あなたの愛はもう要りません。

たろ

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39話

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 悔しくて下唇を噛んでしまった。本当に強ければここには居ない。

 さっさと逃げ出して一人で生きていく。でも一人になるのが怖かった。

 大好きなお母様が突然いなくなってお父様に見捨てられた。

 大好きだった殿下やマリアナ達にも会えなくなり、バァズ達は近所に住んでいるのに顔を合わせることもなくなった。

 一人屋敷の中で息を潜めて暮らした。継母のご機嫌を損なわないように出来るだけ顔を合わせないようにしていた。

 やっと学校へ通えるようになったのに、無理やり結婚させられて……

 考えるだけで悔しくて悲しくて涙が溢れそうになった。

 でも……だからこそダイガットの前では泣きたくない。

 私が強いと言うならそう思われていていい。泣いた顔なんて見せたくない。

 下を向いたまま手は動かない。元々食欲がないのにもう何も口に入らない。

「ダイガット……貴方はビアンカの夫ではなかったのかしら?それとも大切な幼馴染とまさか噂のとおり恋仲なんてことはないわよね?ただ幼馴染だから大切なだけなのよね?もちろん幼馴染と妻、どちらが大切かわかってるわよね?」

「な、何を……わかっています。ただフランソアは誰も守る人がいない。彼女を守ると約束したんです。男として約束を守るのは当たり前でしょう?」

 ダイガットは俯く私の方へちらりと視線向けた。
「ビアンカは……ずっと幸せに暮らしてきたんです。最近はわがままばかり言って勝手に屋敷を離れて自由に過ごしたりと手がつけられません。
 少しは俺の気持ちも考えてください。妻が勝手なことばかりして困っているのは俺なんです」

「それが貴方の考えね?」

「はい」

「貴方、ダイガットの気持ちはしっかりと聞いたわ。ビアンカがどうして屋敷を離れていたか、自分で答えを出しなさいと私は言ったわよね?」

「ええ、だからビアンカはわがままで……」

「それは貴方が調べた結果なのね?」

「フランソアがそう言っていました」

 フランソア様がいった?何を?彼女が知っているの?

「ビアンカはわがままばかり言ってフランソアにも酷い言葉を投げつけるそうです。フランソアが屋敷で過ごしている間もビアンカはフランソアを睨みつけていたらしいです。
 そしてフランソアが自分の屋敷に帰ったと思ったら今度はビアンカが出て行ったんです。フランソアがビアンカはわざと俺を困らせるために出て行ったんだろうと教えてくれました。ビアンカはそういう奴なんです」

 あまりにも堂々とこの話は正論だと言わんばかりに言い切ったダイガット。

 流石に頭にきた!

 馬鹿は相手しない!

 そう思っていたのに、悔しくて言い返そうとしたら……

「ビアンカ、お前はこの屋敷を出て行きなさい」

 侯爵様の言葉には怒りがこもっていた。




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