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魔法を習う
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キャサリンは錬金術こそできるものの、魔法はまったくもって駄目だった。
魔物が出る世の中では魔法ができなければ命が危うくなる。
姉のセシリアは聖女だ。
聖女は聖女の学校に行き、聖女課程を修了しななければ聖女にはなれない。
キャサリンは聖女への道を進まずに、錬金術を習うことにしたのだ。
しかし、魔物の多い世の中。
キャサリンは魔法を使いたい、と思った。
魔物に出会えば、エドワードを盾にするしかなかった。
いくら貴族令嬢とはいい、何もかもエドワード任せにするわけにはいかない。
キャサリン自身も強くならなくてはいけないのだ。
キャサリンは街中に住む魔法使いのアリーナに魔法を教わる事にした。
アリーナは有名な魔法使いだった。
かつて、勇者たちと共に魔物退治にでかけた。
そして、多大なる貢献をしたという事で、国からも評価されている。
晩冬の晴れた空の下。
キャサリンはアリーナの元を訪ねた。
「キャサリン・アメリア・フレミングと申します。魔法を習いに来ました」
「キャサリン様。お待ちしていました。全てはフレミング公爵から話を伺っています。どうぞ中へ」
白い布を頭からすっぽりかぶった女性が言った。
見たからに、いかにも魔法使いだ。
「私は錬金術こそはできるものの、魔法はからっきしダメです。でも、外は魔物でいっぱいです。私は魔法を習いたいのです」
「大丈夫ですよ。魔物なんかちょちょいのちょいですからね」
外見からは想像のできない、陽気なキャラクターのようだ。
「魔法の習得って難しいですか?」
「いや、錬金術ができれば簡単なのであります」
「そうなんですか」
「はーい。そうでーす」
キャサリンは目の前の人物が随分と胡散臭い人物のようにも思えてならなかった。
「魔物を倒すためには風、炎、水、土、雷と5つの属性の魔法。つまり、『エレメント魔法』と呼ばれる魔法と光と闇、そして無属性の魔法と計8種類の魔法があります。他にも私は専門外ですが、召喚魔法という伝説の生き物を呼び出す魔法もあるんですよ」
「色々あるんですね」
「で、キャサリン様は何を覚えたいのですか?」
「私は……何が良いかな?」
「そうそう。魔法を覚えるには魔導書が必要なんです」
「魔導……書!?」
「はーい。魔導書です。魔導書を読むと魔法が習得できる仕組みです」
「なるほど……」
「キャサリン様は学園時代に魔法を取らなかったようですが、なぜ魔法をとらなかったのですか?」
「それは……その当時はまだ魔物もそんなに活発化していませんでしたし……平和ボケしていましたわ」
実際にそうだった。
何かあれば護衛が護ってくれるからだった。
だから、魔法を選ばずに錬金術を選んだのだ。
「錬金術ができれば基礎は同じですわ。錬金術も書物を読みますよね?」
「あ……はい」
アリーナは魔導書と思しい書物を数冊持ってきた。
「この魔導書は炎系の魔法『ファイア』ですわ」
ファイア。ファイア、ファイアー、ファイエストだったっけ?
キャサリンは何となく知っていた。
「ファイア、ファイアー、ファイエストとなるんだ」
当たっていた。
そして、風がウインド、ウインダー、ウィンデスト。
雷がサンダー、サンダーアー、サンデスト。
土がガイア、ガイアー、ガイエスト。
水がウォーター、ウォーターラー、ウォーテスト。
だった気がする……。
「キャサリン様。とりあえずこの魔導書を読んでみて下さい」
アリーナはキャサリンに魔導書を手渡した。
キャサリンは魔導書を手に取り、読んだ。
なんだか力が漲ってくる……。
体中が熱くなってくる。
何だか手先から炎が出そうな感じがする。
「さあ、キャサリン様。炎を出してみて下さい」
キャサリンは思い切り『ファイア』と叫んだ。
すると、右手の手先から炎が迸る。
やった!
キャサリンはガッツポーズになった。
「ファイアがうまくいったから、次はファイアーにいってみましょうか」
「はい」
キャサリンはファイアーを唱えた。
炎の威力が先程と変わらない。
「あー。失敗ですね。ファイアーができなければファイエストは唱えられませんね。まだまだ経験値が足りません」
経験値……。
魔物を倒すと得られるもの……と聞いたことがある。
「魔物を倒さないとダメなんですか?」
「はい。そうです」
そん……な。
魔物を倒すなど聞いていなかった。
「ファイアが唱えられれば次は『ウィンド』にいきましょうか」
「はい」
「でも、今日のレッスンはここまでにしましょう」
「ありがとうございました」
キャサリンが立ち上がろうとした時、アリーナが制した。
「まあ、お茶でも召し上がっていってくださいませ~」
「あ、はい。お言葉に甘えて」
アリーナは踵を返した。
しばらくして、アリーナがティカップを2つ持ってやってきた。
「いや~、キャサリン様、素敵ですわ。私はキャサリン様を好きになってしまいそうですわ」
好きになる!?
でも、アリーナは女でしょう?
キャサリンは思わず笑ってしまった。
「いえいえ。私は……」
「キャサリン様。どうぞ」
アリーナはカップを差し出した。
カップに鼻を近づけ臭いを嗅いでみる。
ほのかに香るミントの匂い。
「いただきます」
「どうぞ、召し上がってくださいませ」
キャサリンはハーブティーが大好き。
何だかこれから魔法習得が楽しみになる。
魔物が出る世の中では魔法ができなければ命が危うくなる。
姉のセシリアは聖女だ。
聖女は聖女の学校に行き、聖女課程を修了しななければ聖女にはなれない。
キャサリンは聖女への道を進まずに、錬金術を習うことにしたのだ。
しかし、魔物の多い世の中。
キャサリンは魔法を使いたい、と思った。
魔物に出会えば、エドワードを盾にするしかなかった。
いくら貴族令嬢とはいい、何もかもエドワード任せにするわけにはいかない。
キャサリン自身も強くならなくてはいけないのだ。
キャサリンは街中に住む魔法使いのアリーナに魔法を教わる事にした。
アリーナは有名な魔法使いだった。
かつて、勇者たちと共に魔物退治にでかけた。
そして、多大なる貢献をしたという事で、国からも評価されている。
晩冬の晴れた空の下。
キャサリンはアリーナの元を訪ねた。
「キャサリン・アメリア・フレミングと申します。魔法を習いに来ました」
「キャサリン様。お待ちしていました。全てはフレミング公爵から話を伺っています。どうぞ中へ」
白い布を頭からすっぽりかぶった女性が言った。
見たからに、いかにも魔法使いだ。
「私は錬金術こそはできるものの、魔法はからっきしダメです。でも、外は魔物でいっぱいです。私は魔法を習いたいのです」
「大丈夫ですよ。魔物なんかちょちょいのちょいですからね」
外見からは想像のできない、陽気なキャラクターのようだ。
「魔法の習得って難しいですか?」
「いや、錬金術ができれば簡単なのであります」
「そうなんですか」
「はーい。そうでーす」
キャサリンは目の前の人物が随分と胡散臭い人物のようにも思えてならなかった。
「魔物を倒すためには風、炎、水、土、雷と5つの属性の魔法。つまり、『エレメント魔法』と呼ばれる魔法と光と闇、そして無属性の魔法と計8種類の魔法があります。他にも私は専門外ですが、召喚魔法という伝説の生き物を呼び出す魔法もあるんですよ」
「色々あるんですね」
「で、キャサリン様は何を覚えたいのですか?」
「私は……何が良いかな?」
「そうそう。魔法を覚えるには魔導書が必要なんです」
「魔導……書!?」
「はーい。魔導書です。魔導書を読むと魔法が習得できる仕組みです」
「なるほど……」
「キャサリン様は学園時代に魔法を取らなかったようですが、なぜ魔法をとらなかったのですか?」
「それは……その当時はまだ魔物もそんなに活発化していませんでしたし……平和ボケしていましたわ」
実際にそうだった。
何かあれば護衛が護ってくれるからだった。
だから、魔法を選ばずに錬金術を選んだのだ。
「錬金術ができれば基礎は同じですわ。錬金術も書物を読みますよね?」
「あ……はい」
アリーナは魔導書と思しい書物を数冊持ってきた。
「この魔導書は炎系の魔法『ファイア』ですわ」
ファイア。ファイア、ファイアー、ファイエストだったっけ?
キャサリンは何となく知っていた。
「ファイア、ファイアー、ファイエストとなるんだ」
当たっていた。
そして、風がウインド、ウインダー、ウィンデスト。
雷がサンダー、サンダーアー、サンデスト。
土がガイア、ガイアー、ガイエスト。
水がウォーター、ウォーターラー、ウォーテスト。
だった気がする……。
「キャサリン様。とりあえずこの魔導書を読んでみて下さい」
アリーナはキャサリンに魔導書を手渡した。
キャサリンは魔導書を手に取り、読んだ。
なんだか力が漲ってくる……。
体中が熱くなってくる。
何だか手先から炎が出そうな感じがする。
「さあ、キャサリン様。炎を出してみて下さい」
キャサリンは思い切り『ファイア』と叫んだ。
すると、右手の手先から炎が迸る。
やった!
キャサリンはガッツポーズになった。
「ファイアがうまくいったから、次はファイアーにいってみましょうか」
「はい」
キャサリンはファイアーを唱えた。
炎の威力が先程と変わらない。
「あー。失敗ですね。ファイアーができなければファイエストは唱えられませんね。まだまだ経験値が足りません」
経験値……。
魔物を倒すと得られるもの……と聞いたことがある。
「魔物を倒さないとダメなんですか?」
「はい。そうです」
そん……な。
魔物を倒すなど聞いていなかった。
「ファイアが唱えられれば次は『ウィンド』にいきましょうか」
「はい」
「でも、今日のレッスンはここまでにしましょう」
「ありがとうございました」
キャサリンが立ち上がろうとした時、アリーナが制した。
「まあ、お茶でも召し上がっていってくださいませ~」
「あ、はい。お言葉に甘えて」
アリーナは踵を返した。
しばらくして、アリーナがティカップを2つ持ってやってきた。
「いや~、キャサリン様、素敵ですわ。私はキャサリン様を好きになってしまいそうですわ」
好きになる!?
でも、アリーナは女でしょう?
キャサリンは思わず笑ってしまった。
「いえいえ。私は……」
「キャサリン様。どうぞ」
アリーナはカップを差し出した。
カップに鼻を近づけ臭いを嗅いでみる。
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