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41話
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門番さんはメイド長から話を聞いていたのだろう。
「お気をつけて」と頭を下げて私を通してくれた。
彼らからも餞別を貰っていたので「ありがとうございました」とお礼を言ってから門を出た。
「何かありましたら我々に声をかけてください。使用人には使用人の伝手があります。いくらでもお助けできますので」
侯爵家の使用人は皆、どうして?と思うくらいに私に優しい。
政略結婚で嫁としてあまりよく思われていないはずなのに、みんな仲良くしてくれた。
屋敷で心から笑ってもいいことをここでみんなが教えてくれた。
屋敷に向かい頭をしばらく下げた。
向かうのはメイド長に教わった隣町のセント。メイド長の弟のビリーさんを頼るつもりだ。
一人でもなんとかこの国を出ようと思っていたけど、まだあと2年先の予定で何も計画を立てていない私が出るのは無謀だと改めて思った。
せめてどうやって行けばいいのか、相談くらいにはのってもらおうと考えた。
馬車賃も勿体無いのでとりあえず歩くことにした。
流石にまだ継母の手が私に回ってはきていないだろう。
牢に入れられた継母の怒りは相当なものだと思う。
何をされるかわからない。そして大好きな侯爵家の使用人達にまで害が及ぶかもしれない。
侮れない継母の執念。
今日は家族連れや楽しそうな友達同士、恋人同士など、連れ立って歩く人たちが目についた。
街の中を歩いていると、お店から出てくるダイガットの姿を見つけた。
思わず足が止まる。
まだ距離はあるので見つからないようにサッと隠れた。
たくさんの人が行き交う街の中なので私の姿に気が付かないでいた。
ダイガットの横にはもちろんフランソア様が並んでいた。フランソア様はダイガットを見上げながら可愛らしい笑顔を向けていた。
うーん、傍から見ると、とても素敵なカップルだ。
どこが幼馴染でしかないんだろう?
ダイガットは私には不機嫌な顔しか見せないくせにフランソア様にはどう見てもデレデレだと思うけどな。
あ、ヤキモチなんかじゃ決してないの。ただ、守ると約束してあそこまで徹底して守ってもらえることが羨ましいだけ。
すると数人の怖そうな男の人がダイガット達に絡んでいるのが見えた。
フランソア様がびくりと肩を震わせ、怯えた目でダイガットを見上げる。庇護欲をそそるそんな仕草に、ダイガットは頼もしくフランソア様を守る。
うーん、なんて素敵なシーンなの。
そして、そばにいた護衛騎士達がダイガット達のそばに来てすぐに男の人たちは退散した。
フランソア様が、男の人たちの方を見てニヤッと笑うのを見てしまった。
あのニヤッは何?
でもすぐにまた震えながらダイガットの腕にしがみつくように体を寄せていた。
逃げて来た男の人たちがぶつぶつと文句を言いながら早歩きをして去って行った。
「全く、金をくれるからこんなバカなことをやったが、なんで騎士に斬られそうになるんだ?」
「本当だよ、あの女、自分たちに絡んでくれと言ったが、何が『こわぁい』だ!お前の考えの方がよっぽど怖い!」
「本当だ、もうあんな依頼はごめんだ」
う、ううん?
もしかして……あれは…やらせ?
男の人たちは「これでとりあえず飯でも食おう」と食堂街へと向かって行った。
私はあの二人とは反対の方向へと歩くことにした。
少し遠回りになるけど、関わらないが一番いい。
よし!侯爵家を抜け出せてやっぱりよかった!
「お気をつけて」と頭を下げて私を通してくれた。
彼らからも餞別を貰っていたので「ありがとうございました」とお礼を言ってから門を出た。
「何かありましたら我々に声をかけてください。使用人には使用人の伝手があります。いくらでもお助けできますので」
侯爵家の使用人は皆、どうして?と思うくらいに私に優しい。
政略結婚で嫁としてあまりよく思われていないはずなのに、みんな仲良くしてくれた。
屋敷で心から笑ってもいいことをここでみんなが教えてくれた。
屋敷に向かい頭をしばらく下げた。
向かうのはメイド長に教わった隣町のセント。メイド長の弟のビリーさんを頼るつもりだ。
一人でもなんとかこの国を出ようと思っていたけど、まだあと2年先の予定で何も計画を立てていない私が出るのは無謀だと改めて思った。
せめてどうやって行けばいいのか、相談くらいにはのってもらおうと考えた。
馬車賃も勿体無いのでとりあえず歩くことにした。
流石にまだ継母の手が私に回ってはきていないだろう。
牢に入れられた継母の怒りは相当なものだと思う。
何をされるかわからない。そして大好きな侯爵家の使用人達にまで害が及ぶかもしれない。
侮れない継母の執念。
今日は家族連れや楽しそうな友達同士、恋人同士など、連れ立って歩く人たちが目についた。
街の中を歩いていると、お店から出てくるダイガットの姿を見つけた。
思わず足が止まる。
まだ距離はあるので見つからないようにサッと隠れた。
たくさんの人が行き交う街の中なので私の姿に気が付かないでいた。
ダイガットの横にはもちろんフランソア様が並んでいた。フランソア様はダイガットを見上げながら可愛らしい笑顔を向けていた。
うーん、傍から見ると、とても素敵なカップルだ。
どこが幼馴染でしかないんだろう?
ダイガットは私には不機嫌な顔しか見せないくせにフランソア様にはどう見てもデレデレだと思うけどな。
あ、ヤキモチなんかじゃ決してないの。ただ、守ると約束してあそこまで徹底して守ってもらえることが羨ましいだけ。
すると数人の怖そうな男の人がダイガット達に絡んでいるのが見えた。
フランソア様がびくりと肩を震わせ、怯えた目でダイガットを見上げる。庇護欲をそそるそんな仕草に、ダイガットは頼もしくフランソア様を守る。
うーん、なんて素敵なシーンなの。
そして、そばにいた護衛騎士達がダイガット達のそばに来てすぐに男の人たちは退散した。
フランソア様が、男の人たちの方を見てニヤッと笑うのを見てしまった。
あのニヤッは何?
でもすぐにまた震えながらダイガットの腕にしがみつくように体を寄せていた。
逃げて来た男の人たちがぶつぶつと文句を言いながら早歩きをして去って行った。
「全く、金をくれるからこんなバカなことをやったが、なんで騎士に斬られそうになるんだ?」
「本当だよ、あの女、自分たちに絡んでくれと言ったが、何が『こわぁい』だ!お前の考えの方がよっぽど怖い!」
「本当だ、もうあんな依頼はごめんだ」
う、ううん?
もしかして……あれは…やらせ?
男の人たちは「これでとりあえず飯でも食おう」と食堂街へと向かって行った。
私はあの二人とは反対の方向へと歩くことにした。
少し遠回りになるけど、関わらないが一番いい。
よし!侯爵家を抜け出せてやっぱりよかった!
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