったので、これからは他人として振る舞います。 だから今後も、私のことを愛人の1人として扱ったり、頼ったりするのは止めて下さい。

処理中です...