婚約者を借りパクされました

朝山みどり

文字の大きさ
7 / 23

07 留学生

しおりを挟む
そんなある日、帝国から留学生が来た。驚いた。帝国に学びに行くのはわかるが逆だ。

帝国が王国に学ぶ物ってある?

胡散臭さ一杯の留学生は、ぼさぼさの黒髪。それはくせ毛であっちこっち向いていて、長い前髪が目を隠しているさえない人だった。


そしてこともあろうに、わたし、レイチャルがお世話係をするように言われた。

生徒会役員がやればいいのでは?マイケルとかお姉様とか・・・いつも声高に役員を強調してるじゃないの!!

それなのに、わたしにお鉢が回って来た。

「どうしてわたしですか?生徒会役員がやるほうがいいと思いますが」とわたしは学院長に言った。
「忙しいそうだ」
「忙しい?なにをしていて忙しいのですか?」
「まぁそうだね。だが、もう決まったことで先方にも伝えたから、頼むよ」と押し切られてしまった。


なんだか、学院の注文漏れがあったとかで、留学生。デニス・サンダースは教科書も揃ってなかったし、制服もサイズが合ってない。

それで、授業中は隣りに座り、一緒に教科書を見た。宿題も教科書を一緒に見ながら図書室で一緒に解いた。

デニス様は勉強はよく出来た。わたしがひっかかるなと思った所をさりげなく説明してくれた。

デニス様はわたしに婚約者がいると聞いて、マイケルの所へ挨拶に行きたいと言い出した。
「これでも一応は男です。誰かが面白半分でおかしなことを言い出したら、レイチャル様の名誉、ご家門の名誉を損ないます。それで保険の意味でも挨拶をしておきたいと思います」
そこまで言うならとわたしたちはマイケルに会いに行った。

「マイケル・ダグラス侯爵ご令息でらっしゃいますね。わたくしは帝国から遊学して来たデニス・サンダース子爵です。レイチャル・ブラウンご令嬢にお世話になっております。学院からの紹介です。その一緒に行動することがありますので、誤解のないようにと思いまして挨拶に」
「そうなのか。ご丁寧に」とデニス様の挨拶にマイケルは割り込んだ。
「帝国でなにかあったのですか?」とそばにいた姉が言ったがなんとなく馬鹿にした言葉の響きだった。確かに胡散臭いが姉の態度は失礼だ」
「王国で調べたいものがありまして」とデニス様は丁寧に答えたが、二人はそれには反応せず

「じゃぁ、僕たちはこれで」と去って行った。

デニス様は
「なんだ?あれ?」と独り言を言っていた。まぁ言うよね。

「これでひとまずは安心だ。わたしのことはデニスと呼んで下さい」
こうして聞いていると、声も話し方も落ち着く感じだ。
わたしは
「はい、デニス様、よろしくおねがいします」と答えたが
「デニスでお願い」と返されてしまった。

デニスはさえない見た目の割に押しが強くて、いつのまにかわたしたちは
「デニス」「レイチャル」と呼び合い話し方もくだけたものになった。

お世話係として食堂も一緒に行った。正直、デニス様ってさえないから、二人で行動しても安心。安全。メアリーとマリリンは、そんなわたしに同情して食堂ではわたしとデニスと同じテーブルについてくれた。

二人とも好きだ。

そして意外なことにデニスは剣術が上手らしく。その縁で親しくなったとか言うウィルソン・デキンズとラルフ・ペレスの二人が加わり、食堂では六人!となった。

ある日、何故王国へ来たのか話してくれた。王国では教会などの古い記録をあまり保護していないから、それを保護するために来たそうだ。

だから、記録を回収に出かけることがあるが、もしかしたら授業を休む必要があるから、申し訳ない。
ただ、公休扱いになるから、安心して欲しい。と言われたが、そう言われてもありがとうとは言えない。

そして実際に、地方の領主や教会に残っている古い日記を回収するために一緒に出かけることが多くなった。


彼はもしかしてアレクサンダー様の研究者仲間だろうか?いや、余計なことは言うまいとわたしは、回収した日記の埃を払った。

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ・取り下げ予定】契約通りに脇役を演じていましたが

曽根原ツタ
恋愛
公爵令嬢ロゼは、優秀な妹の引き立て役だった。周囲は妹ばかりを優先し、ロゼは妹の命令に従わされて辛い日々を過ごしていた。 そんなとき、大公から縁談を持ちかけられる。妹の引き立て役から解放されたロゼは、幸せになっていく。一方の妹は、破滅の道をたどっていき……? 脇役だと思っていたら妹と立場が逆転する話。

これでもう、『恥ずかしくない』だろう?

月白ヤトヒコ
恋愛
俺には、婚約者がいた。 俺の家は傍系ではあるが、王族の流れを汲むもの。相手は、現王室の決めた家の娘だそうだ。一人娘だというのに、俺の家に嫁入りするという。 婚約者は一人娘なのに後継に選ばれない不出来な娘なのだと解釈した。そして、そんな不出来な娘を俺の婚約者にした王室に腹が立った。 顔を見る度に、なぜこんな女が俺の婚約者なんだ……と思いつつ、一応婚約者なのだからとそれなりの対応をしてやっていた。 学園に入学して、俺はそこで彼女と出逢った。つい最近、貴族に引き取られたばかりの元平民の令嬢。 婚約者とは全然違う無邪気な笑顔。気安い態度、優しい言葉。そんな彼女に好意を抱いたのは、俺だけではなかったようで……今は友人だが、いずれ俺の側近になる予定の二人も彼女に好意を抱いているらしい。そして、婚約者の義弟も。 ある日、婚約者が彼女に絡んで来たので少し言い合いになった。 「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」 婚約者の義弟の言葉に同意した。 「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」 それが、こんなことになるとは思わなかったんだ。俺達が、周囲からどう思われていたか…… それを思い知らされたとき、絶望した。 【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、 【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】の続編。元婚約者視点の話。 一応前の話を読んでなくても大丈夫……に、したつもりです。 設定はふわっと。

愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし

香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。  治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。  そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。  二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。  これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。  そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。 ※他サイトにも投稿しています

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。

しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。 全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。 しかも、王妃も父親も助けてはくれない。 だから、私は……。

貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~

キョウキョウ
恋愛
妹、幼馴染、同級生など数多くの令嬢たちと愛し合っているランベルト王子は、私の婚約者だった。 ある日、ランベルト王子から婚約者の立場をとある令嬢に譲ってくれとお願いされた。 その令嬢とは、新しく増えた愛人のことである。 婚約破棄の手続きを進めて、私はランベルト王子の婚約者ではなくなった。 婚約者じゃなくなったので、これからは他人として振る舞います。 だから今後も、私のことを愛人の1人として扱ったり、頼ったりするのは止めて下さい。

処理中です...