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当の、聖女の婚約者となる王子であった。
この国のただ一人の王子である彼は、常に綺麗な女性を侍らせていた。閨教育という名の下に、浮名を流し色事に嵌った。
白い結婚をする予定の彼は側室を持って血筋を残すことになると確定していた為、婚約者がいるといっても、その相手に配慮する必要を感じなかった。
この国で側室に迎えいれられるのは一度婚姻を結び、出産経験のある貴族の女性のみ。血を繋ぐ為の側室という制度だ。石女では困る。
正室にそれを望めないならば、婚姻前からでも子ができてもいいではないかと、好き放題に未亡人や名誉が欲しい貴族家から差し出された夫人という美しい徒花の間を飛び回り遊び惚けていた彼は、けれどもついに一人の女性に掴まってしまった。
この国の有力侯爵家の二女から、「あなたの、唯一人の妻になりたかった」と泣きつかれたのだった。
その上で、「辺境へ嫁入りする話が出たのです。……唯一にもなれないどころか、あなた様のお傍に居続けることもできなくなった」と続けられた言葉は「だから、最初で最後の、思い出をください」と嫁入り前の身でありながら、彼女の全てを差し出したのだ。
散々遊び惚けておきながら、当然のことながら王子は、純潔を捧げられたことがなかった。当然である。血を貴ぶからこそ、嫁はせめて初夜までは純潔であることを守り切らねばならない。嫁いだ家の血を繋ぐ子を産み、義務を果たしてからならば秘密の恋人を持つことも許された。だが、嫁いでくる前に他家の男の血を受け入れた事があるなど許されることではない。
けれどもその令嬢は、その大切な純潔を王子に捧げて、はらはらと涙を流しながら「うれしい」などと微笑んでみせたのだ。
初めての女性がどのようなものなのかを知らない王子はひとたまりもなかった。
王子の中にあった基準は、美しくとも子を持つ女性たちのみ。若く美しい令嬢との情交自体が初めてだった。
自分だけを知る自分だけが知っている身体にのめり込んだ。
一度だけだった筈の行為が、手放せないと思うほど回数を重ね、思いを募らせていく。
そしてその若く美しい令嬢は毒花だった。それも猛毒を持っていた。
当の、聖女の婚約者となる王子であった。
この国のただ一人の王子である彼は、常に綺麗な女性を侍らせていた。閨教育という名の下に、浮名を流し色事に嵌った。
白い結婚をする予定の彼は側室を持って血筋を残すことになると確定していた為、婚約者がいるといっても、その相手に配慮する必要を感じなかった。
この国で側室に迎えいれられるのは一度婚姻を結び、出産経験のある貴族の女性のみ。血を繋ぐ為の側室という制度だ。石女では困る。
正室にそれを望めないならば、婚姻前からでも子ができてもいいではないかと、好き放題に未亡人や名誉が欲しい貴族家から差し出された夫人という美しい徒花の間を飛び回り遊び惚けていた彼は、けれどもついに一人の女性に掴まってしまった。
この国の有力侯爵家の二女から、「あなたの、唯一人の妻になりたかった」と泣きつかれたのだった。
その上で、「辺境へ嫁入りする話が出たのです。……唯一にもなれないどころか、あなた様のお傍に居続けることもできなくなった」と続けられた言葉は「だから、最初で最後の、思い出をください」と嫁入り前の身でありながら、彼女の全てを差し出したのだ。
散々遊び惚けておきながら、当然のことながら王子は、純潔を捧げられたことがなかった。当然である。血を貴ぶからこそ、嫁はせめて初夜までは純潔であることを守り切らねばならない。嫁いだ家の血を繋ぐ子を産み、義務を果たしてからならば秘密の恋人を持つことも許された。だが、嫁いでくる前に他家の男の血を受け入れた事があるなど許されることではない。
けれどもその令嬢は、その大切な純潔を王子に捧げて、はらはらと涙を流しながら「うれしい」などと微笑んでみせたのだ。
初めての女性がどのようなものなのかを知らない王子はひとたまりもなかった。
王子の中にあった基準は、美しくとも子を持つ女性たちのみ。若く美しい令嬢との情交自体が初めてだった。
自分だけを知る自分だけが知っている身体にのめり込んだ。
一度だけだった筈の行為が、手放せないと思うほど回数を重ね、思いを募らせていく。
そしてその若く美しい令嬢は毒花だった。それも猛毒を持っていた。
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