溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

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 長い休みの間、アレンは毎日のようにエイルリスの前に現れた。
 時間を変えて図書室に行こうとしても、もう寮の前で待っている。見つからないよう裏口から出ても、エイルリスを見つけて笑顔で寄ってくる。
 なぜだ?なぜ、俺の行動がわかるんだ?天使や悪魔なら予知能力があるだろうが、アレンは人だ。もしかして超能力者なのか?
 毎日毎日付きまとわれて、エイルリスは、ついには非現実的なことまで考え始めた。

 アレンをエイルリスの部屋に入れた日から、ちょうど一週間後の朝、いつものように、アレンがポインセチア寮の前で待っていた。
 エイルリスは大きく息を吐き出し、素通りしようとする。
 しかし、そんな態度を取られてもアレンは気にしない。
 
「ルリス、おはよう!」
「…はよう」

 隣に並んでにこやかに挨拶をされ、エイルリスは聞こえるか聞こえないかくらいの声で、挨拶を返した。

「あれ?ルリス、元気ないね…。顔色がよくない。寝不足?」
「…そうだ。だから、今日の俺は機嫌が悪い」
「そうかぁ」

 アレンの足が止まった。
 でも、エイルリスは止まらずに、先に進む。
 今日はついて来ないのか?そうならせいせいする。ついて来ても、俺の機嫌が悪いから、気分が悪くなるだけだからな。
 久しぶりに一人で静かにゆっくりと読書をして勉強ができると思っていると、いつの間にか追いついてきたアレンに手を握られた。

「なぁ、ルリス」
「なに…」

 今日は諦めて、ブルースター寮の自室に戻るんじゃないのかよ。
 エイルリスは、握られた手を見てアレンを見る。
 アレンは微笑みながら「今日は俺の部屋に来てよ」と誘ってきた。
 エイルリスは、あからさまに面倒臭いという顔をする。
 エイルリスのそんな顔を見ても、アレンは全く気にする様子もなく、エイルリスの白く細い手を引いて、ブルースター寮がある方へと進む。

「おい、俺は行くと言ってない」
「だってさ、今日のルリスは、明らかに体調が悪そうだよ?だからゆっくりと過ごそう?」
「それなら、自室で一人で過ごす」
「寝不足ってことは、眠れない理由があるんじゃない?今、俺の部屋にはさ、気持ちが落ち着く、いい香りの紅茶があるんだ。それに美味しいクッキーも。それ食べて飲んで、何か悩みがあるなら俺に話してよ。誰かに話すだけでもスッキリするだろ?」
「はあ?悩みなんかねーよ」
「いいから行こう」

 抵抗しても強引に連れていかれるだろうから、無駄な抵抗はしない。疲れるだけだ。
 アレンは優しそうに見えて、強引な性格だと、エイルリスは知っている。だから、部屋には行ってやってもいいが、悩みを話すつもりはない。
 そもそも、悩みなんか無い。あるのは、ある悪魔に対する憎しみだけだ。もし俺が、そのことをアレンに話したとして、信じるのか?悪魔の存在は信じてるみたいだが、悪魔を殺したいという話を聞いて、協力してくれるのか?…まあ、引かれて離れてくれれば好都合だから、話してみてもいいかもしれないが。
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