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レティシア・バーレント
19話 救出したい
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私は父と兄にリッケン侯爵の話をした。
ふたりも噂では聞いていたらしいが、今回のゲオルグの姿を見て、父はすでにリッケン侯爵家の内情を調べていたという。
よくよく考えればクーア家はこの国の暗部だ。フィーネが影を動かせば父の耳に入らないわけがない。まだまだ私も甘いな。
「今までも噂は聞いていたが、誰かがそれとなく注意すると侯爵は躾だから、他家の教育方針に口を出さないでほしいと一笑に付したと言う。しかし、まさかここまでとはな」
父は驚きを隠せない。
「夫人や令嬢もドレスで見えない場所に体罰をうけているようです。ゲオルグの姉は父親に殴られて、片方の耳が聞こえなくなったそうで、もう手駒にもならないと領地に送られて使用人のような生活をしていると聞きました」
兄が片方だけ口角を上げた。
「その令嬢はすでに保護済みだ」
「えっ? 保護ですか?」
「あぁ、リッケン侯爵家を調べているうちに、その令嬢のことを知ったんだ。確かに領地で下級使用人のような生活をしていた。すぐに保護し、今は妻付きの侍女をしている。耳はちゃんと医師に診せ、補助具があれば問題なく聞こえている。今は魔法医師に治療してもらっているので、そのうち補助具も要らなくなるだろう」
さすがお兄様、仕事が早い。
「ただ、母親や妹達のことを心配している。彼女は領地に捨てられたも同然だったのですぐに救い出せたが、屋敷の中に居る者に手は出せない」
「そうだな。リッケン侯爵は夫人や令嬢を外に出さないからな。茶会や夜会も王家主催のどうしても出なくてはならないもの以外は全く参加させないようだ。王家主催のものも挨拶を済ませたらすぐに帰させる。夫人は化粧で誤魔化していたが、顔色が悪く痩せ細っていた。毎年のように子を産ませているので身体に障りが出ているのであろう」
毎年のように子を産ます? 手駒を増やすためか?
「夫人だけに?」
「あぁ、噂では愛人は金がかかるし、産まれた子供も庶子扱いになるから、作らないと聞いた。その為に多産の家系の家門から夫人を娶ったらしいぞ」
酷い話だ。確かゲオルグは兄弟が多いとフランチェスカに聞いたような気がする。
夫人は子供を産む機械ではない! 怒りが込み上げてきた。
「それでは、王家がお茶会に招待すれば断ることはできませんね。私が主催で、夫人と令嬢達を呼んでお茶会をするのはどうでしょう。その道中で行方がわからなくなったということにして保護するのはいかがでしょうか?」
黙って話を聞いていた母が口を開いた。
「レティだけでは適当な理由で断られるかもしれません。私とエリーゼも主催に名を連ねましょう。そうね、レティの友人候補を選ぶとでも噂を流せば、あの強欲な侯爵のことです。食いついてくるのではないですか?」
「そうですわね。カリーナの母と妹達を助けたいです。カリーナはずっと虐げられて生きてきたので、とても良い子なのに自己肯定感が低い、自信の無い子になってしまっています。きっと夫人や妹達も同じようにあの侯爵に苦しめられているはずです。私も力になりたいですわ」
義姉は保護したゲオルグの姉のカリーナを侍女にしている。近くにいて彼女の苦しみを見ているので、いちばんリッケン侯爵家の女性達の様子を知っているのかもしれない。
急遽、私の友人を作るという名目で私達3人の開催でお茶会が開かれることになった。
リッケン侯爵家だけ呼ぶと不審に思われてはならないので、クーア侯爵家、シュタイン伯爵家やゾイゼ公爵家、義姉の実家、など王家に関係のある今の夫人や令嬢も呼んだ。これなら侯爵も断れないはずだ。
クーア家の令嬢は皆、養子で暗部の訓練を受けているようなので護衛にもなる。もちろんフィーネも参加してくれる。ラルフのシュタイン伯爵家は令嬢がいないので、夫人と兄嫁、兄の娘が参加してくれる。王妃宮の中庭で行うことになった。
「レティ、大丈夫よ。私は結構強いのよ。結婚前に体術を学んでいるの。それに女性ばかりのお茶会だもの。侯爵はついてこれないわ」
母はふんと鼻を鳴らし胸を張る。きっと母は父より気が強いと思う。友好国の王女だった母は誇り高く凛としていてカッコいいのだ。
「私も王太子妃教育で武術を学んでいますわ。クーア侯爵のお墨付きをいただいておりますのよ」
義姉はいたずらっ子のような顔で微笑む。
いやぁ、我が国の王太子妃教育は暗部から武術を習うのか。驚いたわ。となると隣国にお嫁入りした姉も強いのかもしれない。私の武術好きは、ゲイル時代の名残かと思っていたが、バーレントの血かもしれないな。
まぁ、お茶にはあちらこちらに影も配置されている。上手く、リッケン夫人や令嬢達を保護できるように頑張らねば。
私と母と義姉は顔を見合わせ、ニヤリと悪い笑顔を見せた。
さぁ、リッケン侯爵潰しの始まりだ。女を侮ると痛い目に遭うのよ。
リッケン侯爵、楽しみに待っていなさい。
ふたりも噂では聞いていたらしいが、今回のゲオルグの姿を見て、父はすでにリッケン侯爵家の内情を調べていたという。
よくよく考えればクーア家はこの国の暗部だ。フィーネが影を動かせば父の耳に入らないわけがない。まだまだ私も甘いな。
「今までも噂は聞いていたが、誰かがそれとなく注意すると侯爵は躾だから、他家の教育方針に口を出さないでほしいと一笑に付したと言う。しかし、まさかここまでとはな」
父は驚きを隠せない。
「夫人や令嬢もドレスで見えない場所に体罰をうけているようです。ゲオルグの姉は父親に殴られて、片方の耳が聞こえなくなったそうで、もう手駒にもならないと領地に送られて使用人のような生活をしていると聞きました」
兄が片方だけ口角を上げた。
「その令嬢はすでに保護済みだ」
「えっ? 保護ですか?」
「あぁ、リッケン侯爵家を調べているうちに、その令嬢のことを知ったんだ。確かに領地で下級使用人のような生活をしていた。すぐに保護し、今は妻付きの侍女をしている。耳はちゃんと医師に診せ、補助具があれば問題なく聞こえている。今は魔法医師に治療してもらっているので、そのうち補助具も要らなくなるだろう」
さすがお兄様、仕事が早い。
「ただ、母親や妹達のことを心配している。彼女は領地に捨てられたも同然だったのですぐに救い出せたが、屋敷の中に居る者に手は出せない」
「そうだな。リッケン侯爵は夫人や令嬢を外に出さないからな。茶会や夜会も王家主催のどうしても出なくてはならないもの以外は全く参加させないようだ。王家主催のものも挨拶を済ませたらすぐに帰させる。夫人は化粧で誤魔化していたが、顔色が悪く痩せ細っていた。毎年のように子を産ませているので身体に障りが出ているのであろう」
毎年のように子を産ます? 手駒を増やすためか?
「夫人だけに?」
「あぁ、噂では愛人は金がかかるし、産まれた子供も庶子扱いになるから、作らないと聞いた。その為に多産の家系の家門から夫人を娶ったらしいぞ」
酷い話だ。確かゲオルグは兄弟が多いとフランチェスカに聞いたような気がする。
夫人は子供を産む機械ではない! 怒りが込み上げてきた。
「それでは、王家がお茶会に招待すれば断ることはできませんね。私が主催で、夫人と令嬢達を呼んでお茶会をするのはどうでしょう。その道中で行方がわからなくなったということにして保護するのはいかがでしょうか?」
黙って話を聞いていた母が口を開いた。
「レティだけでは適当な理由で断られるかもしれません。私とエリーゼも主催に名を連ねましょう。そうね、レティの友人候補を選ぶとでも噂を流せば、あの強欲な侯爵のことです。食いついてくるのではないですか?」
「そうですわね。カリーナの母と妹達を助けたいです。カリーナはずっと虐げられて生きてきたので、とても良い子なのに自己肯定感が低い、自信の無い子になってしまっています。きっと夫人や妹達も同じようにあの侯爵に苦しめられているはずです。私も力になりたいですわ」
義姉は保護したゲオルグの姉のカリーナを侍女にしている。近くにいて彼女の苦しみを見ているので、いちばんリッケン侯爵家の女性達の様子を知っているのかもしれない。
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リッケン侯爵家だけ呼ぶと不審に思われてはならないので、クーア侯爵家、シュタイン伯爵家やゾイゼ公爵家、義姉の実家、など王家に関係のある今の夫人や令嬢も呼んだ。これなら侯爵も断れないはずだ。
クーア家の令嬢は皆、養子で暗部の訓練を受けているようなので護衛にもなる。もちろんフィーネも参加してくれる。ラルフのシュタイン伯爵家は令嬢がいないので、夫人と兄嫁、兄の娘が参加してくれる。王妃宮の中庭で行うことになった。
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義姉はいたずらっ子のような顔で微笑む。
いやぁ、我が国の王太子妃教育は暗部から武術を習うのか。驚いたわ。となると隣国にお嫁入りした姉も強いのかもしれない。私の武術好きは、ゲイル時代の名残かと思っていたが、バーレントの血かもしれないな。
まぁ、お茶にはあちらこちらに影も配置されている。上手く、リッケン夫人や令嬢達を保護できるように頑張らねば。
私と母と義姉は顔を見合わせ、ニヤリと悪い笑顔を見せた。
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リッケン侯爵、楽しみに待っていなさい。
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