あなたの愛はもう要りません。

たろ

文字の大きさ
9 / 125

9話

しおりを挟む
 実家にいる時は、継母によく叱られた。

 帳簿の計算間違いや(ミスしたのは継母でそのまま知らずに計算しただけなんだけど)、あと誤字脱字。

 これも継母が間違った名前を書いていたりスペルを間違えていたりしている書類を無理やり押し付けられてそのまま書き写しただけなんだけど、「腕を出しなさい!」と、袖を捲られ、見えないところを鞭で叩かれたな。

 それに比べると侯爵家は天国かも。もともと執事がきちんと書類整理をしているので間違いはないし、私の所為になんでもしないもの。

 嫁とは認められなくても家族の輪に入れなくても、意地悪はされない………あ…でも、認められない割にしっかり仕事はさせられてるけど。

 でも離縁して外国で一人で生きていくには事務仕事ができるのはとても助かるわ。

「…………ンカ……聞いているの?」

「………………は、はいっ!!」

 うわぁ…また一人考え込んでいたわ。

 結婚してから…ううん、母が亡くなってからあまり人と話さなくなって、つい一人で考えに浸ってしまうのよね。

 この屋敷に来てからは使用人達が話してくれるので、寂しくなくなったけど。

 癖はなかなか抜けない。

「ビアンカ、あなたの仕事なんだけど……」

「はい!」

「どこで覚えたの?」

 うん?どこで?

 ああ、そうか。

「実家でも書類整理や帳簿の仕事をして(無理やりさせられて)おりました。
 でもやり方がわからなくて、図書館へ通っていろいろ本を読んで勉強をしました。私は外国のやり方を真似て帳簿を自分なりに考えてまとめていました」

「そう、だから、こんなにわかりやすいのね」

「わかりやすいですかっ!」

 大きな声で思わず前のめりになってしまった。

「声が大きい!あなたは侯爵家の嫁なのよ」

 私……初めて『嫁』と言われたかも!

 目を見開いて義母を見る。

「こほんっ。ビアンカ、落ち着きなさい」

「だって褒めてもらえたんですよね?」

 嬉しさに拳を握り、つい笑顔が浮かんだ。

「私、あまり褒められたことがなくて、とても嬉しいです」

「そ、そう。あなたの仕事は丁寧でわかりやすいわ」

「ありがとうございます!あ……もう時間がない。すみません、私学校へ行かなければならないので帰ってきたらまたお仕事頑張ります」

「時間って……まだダイガットは朝食を摂っている時間よ?」

「………私は歩きなので……」

 困った顔をしながら小さな声で言った。

 義母は知っているはずなのに……だって義母がそうさせているのでは?

 責めるつもりも嫌味を言ったつもりもなく、ただ時間が間に合わなくなるので仕方なく答えたつもりだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

愛なんか消えてしまえと願う私は悪くないと思う

ましろ
恋愛
「赤ちゃんができたの」 母の言葉に目眩がした。 我が家の両親は恋愛結婚。身分差から駆け落ち同然で一緒になった二人は未だにその愛は消えず、燃え上がり続けているのだからある意味凄いわ。 でもね? どうしてそんなにも子どもを作ってしまうの⁉ 私を入れて子どもは七人。お父さんの給料ではお手伝いさんなんか雇えるわけもなく、おっとりしたお嬢様気質の抜けないお母さんだけで家事育児などできるはずもなく。 そうなると働き手は長女の私だ。 ずっと小さな頃から弟妹のお世話と家事に明け暮れ、それなのにまだ産むと言うの? 「……ねえ、お母さんにとって子どもって何?」 「うふふ。それはね、愛の結晶よ」 愛。愛って何? 私はあなたの愛のために働き詰めなのですけど? 自分達の手に余るなら、そんなモノなど捨ててしまえっ! ❦R-15は保険です。 連載中のものが止まったままのくせに!とは言わないで(泣) 現在、作業中のものがなかなか終わらなくて息抜きのための不定期連載です。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

誓いを忘れた騎士へ ―私は誰かの花嫁になる

吉乃
恋愛
「帰ってきたら、結婚してくれる?」 ――あの日の誓いを胸に、私は待ち続けた。 最初の三年間は幸せだった。 けれど、騎士の務めに赴いた彼は、やがて音信不通となり―― 気づけば七年の歳月が流れていた。 二十七歳になった私は、もう結婚をしなければならない。 未来を選ぶ年齢。 だから、別の男性との婚姻を受け入れると決めたのに……。 結婚式を目前にした夜。 失われたはずの声が、突然私の心を打ち砕く。 「……リリアナ。迎えに来た」 七年の沈黙を破って現れた騎士。 赦せるのか、それとも拒むのか。 揺れる心が最後に選ぶのは―― かつての誓いか、それとも新しい愛か。 お知らせ ※すみません、PCの不調で更新が出来なくなってしまいました。 直り次第すぐに更新を再開しますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる

春野オカリナ
恋愛
 初夏の日差しが強くなる頃、王都の書店では、ある一冊の本がずらりと並んでいた。  それは、半年前の雪の降る寒い季節に死刑となった一人の囚人の手記を本にまとめたものだった。  囚人の名は『イエニー・フラウ』  彼女は稀代の悪女として知らぬ者のいない程、有名になっていた。  その彼女の手記とあって、本は飛ぶように売れたのだ。  しかし、その内容はとても悪女のものではなかった。  人々は彼女に同情し、彼女が鉄槌を下した夫とその愛人こそが裁きを受けるべきだったと憤りを感じていた。  その手記の内容とは…

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

処理中です...