婚約者を借りパクされました

朝山みどり

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08 怒りの頂点

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そして、事件?が起こった。

剣術の時間の模擬戦でデニスが、マイケルに勝ったのだ。

もともと、デニスは剣が上手いと言われているが、マイケルに勝てるほど強いとは誰も思っていなかったようだ。それが模擬戦で人伝てに聞いただけでよく状況がわからないが、普段は攻撃されたらそれを受けて、受けての人らしい。よくわからないが・・・
それがいきなりバシっと剣を叩いたらしい。叩くってなに?と思っていたら剣で剣を叩いたらしい。そしたら、マイケルの剣が飛んで行ったとか?

そしたら、お昼を一緒に食べるウィルソン・デキンズ様とラルフ・ペレス様が
「おぉデニス。やったね」「なかなかだな」「それ、本気出じゃないだろ」と声をかけたとか・・・

なんか意味がわからないが、マイケルは強い。次の騎士団長だと期待されるほど強い。と聞いていたが、デニスは見た目に反してそれより強いってことかな?
剣で一番でなくてもマイケルは相変わらず人気者だし素敵だと思う。マイケルがお姉様のそばから離れてもとのようになってくれたら、わたしは少し拗ねながらも、マイケルを許してそばにいるのを喜ぶような気がする。だって、わたしが問題にしなければなにも起こらなかったことになるのよね。
わたしはマイケルは見掛け倒しと言う言葉に背を向けて、かび臭い古い書物や、教会の苔むした石碑を見に行ったりした。

お姉様だってアレクサンダー様が帰って来たらなにくわぬ顔をして
「お帰りなさいませ。待っておりました」と涙のひとつも零して笑顔を見せて甘えるだろう。
それで全ては元通り。わたしの傷も時間が治してくれるだろう。

その後、王都の片隅の教会で隠し部屋が見つかって、そこに古い書物がたくさん見つかったたしく、デニスが見たいと言うので学院を二日休んで調査に混ぜてもらった。

とても有意義で楽しかったし、同じ考えのお仲間がそれなりにいることがわかった。
年はあちらが全然、上だけど研究仲間はお友達だと名前で呼び合うようになった。
そしてそのうちのお一人が
「帝国の援助は有難いですが、我が国の現状に憂いを感じます。有難いのですよ。でもですね、悔しいのです」とデニスの手をとって話していて、他の人も頭を垂れていた。
注視してはいけないと思ったわたしは、日記をパラパラとめくった。

そしてまたマイケルが、模擬戦でデニスに負けたと聞いたが、マイケルの魅力は剣術だけじゃないからとマイケルを庇ったりした。だけどわたしは誰に対して庇っているの?
マイケル。愛していていいのよね。

さて、王城のバラが今年も咲き始めて、園遊会の開催が決まった。
貴族の子弟も年齢に関係なく出席出来る。

「レイチャル。クリスティーン様をエスコートする。それで、一緒にドレスを作りに行くけど、レイチャルのドレスもクリスティーン様が見繕ってくれる」とマイケルが廊下で会った時に言った。
クリスティーンも
「一緒にドレスを作るって楽しみ」と言うと二人は去って行った。

周りで聞いていた生徒たちは概ね、二人を支持しているようだ。
「ほんとにお似合いね」「キラキラした二人が並ぶとキラキラが増すわね」
そんな隠すつもりのない囁きが聞こえる。

まぁいいけどね。とわたしは教室へ入った。

そしてある週末、クリスティーンとマイケルは着飾って出かけた。

騎士団長の家の親睦会だと言うことだ。毎年わたしが一緒に行っていた行事だ。

「なぜ、お姉様ですか?婚約者はわたくしですよ。マイケル。ふざけていませんか?」
とわたしが抗議すると、マイケルは
「頼まれたからなぁ」と答えた。
「誰に頼まれたのですか?」
「アミスト侯爵令息だよ」
「それとこれは別だと思いますが」
「うるさい。うちの父上もクリスティーンが来ると喜ぶのだ」とマイケルがお姉様の肩を抱きながら言った。
「まだ、わからないんだ。上の姉さまのほうが喜ばれるのだよ」とバージルが得意そうに言った。
「意味がわかりません。マイケル。あなたのお父様も同じ様に思ってらっしゃるの?わたくしではなくお姉様の出席を望んでらっしゃるの?」
「当たり前だ」と言ったマイケルの表情はいたずらしている時のあの顔だ。

この馬鹿マイケルは、限度を超えた。切れていた堪忍袋が細切れになった。
「そうね、わかりました。バージルさすがね、よくわかっているわ。そうよね。もともとわたしは、マイケルとお姉様に近づいてはいけないことを思い出せてくれたわ。バージルはわたくしが婚約者のマイケルの家の大事な行事に行くよりお姉様のクリスティーンが行くほうが騎士団長であるダグラス侯爵閣下が喜ぶと教えてくれたわ。さすがバージル。こういうことは大事だから、いざという時はきちんと証言しなくてはいけないわよ。それが貴族の名誉を守ることだから。たしかにお姉様がマイケルと結婚した方が両家にとって最善ですものね。ね!バージル。ほら、お父様もお母様もバージルの賢さに驚いてらっしゃる」
「そうですよ。ほんとうに下のお姉様はだめですね」とバージルが胸を張った。

マイケルとお姉様は居心地が悪そうにわたしを見たが、少し間を置いて目を見交わすと出て行った。

わたしの怒りはこの時が頂点だったが、頂点というのは超えられると知った。


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