悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

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43.死を回避する方法

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「その小説の中でヒューゴ様、貴方は

亡くなってしまうんです」
「は…俺が?」
さっきよりも顔色を悪くなった、
当たり前だ、今いる世界は別の世界で小説でした、と言われたと思ったら今度はその小説の中で貴方は死にますと来た。

(こんな事言いたくなんてなかったけれど情報が少ない以上本人に協力してもらうのが1番よね…)

「実はその事を思い出したのが今日で…もっと早く思い出せていればもっと何かできたはずなのに…」
恐らく小説内でヒューゴ様が亡くなった時間軸はラスボス撃破前、だがこの世界での事実上のラスボスであるアイザック・ガンダー公爵はもう倒されて捕まっている。


つまり本当ならもっと後に退場するはずだった存在がもう表舞台に出てくる事はないという事だ。


(こうなってしまうとヒューゴ様が亡くなってしまう時期が完全に分からなくなってしまったわ)
どんな反応をされても私は彼を助けたい
ただ生きてほしい。

口を閉じヒューゴ様の反応を待つ。

「そう、なのか」
彼の震える声が部屋に響いた。
どんな事を言われても受け止める覚悟はしている。


「衝撃が大き過ぎて何と言っていいのか分からないんだが、まずは君に対して言わせてほしい。

言ってくれて嬉しいよ」
「…う、えっ?」
思っていた言葉とは全然違う言葉を耳が拾い戸惑った。
血の気が引いて冷たくなった私の手を優しく両手で包み込み目を合わせる。


「君は些か人に頼ろうとしない所があるからなちゃんと話してくれた事、とても嬉しいと思うんだ。

ましてやこんな事を話す事自体相当覚悟が必要だったと察せるからな」
予想していた展開とは程遠い、優しく温かい言葉が並べられていく。

「ヒューゴ、様」
「…ショックじゃないと言えば嘘にはなる、だが君が人の生き死にに関する嘘をつく人間だとは思わない、だから大丈夫だ…


俺は君を信じる」


力強い声が私の中にあった不安を取り除いていった。

ポタッ「あっ」

涙が1粒、頬を伝って落ちる。
今までどこかで感じていた前世を隠している事への罪悪感が、この世界でたった1人でいるような孤独感が軽くなっていく気がした。

「すみっません…こんな情けない」
「情けないなんて思わない。今までずっと一人で抱え込んできたんだろう?泣いたって誰も咎めないさ」
「いいえ今は泣きたくないんです…

凄く嬉しいから」

前世の話を聞いてもらえた事、話を信じてもらえた事、全てを受け入れてもらえた事。

凄く嬉しくて安心して出た涙は引っ込んでしまった。

「それで…ヒューゴ様の死に関する事で分かっている事なんですが」
私は夢の中で見た前世の記憶を話す。

「馬車の中、山賊に刺される…確かにありそうな死因だな…

ただ少し気になるんだが」
ヒューゴ様が気になる事とはもしかして。

「ネックレスの事、ですか?」
「あぁ物語の中の俺は君にネックレスを渡そうとして渡せず亡くなっているんだろう?しかしは君にネックレスをとっくに渡せている。

この違いは何だろうか」
やはりそこが明確な違いだ。
のヒューゴ様がアメジストのネックレスを手にしたのはだいぶ前の話だが小説の中ではラスボス撃破前。

(どう考えてもおかしいけれど…その理由が分からないわ)

「小説と確実に違う点はやはり私に前世の記憶がある事ですかね?それとガンダー公爵にも…ただヒューゴ様の死を回避する方法にはどちらも関係ないように思えて」
彼の死を回避する方法が全く思いつかず焦りが出てくる。
私の焦りに気付いたのか彼は安心させるように微笑んだ。


「大丈夫だ。その話を聞いた以上そう簡単に殺されるつもりはない、こんな事を自分で言うのはあれだが…

これでもあの父を倒した男だ。

信じてくれイヴァ」
「は、はいっ!」

そう、そうだ。
彼は小説内でラスボスとされていたアイザック・ガンダーを倒している。

(あれ?ならどうして

小説内のヒューゴ様はそこら辺の山賊に殺されてしまったの?)

新たな疑問が湧いてしまった。

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