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最初こそ、王命による婚約を破棄することに躊躇し、「お前を側室に迎え入れられるようにする。絶対だ」と宥めていた王子であったが、侯爵家の意向を汲んだ者たちから「この平和な国に聖女の祈りなど必要なのか」「むしろ聖女という職が、形だけなのではないか」「誰がやっても同じかもしれませんな」と吹き込まれ続け、彼女に「貴方様を私だけのものにしたい」と縋られる内に、心が揺れてくる。
何よりも、美しい聖女には触れることすら許されないというのも、色を知ってしまった王子には我慢がならなかったのだろう。妻という形をくれてやることに腹が据えかねるようになった王子は、ついに暴挙に出る。
婚約者であった聖女を、聖女の守り石を盗んだ盗人であり偽物だと発表したのだ。
勿論、石を盗んだのは赤児であった聖女自身ではない。両親が企んだものだとしたのだ。そうして生家である伯爵家を断絶、一族郎党を捕まえ、死罪に処するとした。
聖女については、彼女自身が始めた嘘ではなかったとはいえ、それを知りながらも王家と国へ罪を告白することなく偽物の聖女を演じ続け地位と名誉を甘受したと告発し、同罪であると断じた。
侯爵家から金を積まれて取り込まれた教会の司祭たち一同も「まさか聖女を騙るとは」と恐れ戦くと共に、「王宮の告発を受けて調査したところ、枢機卿も聖女が偽物だと知っていた」のだと告発を始めた。
勿論これは一人だけ聖女が偽物だという告発に異を唱えた枢機卿を追い払い、次席に甘んじていた一派による茶番だ。
だが、民衆はそれを信じた。
偽物の聖女とそれと通じて騙していた枢機卿の処刑を求める声が大きくなったが、なにより本当の聖女であった侯爵家の美しい令嬢が「命を奪うことをしてはいけません。彼等には死ぬまで一生、その罪を神へと償う義務があります」と赦しを与えたというのだ。
彼等は国の北にある、罪人の塔といわれる場所へ幽閉された。聖女もだ。
改まって処刑はされないが、そこに投獄された罪人たちは皆、病死していく。そういう所だ。
情け深い聖女の言葉に感動した民衆はそれを受け入れたが、中には納得し切れていない者も多かったのだろう。
一同が塔へと輸送されていく隊列には、腐った卵や石礫が投げつけられ、御者役を引き受けた役人たちがカンカンになって怒っていた。
それは、王都を出て他の街に立ち寄っても同じ行為は繰り替えされたので、罪人たちは命を惜しんだのか誰もその馬車から降りてこようとはしなかったという。
そして聖女の生家である空き家となっていた伯爵家の邸宅には毎日のように石が投げ込まれ、中に残されていた数々の美術品や調度類は盗まれ荒らされて無残な姿になっていたという。
最初こそ、王命による婚約を破棄することに躊躇し、「お前を側室に迎え入れられるようにする。絶対だ」と宥めていた王子であったが、侯爵家の意向を汲んだ者たちから「この平和な国に聖女の祈りなど必要なのか」「むしろ聖女という職が、形だけなのではないか」「誰がやっても同じかもしれませんな」と吹き込まれ続け、彼女に「貴方様を私だけのものにしたい」と縋られる内に、心が揺れてくる。
何よりも、美しい聖女には触れることすら許されないというのも、色を知ってしまった王子には我慢がならなかったのだろう。妻という形をくれてやることに腹が据えかねるようになった王子は、ついに暴挙に出る。
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勿論、石を盗んだのは赤児であった聖女自身ではない。両親が企んだものだとしたのだ。そうして生家である伯爵家を断絶、一族郎党を捕まえ、死罪に処するとした。
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勿論これは一人だけ聖女が偽物だという告発に異を唱えた枢機卿を追い払い、次席に甘んじていた一派による茶番だ。
だが、民衆はそれを信じた。
偽物の聖女とそれと通じて騙していた枢機卿の処刑を求める声が大きくなったが、なにより本当の聖女であった侯爵家の美しい令嬢が「命を奪うことをしてはいけません。彼等には死ぬまで一生、その罪を神へと償う義務があります」と赦しを与えたというのだ。
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改まって処刑はされないが、そこに投獄された罪人たちは皆、病死していく。そういう所だ。
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それは、王都を出て他の街に立ち寄っても同じ行為は繰り替えされたので、罪人たちは命を惜しんだのか誰もその馬車から降りてこようとはしなかったという。
そして聖女の生家である空き家となっていた伯爵家の邸宅には毎日のように石が投げ込まれ、中に残されていた数々の美術品や調度類は盗まれ荒らされて無残な姿になっていたという。
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