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40話
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…………『この屋敷を出て行きなさい』か……
言われなくてもそのつもりだった。ただその言葉を言える雰囲気ではなかっただけ。
「父上!やっと帰って来たのにどうして追い出すのですか?わがままな態度はしっかり躾をすればいいだけでしょう?」
さっきまで私に対して憤慨していたはずのダイガットがなぜか焦って父親の言葉を止めようとした。
「侯爵様……それは離縁して出ていけとのことでしょうか?」
「離縁なんかしない!ビアンカは俺と別れるわけがないだろう?」
え?どうして?何度となく離縁の申し入れはダイガットにはしたはずだけど?
私が別れる意思があることくらい知ってるわよね?
「ビアンカは離縁はしないわ」
「ああ、そうだな……確かに」
「あの……では、離縁しないで出て行けと?」
「あら?出て行けなんて乱暴ね?うふふっ……」
侯爵夫人は笑っていた。
ダイガットは一人大きな声で興奮しながら、なぜか自分の腕を見て青い顔をしている。
夫妻はこれ以上話す気がないのだろう、食事を終え静かに席を立つと自分たちの部屋へと帰って行った。
ダイガットの声など聞こえていないようだった。
残されたのは私とダイガット。
私もお二人が席を立ったのでこれ以上ここに居る必要はない。
出て行きなさいと言われたのだから、喜んで出ていこう。
「ビアンカ、お前はここを出て実家に帰るのか?……お前は温かい家庭に恵まれているからフランソアの気持ちがわからないだろうが、俺は別にフランソアと変な関係ではない、幼馴染なんだ……ただ子供の頃に守ると約束をしたんだ」
「………確かに私は温かい家庭で育ちましたわ」
お母様が亡くなるまでは………
貴方は私のどこを見て温かい家庭で育ったなんて思うのだろう?
「この屋敷を出る準備をしなければいけないので失礼しますわ」
「待て!俺はお前を追い出すつもりはない。この屋敷にやっと帰って来たんだ。し…仕事だって……そうだ……まだ仕事だってたくさん残っているはずだ。勝手に出ていくなんて許さない」
「仕事はすぐに終わらせますわ」
しつこい!
引き止める理由が仕事が残ってる?
喜んで仕事をやってから出ていくわよ!
侯爵様達には挨拶は無用ね、お二人ともさっさと出て行ってほしいみたいだもの。
なんて言おうかなんて悩んでいたのに、あっけなかった。
でもこれで踏ん切りがついた。
ダイガットがまだ何か言ってるけど無視して部屋に帰った。
確かに机に仕事な書類が置かれていた。
少し量は多いけど慣れた仕事。
しっかり催眠もとったので、頭は冴えていた。
ずっと座っていると背中の痛みがひどくなったけど、痛み止めの薬を飲んでとりあえず仕事を終わらせた。
ダイガットは学校へ行ったみたい。私は体調不良でしばらく休んでいる。
学校のことは侯爵家が手続きはしてくれるだろう。
マリアナ達には落ち着いたら手紙を書こう。
使用人達にだけは挨拶をした。
メイド長は朝食の時の経緯を見ていたので、私がカバンひとつを手に待っている姿を見て、何も言わずに涙ぐみ抱きしめて来た。
「ビアンカ様……行く場所はあるのですか?」
「うん、離縁したら行こうと思っていた場所があるの」
離縁はしていないけど、いずれは離縁になるでしょう。
「奥様達に挨拶はされないのですか?」
静かに首を振った。
メイド長は「そうですね、何も言わずに出ていくのもビアンカ様のためにはいいのかもしれませんね」と小さく呟いた。
「みんなにはとても良くしていただきました。ありがとうございました」
仲のよかった人たちとハグして別れの挨拶をした。
メイド長が「これみんなから気持ちだけど」と言って封筒を渡された。
「え?」
「たいしたお金は入っていないのですが、ビアンカ様の旅費くらいにはなると思います。実家には帰れないのでしょう?」
「うん、帰るつもりはないわ」
「それがいいと思います。伯爵夫人は貴女を狙っていると噂で聞いております、出来るだけこの街から離れてください。もし頼る人がいなければ、どうか隣町のセントに住むビリーを訪ねてください。ビリーは私の弟です。彼は小さな商会を経営していますので他国にも詳しいはずです」
「ありがとう、メイド長……どうして知っているの?」
「メイドにはメイドの繋がりがあります。屋敷の中のことは他言無用ではありますが、情報を集めるにはメイドや使用人が一番内情を知っております」
それ以上は聞かなくてもわかった。伯爵家の使用人達が私のことをここの屋敷の使用人に話したのだ。そして、王宮内で過ごしていた私の理由も上の使用人達は耳にしているのだろう。
私が屋敷から早く離れたい理由を。
継母の怒りは収まらない。
今私に向けて何をしようかと企んでいるはず。宮廷から出てしまえば誰からも守ってもらえない。
私なんかのために侯爵家が継母の実家の公爵家と闘ってくれるわけはない。
だからここを出ていくように侯爵様は言ったのだろう。
今は逃げるしかない。
言われなくてもそのつもりだった。ただその言葉を言える雰囲気ではなかっただけ。
「父上!やっと帰って来たのにどうして追い出すのですか?わがままな態度はしっかり躾をすればいいだけでしょう?」
さっきまで私に対して憤慨していたはずのダイガットがなぜか焦って父親の言葉を止めようとした。
「侯爵様……それは離縁して出ていけとのことでしょうか?」
「離縁なんかしない!ビアンカは俺と別れるわけがないだろう?」
え?どうして?何度となく離縁の申し入れはダイガットにはしたはずだけど?
私が別れる意思があることくらい知ってるわよね?
「ビアンカは離縁はしないわ」
「ああ、そうだな……確かに」
「あの……では、離縁しないで出て行けと?」
「あら?出て行けなんて乱暴ね?うふふっ……」
侯爵夫人は笑っていた。
ダイガットは一人大きな声で興奮しながら、なぜか自分の腕を見て青い顔をしている。
夫妻はこれ以上話す気がないのだろう、食事を終え静かに席を立つと自分たちの部屋へと帰って行った。
ダイガットの声など聞こえていないようだった。
残されたのは私とダイガット。
私もお二人が席を立ったのでこれ以上ここに居る必要はない。
出て行きなさいと言われたのだから、喜んで出ていこう。
「ビアンカ、お前はここを出て実家に帰るのか?……お前は温かい家庭に恵まれているからフランソアの気持ちがわからないだろうが、俺は別にフランソアと変な関係ではない、幼馴染なんだ……ただ子供の頃に守ると約束をしたんだ」
「………確かに私は温かい家庭で育ちましたわ」
お母様が亡くなるまでは………
貴方は私のどこを見て温かい家庭で育ったなんて思うのだろう?
「この屋敷を出る準備をしなければいけないので失礼しますわ」
「待て!俺はお前を追い出すつもりはない。この屋敷にやっと帰って来たんだ。し…仕事だって……そうだ……まだ仕事だってたくさん残っているはずだ。勝手に出ていくなんて許さない」
「仕事はすぐに終わらせますわ」
しつこい!
引き止める理由が仕事が残ってる?
喜んで仕事をやってから出ていくわよ!
侯爵様達には挨拶は無用ね、お二人ともさっさと出て行ってほしいみたいだもの。
なんて言おうかなんて悩んでいたのに、あっけなかった。
でもこれで踏ん切りがついた。
ダイガットがまだ何か言ってるけど無視して部屋に帰った。
確かに机に仕事な書類が置かれていた。
少し量は多いけど慣れた仕事。
しっかり催眠もとったので、頭は冴えていた。
ずっと座っていると背中の痛みがひどくなったけど、痛み止めの薬を飲んでとりあえず仕事を終わらせた。
ダイガットは学校へ行ったみたい。私は体調不良でしばらく休んでいる。
学校のことは侯爵家が手続きはしてくれるだろう。
マリアナ達には落ち着いたら手紙を書こう。
使用人達にだけは挨拶をした。
メイド長は朝食の時の経緯を見ていたので、私がカバンひとつを手に待っている姿を見て、何も言わずに涙ぐみ抱きしめて来た。
「ビアンカ様……行く場所はあるのですか?」
「うん、離縁したら行こうと思っていた場所があるの」
離縁はしていないけど、いずれは離縁になるでしょう。
「奥様達に挨拶はされないのですか?」
静かに首を振った。
メイド長は「そうですね、何も言わずに出ていくのもビアンカ様のためにはいいのかもしれませんね」と小さく呟いた。
「みんなにはとても良くしていただきました。ありがとうございました」
仲のよかった人たちとハグして別れの挨拶をした。
メイド長が「これみんなから気持ちだけど」と言って封筒を渡された。
「え?」
「たいしたお金は入っていないのですが、ビアンカ様の旅費くらいにはなると思います。実家には帰れないのでしょう?」
「うん、帰るつもりはないわ」
「それがいいと思います。伯爵夫人は貴女を狙っていると噂で聞いております、出来るだけこの街から離れてください。もし頼る人がいなければ、どうか隣町のセントに住むビリーを訪ねてください。ビリーは私の弟です。彼は小さな商会を経営していますので他国にも詳しいはずです」
「ありがとう、メイド長……どうして知っているの?」
「メイドにはメイドの繋がりがあります。屋敷の中のことは他言無用ではありますが、情報を集めるにはメイドや使用人が一番内情を知っております」
それ以上は聞かなくてもわかった。伯爵家の使用人達が私のことをここの屋敷の使用人に話したのだ。そして、王宮内で過ごしていた私の理由も上の使用人達は耳にしているのだろう。
私が屋敷から早く離れたい理由を。
継母の怒りは収まらない。
今私に向けて何をしようかと企んでいるはず。宮廷から出てしまえば誰からも守ってもらえない。
私なんかのために侯爵家が継母の実家の公爵家と闘ってくれるわけはない。
だからここを出ていくように侯爵様は言ったのだろう。
今は逃げるしかない。
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