奥様は聖女♡

喜楽直人

文字の大きさ
6 / 24

6.

しおりを挟む



 この国には、かつて聖女といわれる特別な存在がいた。

 この世界で子供は皆、守り石と呼ばれる小さな石を握って生まれてきていた。
 石の色はさまざまでけれども、その色によって就くべき仕事の種類は決まっていた。持って生まれてくる石の種類に、性格や得意な事がある程度左右されるのか、それとも性格や頭の出来によって神より渡される石の種類が変わるのかまでは分からない。だが、その石の導くまま人生を決めれば、まず人生で躓くことはないと言われている。

 そんな守り石には一つだけ特別なモノがある。
 限りなく透明で大きなそれを持って生まれし者、それが聖女だ。

 世界に聖女は一人だけ。その聖女の命が天へと還っていったその日の夜に、新しい聖女が聖女の守り石を持って生まれてくる。
 そうして聖女の守り石を持って生まれた者は、教会へと身を寄せ、そこで神へと平和を祈りその一生を捧げて過ごす。
 この国の建国時から続けられている決まり事だ。

 だが、これまでずっと守られていたそれを、この国の最後の王は破ってしまった。

 王族の権威を強める為に、聖女と同じ年に生まれた王子と婚約させたのだ。
 教会もそれを受け入れた。聖女の生家と六人いる枢機卿の内のたった一人だけがそれに異を唱えたが、生家は伯爵家という低いという程ではないが高位という程の家格でもなかったし、たった一人の年老いた枢機卿が声を張り上げようとも、王家と教会の大多数、双方からの強い申し出に押し切られてしまったのだ。

 勿論、婚約し成人したのちには婚姻を結ぶことになったとしても、あくまで白い結婚となる。
 処女性が求められる聖女に子供を産ませることについて、さすがに教会も二の足を踏んだのだ。王家としては権威づけに使いたかっただけなので名目だけの婚姻で構わなかった。

 だが、ここで一人、それに不満を溜め込んだ者がいた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精のお気に入り

豆狸
ファンタジー
羽音が聞こえる。無数の羽音が。 楽しげな囀(さえず)りも。 ※略奪女がバッドエンドを迎えます。自業自得ですが理不尽な要素もあります。

【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです

山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。 今は、その考えも消えつつある。 けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。 今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。 ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

野生なら許される ――だけど人間は違う

ファンタジー
自宅へ帰ると、妻から「子どもができた」と知らされる。 それに夫は……。 ※複数のサイトに投稿しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
幼い頃から天の声が聞こえるシラク公爵の娘であるミレーヌ。 この天の声にはいろいろと助けられていた。父親の命を救ってくれたのもこの天の声。 そして、進学に向けて騎士科か魔導科を選択しなければならなくなったとき、助言をしてくれたのも天の声。 ミレーヌはこの天の声に従い、騎士科を選ぶことにした。 なぜなら、魔導科を選ぶと、皇子の婚約者という立派な役割がもれなくついてきてしまうからだ。 ※完結しました。新年早々、クスっとしていただけたら幸いです。軽くお読みください。

処理中です...