嘘はいっていない

コーヤダーイ

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38凌辱

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 伸びてきた手が止まったことにサキが目を開けてきょとんとすれば、ルカーシュはにやりと笑った。女としたことはないがこの顔はとてもいい、自分がされたように無理やり突っ込んでやればきっと嫌がって痛がって美しい顔を歪めて泣くだろう。
 雌相手に勃起したことなどなかったが、ルカーシュの股間は張りつめていた。舌なめずりをしながらサキから目を離さず、自らの服を脱いでいく。

「命令だ、今すぐ服を全て脱げ」
「……っ嫌だっ……くっ」

 抵抗すれば首が締まり息ができなくなったサキが諦めて服をすべて脱げば、ルカーシュは勃起したまま意外そうな顔でサキを見ていた。少なくとも今現在の視線に好色の色はないし、精気もだいぶ乱れてはいるが先ほどまでの黒紫色ではない。

「お前、男だったのか」
「最初からどう見ても男でしょう」
「いや、俺は……まぁいいや、びっくりした」
 サキがむっとして強気で言い返せば、ルカーシュは毒気を抜かれたように普通にしゃべっていた。

「僕を裸にして犯すつもり?」
「あ、いや俺、挿れたことないし」
「え、」

 サキがルカーシュの気が抜けている今だ、と素早く魔力を練ってルカーシュを標的とし『魅了チャーム』を掛ければ、ルカーシュの金瞳がぽやんと緩んだ。

 サキが『魅了』を掛けたのは、ラミに一度きりのことでそれがどのような作用を及ぼすのかまでは知らなかった。『魅了』は精気を受けるために施す魔法であって、決して相手を完璧に操れるわけではないことを、サキは知らなかったのである。
 
「座って」

 ぽやんと緩んだ金瞳のままルカーシュはサキを見て言った。動かなかったサキの首輪がぐっと締まり、サキは焦って言う通り床に座った。

 ルカーシュはサキの顔のところへ来ると勃起したものに手を添えて、サキの顔へと擦り付けた。先走りを垂らした先端がぬるりぬるりと目に頬に擦り付けられて、サキは慌てて口をしっかりと閉じる。唇にぬるぬると先端を押し入れようとされるも、歯を噛み締めてそれに耐えると、鼻をぎゅっとつままれた。
 息ができず少しだけ開いた口の中へ、ルカーシュの指がぐっと入り込んだ。

「……っぐ!」

 二本の指が歯をこじ開けてもう片方の指がサキの顎を強く掴んで上向かせる。

「噛まないで」

 開いた口にルカーシュの屹立がぐいと入ってきた。サキは喉奥まで突かれて瞬間的に嘔吐しそうになるが、口の中いっぱいに入ったものが吐くことすら許さない。消えない嘔吐感に涙がこぼれるが、ルカーシュは構うことなくサキの口の中の喉奥へと自分の先端を押し付けていた。
 喉奥ばかりを狙って先端を擦り付けられているから、サキは息が吸えず嘔吐と咳と涙が止まらずどうしようもない。

(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いっ、ムスごめんなさいっ)

 口の中にあった指が抜かれ代わりに後頭部を固定されて、サキは一層苦しくなった。

(もう、早く終わってようっ)

 サキは仕方なく口をすぼめてルカーシュの屹立を咥えると、奥まで突かれぬようにその根元を片手で握り擦り上げ始めた。腰の動きが早くなったからそろそろかと見上げてみれば、ぎらりと熱を帯びた金瞳でこちらを見下ろすルカーシュと目が合った。
 口の中に思い切り射精され、無理やり顔を逸らせば止まらない精液が黒髪に目に胸に降りかかった。粘ついた精液が目の中に入り視界が悪くなる。

(気持ち悪い気持ち悪い、やだやだやだっ、ムスっ……ムスっ!)

 サキの萎えた股間へ指をかけルカーシュが巧みに扱き始めた。

「やっ……触らないでっ。いやーっムスっ、嫌だっ、」

 ルカーシュの見事な手技に勃ち上がったサキのピンク色の屹立に、ルカーシュは上に跨るようにして難なく一気に飲み込んだ。

「ふっ、ぅっ、ぅっ、やめ……っ、」

 ルカーシュが腰を何度か上下させれば誰のものなのか精液がごぽりと下りてきて、ルカーシュが腰を持ち上げ尻に先端だけ飲み込んでいるときに見えるサキのピンク色をねっとりと白く濡らした。泡立ち零れた他人の精液は放たれたルカーシュの体内で長いこと温められており、一層むっとする臭いを放ってサキを嘔吐させた。

 サキが顔を横にして吐いてもルカーシュは金瞳でサキを見つめたまま、規則正しく同じ律動を繰り返していた。サキが吐くために動いたのがイイところへ当たったのか、ルカーシュは身をよじって叫ぶと同じところが当たるように勝手に動きまわりサキの肩を強く掴んだ。

 そのまま背を逸らし顎を上げ一人で中イキしたのだろう、ルカーシュががくりと首を垂らしサキの肩へと額をつけて息をついた。サキのピンク色のものは吐精せずにそのまま萎えて、少し見悶えすればルカーシュの中からするりと抜けた。

「頭なでて」

 口元をルカーシュの精液と自分の吐いたもので汚し、涙の跡もそのままにサキはルカーシュの頭にのろのろと手を乗せた。



 急激にサキのピアスが熱を持ち、耳たぶがじんじんと熱くなる。

「熱っ……」

 振り向いたサキの視線の先に、ピアスを媒体にして飛んできたマティアス、ムスタ、クラースが揃っていた。

 三人は裸のサキとルカーシュを見る、何をされたかは一目瞭然である。

 ムスタはかぎ爪を出してルカーシュに躍り掛かり、壁にその身体を叩きつけた。
 
 クラースは辺りを警戒し、いつでも対応できるように身を低く構える。

 マティアスは着ていたコートを脱いでサキを包もうと動き、間一髪それに気づいた。

「ムス、待って!殺しちゃ駄目っ」
「待てムスタ、隷属の首輪だ」
「……っつ!」

 寸前で止めたかぎ爪を仕舞うことなく、ムスタがぴたりと動きを止めた。ルカーシュの喉元に爪が触れている。

 マティアスが腕を一振りして『魅了』を強制的に解除すれば、ぼんやりと意識を取り戻したルカーシュがゆっくりと瞬きをした。目だけを動かして新しい来訪者たちを確認し、最後にサキを見て眉をひそめた。

「その人はルカーシュ、星森から来たって」
「まず先に首輪の鍵だ、出せ」
「……鍵は持ってない」

 サキをコートで包み木箱に座らせたマティアスがつかつかとルカーシュのところへ行き、裏手で頬を払った。ルカーシュを抑え込んでいるムスタのかぎ爪が、ルカーシュの顎をかすり傷がつく。

「私は星森がどうなろうと一向に構わない、さっさと鍵を出さないなら貴様を殺すだけだ」
「本当に持ってない。鍵を持ってるのは日和見亭にいる奴隷商人の男だ。けど……」
「けど、何だ。さっさと言え」
「門番の男が俺の話聞いて日和見亭に兵士を送ったって……」

 ちっ、と舌打ちをしてマティアスがサキへと向き直る。

「父さん、行って」
「しかし……」
「お願い」
「わかった、フロイラインをここへ呼ぶ」

 マティアスがフロイラインへと伝魔法で連絡を入れた、隷属の首輪をサキが付けられ暴行されたので来てほしいと言った瞬間にフロイラインが転移で現れていた。

 大して広くはない部屋に男が6人もいれば狭くもなる、木箱に誰かの足が当たりそれに腰掛けていたサキがよろめいた。マティアスのマントを抑えていた手が外れればはらりと汚された裸が見えてしまった。

 美しい黒髪にも顔にもサキに暴行を働いたという男の精液が飛び散り、涙の跡に口元の汚れ。一瞬過去の自分と重なって怒りが沸騰しかけるのを抑えて、フロイラインは素早くサキに寄ってマントを胸まできっちりと留めると浄化を施した。サキの首元を注視したフロイラインは眉間に深い皺を寄せて首輪に触れる。

「隷属の首輪の難しいところは魔法が効かないところだ、この首輪の主人は二人。首輪を付けた男ともう一人は、鍵を持つ男だろう」

 さっさときびすを返したマティアスが出口へと歩きながらクラースを顎で呼ぶ。

「私は鍵を持つという男を探しに兵団の詰所へと行く、クラースも私と来い」
「はい、じゃあサキすぐ戻るからな」
「フロイライン、ここは任せる。時間が惜しい、飛ぶぞ」

 クラースが返事をする前にマティアスはすでに飛んでいた。



「さて、これからこいつに話を聞くがサキはどうする」
「僕もここで話を聞きます」

 魔法縄でぐるりと巻いて動けぬようにしたルカーシュを、フロイラインが冷たいグレーの瞳で見据えた。ルカーシュからようやく手を離したムスタはそっとサキに近づき、サキが服を着ていくのを次々と手渡していった。サキが着替え終えると木箱にそれぞれ腰を掛けたが、ムスタは一人立ったまま身体の前で腕を組んでいる。

「俺は半獣人で誰よりも弱くて身体能力も低いから、影にはなれなかった」

 ルカーシュは床を見つめて語り出した、星森での暮らし、次代カシュパルのこと、首に番の噛み痕を付けても番ではないと言われ、ムスタとその番をどうにかしてやろうと一人で出てきたこと。旅の途中で金のために身体を売ることを覚え、そのせいで奴隷商人に隷属の首輪で捕まったこと。売られないように取り入って一年以上その男に拘束されていたが、最近ようやく首輪を外して逃げてきたこと。

「隷属の首輪の辛さは私も知っている、同じものを私は数年つけられていた」
「……!!」

 フロイラインの言葉にルカーシュは涙腺を崩壊させた。

「俺っ、親もいないしずっと一人で半端者って言われてて。だけどみんな俺を使って性欲処理しててっ……、うっ、俺。俺だけの特別な人が欲しかった、俺を守ってくれる強い人がほしかったっ」
「それが……カシュパルだと?」

 ムスタが険しい顔のまま尋ねる、ムスタの中ではカシュパルは18歳の溌剌とした希望に燃える若者であった。

「……カシュパル様はっ、俺を見ても乱暴しないから。カシュパル様だけがいつも笑ってくれるんだ、それで俺を抱いて噛んでくれたけど番にはまだなれないって……」

 夢から覚めたような目でルカーシュが顔を上げた。

「俺、そう言われて勝手にムスタファ様の番さえいなければ、って思って……」
「なぜ思ったのがわしの番だったのか」
「カシュパル様が……ムスタファ様に番がいて自分に番が認められないなんておかしいって、首を噛みながらずっと言ってて……それで、」

 ムスタが大きく息を吐いて、組んでいた腕をほどいた。

「訂正しておくが番は互いが番と認めれば成立するものじゃ、何かに認められる必要などない。噛み痕を残すのは獣人の習性というだけで、番となるのに必ずしも必要ではない」
「え……そんな、じゃ俺は、」

 ムスタは黙って首を振った。

「俺……幸せに、なりたかっただけなのに……カシュパル様、」
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