あなたの愛はもう要りません。

たろ

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8話

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「ビアンカ様、奥様がお呼びです」

 昨日の夜、義母がご機嫌が悪いとメイドが言ってたけど、やはり朝早くから呼ばれてしまった。

「ご機嫌は?」

「……あまり……」

 メイドの顔がなんとも言えない顔をしていた。

 うーん、はっきりとは言わないと言うことは……

「どこに行けばいいのかしら?」

「1階の奥様の執務室でお待ちです」

「わかったわ、制服に着替えたら急いで行きます」

 急いで服を着替え、髪をブラッシングして一応鏡でチェック。

 よし!身だしなみはなんとか大丈夫!

 私の部屋から離れた客間や大広間の奥にある義母の執務室。

 扉をノックする前に大きく深呼吸。

「コンコン」

「入りなさい」

「失礼致します」

 緊張しながら部屋に入る。

 義母は朝早くから仕事をしていたみたい。執務中だったのだろう、一向に顔を上げようとしない。

 私は扉のところで立ったままじっと義母の様子を窺った。

 ダイガットを女性にしたらこんな顔なんだろうなぁ。さらに冷たく見えるのも親子だからかしら?美しさはダイガットをより美しくしているようだわ。

 二人が並ぶと美し過ぎて自分がその中に入ろうとは絶対思わない。引き立て役になんて……無理だわ。思いっきり傷つきそう。

「なぜそこにじっと立っているの?中に入りなさい」

「はい」

 何度お会いしても緊張する侯爵夫人。

 自分の顔が平凡すぎるとしみじみ感じてしまう。

「失礼致します」

 もう一度同じ言葉を繰り返し言ってから中に入った。

 どこに行けばいいのかわからず部屋のソファをチラリと見るが勝手に座れない。

 うーん、とりあえずソファに近いところで、またもや立ったまま。

「もうすぐ終わるから座っていなさい」

「はい」

 いそいそと座ってまたひたすらじっとしていた。

 その様子をメイド長が苦笑いしながら見ていた。

 緊張し過ぎてメイド長が静かに壁際に立っていることに気が付かなかった。

 目が合うと不思議に落ち着いた。

 よし!学校へ行く前にさっさとお説教を聞いて、さっさと終わらせよう。

「すみません」「申し訳ございません」「わかりました」これさえ繰り返し言っておけばなんとかなる。

 ダイガットにはつい強気になっちゃうけど威圧感半端ない義母にはとてもではないけど言い訳なんてできない。

 義母が仕事を終わらせて私の前のソファに腰掛けた。

「…………」

「ビアンカ、あなた昨晩………「申し訳ありません!」

 説教される前にすぐに謝った。

「……はあああ………何を謝っているの?」

「へっ?あ、あの、昨晩、ダイガット様に呼ばれて2階へあがってしまいまして……申し訳ありません!!」

 上半身が思いっきり太ももにくっついた。

 うわあ、私って体柔らかっ!

「あなたを呼んだのはそんなことではないわ」

「えっ、では、あの、私、他に何を……」

 考えても思いつかない。

 何しでかしたのかしら?

 


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