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本編
騒がしき日
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宮殿がある万代区の隣に位置する中央区には多くの華族が邸宅を構えている場所がある。その中でも純血華族や高位華族が居を構えるエリアに宮殿警備隊が訪れていた
これからとある人物の身柄を確保するべく、彼らは屋敷への突入準備をしていた
「これは宮内大臣からの勅命である。失敗は許されない。良いな?」
責任者の隊員はトランシーバー越しに隊員たちに呼びかけた
「ただ今より捜査を開始し、一族の者を全員拘束する」
一人の隊員がインターホンを押し、応答した使用人に門を開けるように伝える。すると大きな鉄柵の門は音を立てて開かれた
「今は大奥様も閣下も外出されておりますが……」
使用人頭の男性が不思議そうに首をかしげ、屋敷に入ってきた宮殿警備隊にそう言った
「直系一族の方はご在宅ですか?」
「はい、旦那様と次期当主の音様がサロンにいらっしゃいます。しかし、今はティータイムですので、あ!ちょっと!」
使用人がとめるのを無視して警備隊は屋敷の奥へとむかった。一般的にサロンは西側の日当たりの良い場所に作られるため、見つけるのは容易だった
部屋に突入し入口を塞ぐように部下たちを待機させ、部屋でテーブルを囲んでいた男性に一礼してから話しかけた
「高貴なる公爵夫君と次期当主様にご挨拶致します。宮殿警備隊第三大隊隊長、城山と申します。誠に恐れながら、宮内省より御身に拘束命令が出ております」
「……抵抗はしない。ただ、手荒な真似は辞めてもらおう。私たちはあくまでも宮内省の命令に従うだけであり、罪人ではない」
「かしこまりました」
公爵夫君は自らの足元に抱きつく息子を優しく抱きあげた
「音、お前は我らが一族の跡取りだ。誇り高くありなさい。生きていれば、必ず、幸せになれる」
「いやだ!ちちうえといっしょにいる!」
「すまない、音」
泣きながら首に手を回ししがみつく息子の背中をなで、苦し紛れに言葉を繋いだ
「我々が我々である限り、どうあってもこうなる運命だったのかもしれない」
「え?」
「お前の母は矜恃を守る為に立ち上がった。恨んではいけないよ?恨むのならそんな母を止めることができなかったこの父を恨んでくれ」
「ちちうえ?」
「……ごめんな」
公爵夫君は瞳に涙をためて、最愛の息子を強く抱きしめたのだった
◆◇◆
港湾施設に繋がる秘密通路が使用されたことが川端伯爵の耳に入った頃には既に宮殿の奥深くまで侵入者の侵入を許していた。確認されただけでも侵入者は数百人規模で動いており、これほどまで大胆な行動ができるということは内通者がいるということだろう。彼らは帽子を深く被り、顔を隠していた。監視ドローンによる射殺も行われていたが、メインコンピューター無天快にウイルスが侵入したことによりそのほとんどが機能しなくなっていたのだ。そうして彼らはあっという間に中央宮殿にある大ホールに侵入したのだった。
「何だ貴様ら!」
「無礼な!」
今日は大ホールにて華内天王が運営するNPO法人設立の記念祝賀会が開かれていたため、多くの華族や財閥関係者が集まっていた。そのため中にいた参加者たちからは銃を持った者達の急な乱入に会場のあちこちから悲鳴があがる
「お静かに。私たちは無駄な争いをしに来たのではありません」
黒いドレスに黒いベールを身につけた老女は同じく顔をベールで覆った女に支えられながらゆっくりとした足取りでホール中央に進んだ
「貴様ら!ここをどこだと心得ている!ここは高貴なる大天族が住まう中央宮殿だぞ!」
「その通りだ!無駄な争いをしないというのであれば、武器を持ってして侵入する必要は無い」
「警備隊は何をしている!すぐに宮殿に武器を持って侵入してきた反逆者を捕らえろ!」
何人かの華族が黒いドレスの女に向かって叫んだ。普段から命の危機接することがない華族にはまさか自分が殺されると思いもしない者がいるようだ。
「警備隊も一部掌握済みです。私たちは無駄な争いはしません。しかし、我々の邪魔をする者を排除することは無駄ではありません」
華族に向けて銃が構えられる
「……お待ちなさい」
華族たちが震え上がり何も言葉を発せなくなっている中、一人の少女が黒いドレスの女の前に歩み出た
「私が貴方たちの要求を聞きましょう」
「内天王殿下!近づいてはなりませぬ!お下がりを!」
震えながらも何とか言葉を発し、勇敢に侵入者たちの前に歩み出たのは蒼士の従姉妹にあたる華内天王だった。彼女は止めようとした護衛の男を手で制し、さらに前へと歩み出た
「私は天帝陛下に直訴したいことがございます。この場に陛下をお呼び頂きたい」
「……この場に、陛下を呼べと?」
「はい」
「天帝陛下に危害を加えないと誓えますか?」
「そちらが私たちに危害を加えないのであれば……」
「……藤堂伯夫人」
華内天王は少しの間考えたあと、自らの専属女官を呼んだ。内天王に呼ばれた藤堂伯爵夫人は人集りの中から恐る恐る前へと歩み出て深く頭を下げ、一礼した。
「陛下は今どちらに?」
「……内閣府の閣議に参加しておられるため、第一庁舎にいらっしゃるかと」
藤堂伯爵夫人は携帯端末を震える手で操作して蒼士のスケジュールを確認した
「このことを今すぐ陛下に伝え、判断を仰いでください」
「ほ、本当によろしいのですか?」
「この祝賀会の主催者は私です。全ての責任は私が取ります」
「しかし……」
「夫人、一刻を争う事態です。出来るだけ早く陛下にこのことを伝えてください」
「……かしこまりました」
反逆者のいる場所に天帝を呼ぶということは危険な行為であり、下手をすれば華内天王自信が反乱を企てたと思われかねない。仮にそう誤解されなかったとしても万が一のことがあればこの場に天帝を呼んだ華内天王の責任となる。藤堂伯爵夫人はそれを危惧したのだ
(ベールで顔を隠しているけど、あの人はもしかして……。まさかね)
華内天王は杖を着いている老女を横で支えている女の背格好や髪飾りを見て思い当たる人物がいたが、そんなはずは無いと首を横に振った
(彼女はこんなことをするような浅はかな人じゃない。でも、この声がとても似ている気がする……)
彼女が思考を巡らせていると携帯端末で内閣府と連絡をとった藤堂伯爵夫人が近づいてきて、そっと耳元で囁いた
「内閣府の弥勒院侯爵閣下が代表者と護衛数名のみを連れて竹林の間に来るように伝えて欲しいとの事です。そこで天帝陛下もお会いすると……」
「それは確かですね?」
「無天快を使用していない連絡方法ですので間違いありません」
「分かりました」
藤堂伯爵夫人から弥勒院侯爵の言伝をきいた華内天王はベールの老女に向き直った
「我らが偉大なる主は竹林の間にて貴方たちとお会いになると仰せです。ただし、代表者と数名の護衛のみ謁見を許可するとのことです」
「大いなる天のお導きに感謝致します」
その様子を少し後ろから見ていた藤堂伯爵夫人は恐怖に震えるのだった
これからとある人物の身柄を確保するべく、彼らは屋敷への突入準備をしていた
「これは宮内大臣からの勅命である。失敗は許されない。良いな?」
責任者の隊員はトランシーバー越しに隊員たちに呼びかけた
「ただ今より捜査を開始し、一族の者を全員拘束する」
一人の隊員がインターホンを押し、応答した使用人に門を開けるように伝える。すると大きな鉄柵の門は音を立てて開かれた
「今は大奥様も閣下も外出されておりますが……」
使用人頭の男性が不思議そうに首をかしげ、屋敷に入ってきた宮殿警備隊にそう言った
「直系一族の方はご在宅ですか?」
「はい、旦那様と次期当主の音様がサロンにいらっしゃいます。しかし、今はティータイムですので、あ!ちょっと!」
使用人がとめるのを無視して警備隊は屋敷の奥へとむかった。一般的にサロンは西側の日当たりの良い場所に作られるため、見つけるのは容易だった
部屋に突入し入口を塞ぐように部下たちを待機させ、部屋でテーブルを囲んでいた男性に一礼してから話しかけた
「高貴なる公爵夫君と次期当主様にご挨拶致します。宮殿警備隊第三大隊隊長、城山と申します。誠に恐れながら、宮内省より御身に拘束命令が出ております」
「……抵抗はしない。ただ、手荒な真似は辞めてもらおう。私たちはあくまでも宮内省の命令に従うだけであり、罪人ではない」
「かしこまりました」
公爵夫君は自らの足元に抱きつく息子を優しく抱きあげた
「音、お前は我らが一族の跡取りだ。誇り高くありなさい。生きていれば、必ず、幸せになれる」
「いやだ!ちちうえといっしょにいる!」
「すまない、音」
泣きながら首に手を回ししがみつく息子の背中をなで、苦し紛れに言葉を繋いだ
「我々が我々である限り、どうあってもこうなる運命だったのかもしれない」
「え?」
「お前の母は矜恃を守る為に立ち上がった。恨んではいけないよ?恨むのならそんな母を止めることができなかったこの父を恨んでくれ」
「ちちうえ?」
「……ごめんな」
公爵夫君は瞳に涙をためて、最愛の息子を強く抱きしめたのだった
◆◇◆
港湾施設に繋がる秘密通路が使用されたことが川端伯爵の耳に入った頃には既に宮殿の奥深くまで侵入者の侵入を許していた。確認されただけでも侵入者は数百人規模で動いており、これほどまで大胆な行動ができるということは内通者がいるということだろう。彼らは帽子を深く被り、顔を隠していた。監視ドローンによる射殺も行われていたが、メインコンピューター無天快にウイルスが侵入したことによりそのほとんどが機能しなくなっていたのだ。そうして彼らはあっという間に中央宮殿にある大ホールに侵入したのだった。
「何だ貴様ら!」
「無礼な!」
今日は大ホールにて華内天王が運営するNPO法人設立の記念祝賀会が開かれていたため、多くの華族や財閥関係者が集まっていた。そのため中にいた参加者たちからは銃を持った者達の急な乱入に会場のあちこちから悲鳴があがる
「お静かに。私たちは無駄な争いをしに来たのではありません」
黒いドレスに黒いベールを身につけた老女は同じく顔をベールで覆った女に支えられながらゆっくりとした足取りでホール中央に進んだ
「貴様ら!ここをどこだと心得ている!ここは高貴なる大天族が住まう中央宮殿だぞ!」
「その通りだ!無駄な争いをしないというのであれば、武器を持ってして侵入する必要は無い」
「警備隊は何をしている!すぐに宮殿に武器を持って侵入してきた反逆者を捕らえろ!」
何人かの華族が黒いドレスの女に向かって叫んだ。普段から命の危機接することがない華族にはまさか自分が殺されると思いもしない者がいるようだ。
「警備隊も一部掌握済みです。私たちは無駄な争いはしません。しかし、我々の邪魔をする者を排除することは無駄ではありません」
華族に向けて銃が構えられる
「……お待ちなさい」
華族たちが震え上がり何も言葉を発せなくなっている中、一人の少女が黒いドレスの女の前に歩み出た
「私が貴方たちの要求を聞きましょう」
「内天王殿下!近づいてはなりませぬ!お下がりを!」
震えながらも何とか言葉を発し、勇敢に侵入者たちの前に歩み出たのは蒼士の従姉妹にあたる華内天王だった。彼女は止めようとした護衛の男を手で制し、さらに前へと歩み出た
「私は天帝陛下に直訴したいことがございます。この場に陛下をお呼び頂きたい」
「……この場に、陛下を呼べと?」
「はい」
「天帝陛下に危害を加えないと誓えますか?」
「そちらが私たちに危害を加えないのであれば……」
「……藤堂伯夫人」
華内天王は少しの間考えたあと、自らの専属女官を呼んだ。内天王に呼ばれた藤堂伯爵夫人は人集りの中から恐る恐る前へと歩み出て深く頭を下げ、一礼した。
「陛下は今どちらに?」
「……内閣府の閣議に参加しておられるため、第一庁舎にいらっしゃるかと」
藤堂伯爵夫人は携帯端末を震える手で操作して蒼士のスケジュールを確認した
「このことを今すぐ陛下に伝え、判断を仰いでください」
「ほ、本当によろしいのですか?」
「この祝賀会の主催者は私です。全ての責任は私が取ります」
「しかし……」
「夫人、一刻を争う事態です。出来るだけ早く陛下にこのことを伝えてください」
「……かしこまりました」
反逆者のいる場所に天帝を呼ぶということは危険な行為であり、下手をすれば華内天王自信が反乱を企てたと思われかねない。仮にそう誤解されなかったとしても万が一のことがあればこの場に天帝を呼んだ華内天王の責任となる。藤堂伯爵夫人はそれを危惧したのだ
(ベールで顔を隠しているけど、あの人はもしかして……。まさかね)
華内天王は杖を着いている老女を横で支えている女の背格好や髪飾りを見て思い当たる人物がいたが、そんなはずは無いと首を横に振った
(彼女はこんなことをするような浅はかな人じゃない。でも、この声がとても似ている気がする……)
彼女が思考を巡らせていると携帯端末で内閣府と連絡をとった藤堂伯爵夫人が近づいてきて、そっと耳元で囁いた
「内閣府の弥勒院侯爵閣下が代表者と護衛数名のみを連れて竹林の間に来るように伝えて欲しいとの事です。そこで天帝陛下もお会いすると……」
「それは確かですね?」
「無天快を使用していない連絡方法ですので間違いありません」
「分かりました」
藤堂伯爵夫人から弥勒院侯爵の言伝をきいた華内天王はベールの老女に向き直った
「我らが偉大なる主は竹林の間にて貴方たちとお会いになると仰せです。ただし、代表者と数名の護衛のみ謁見を許可するとのことです」
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