【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

文字の大きさ
8 / 76

王女様は強者。

しおりを挟む
 キース様と王妃様に挨拶をした。

「王妃殿下、無事に婚約が整いました」
 キース様が報告をした。

「ではダイアナが成人する二年間、守ってやってちょうだい」

「かしこまりました」

「ふー、それから……キースは王女であるジャスティアに明日からついてもらえるかしら?」


「ジャスティア殿下に……」
 キース様は驚いたようで、目を丸くして一瞬言葉を失っていた。

「かしこまりました。王妃殿下」
 王妃様は少し複雑そうな顔をしていた。


「ダイアナ、ごめんなさいね。キースをわたしの側から離さないようにしていたのだけど……陛下には逆らえなくてね」

 ジャスティア殿下は前王妃の子供で殿下を産んだ2年後に亡くなっている。その後輿入れされたのが今の王妃であるキャスティ様。

 王妃様にはわたしより2歳年下のヴァレン王子14歳とセリーヌ王女10歳がいらっしゃる。

 ジャスティア殿下は18歳。前王妃の忘れ形見だからか陛下の寵愛は全て殿下に注がれている。

 もちろん王妃様の二人の子供も大切にされているのだけど、ジャスティア殿下のお願いはどんなことでも叶ってしまう。そう……どんなことでも。

 何人もの騎士や侍女達が彼女の一言で首になったかわからない。
 彼女の気分で全てが決まってしまう。
 欲しいものは必ず手に入れる。

 宝石も流行りのドレスも絵画も、そして人間も。


 流石に王妃はそんなジャスティア殿下に厳しくしようとしてはいるが陛下が横槍を入れてくる。

「そんなに厳しくするのは可哀想だろう?」
「この子はか弱いんだ。あまり厳しくはするな」
「自分の子供ではないからそんなに厳しくするんだろう?」

 陛下の前でだけいい子のジャスティア殿下、すぐに泣き真似をして父親から同情を買う。

「お父様、何故わたくしはあんなに叱られないといけないのでしょう?」
 王妃様に叱られるとすぐに父親に泣きつく姿をわたしは何度も見てきた。
 瞳は潤ませていても涙の一粒すら流したところは見たことがない。
 王妃様はその度に陛下から苦言を言われ、

「ダイアナ、また叱られちゃったわ」と寂しそうな顔をされる。
 息子達には辛そうな顔を見せない王妃様もわたしには少しだけ見せてくれる。
 わたしはそんな時、黙って王妃様の手を握る。
 すると王妃様も小さく震える手を握り返してくれる。

 キース様は部屋を出てわたしを見ると

「ジャスティア殿下の護衛についている間は君に話しかけない。君も出来るだけ俺に会わないように気をつけて」

 普段人前では「僕」と言うキース様が初めて「俺」と言った。
 少しは気を許してくれているのかそれとも何か焦っているのか。

 ジャスティア殿下がキース様を気に入っていることも無理やり自分の護衛騎士にしたこともわかっている。それがこれからどんな面倒くさいことになるかも想像できる。

 お互い自由に好きなことをできるための偽りの婚約なのに、彼は好きな騎士の仕事を満喫出来そうもない。

 わたしは煩わしい父親からの婚約者選びがなくなったけど、代わりにジャスティア殿下と言う頭の痛くなる人と関わらないといけないかもしれないと考えると気が重くなる。

 ジャスティア殿下の本性を知っているわたしは出来るだけ関わらないようにしていたのに。

 キース様と別れると、お父様が陛下との謁見を終わらせわたしを待っていた。

 さらに気が重くなってしまった。



◆ ◆ ◆

【今夜さよならします】

番外編更新しています。もしよろしければ読んでくださいね。

しおりを挟む
感想 310

あなたにおすすめの小説

一年だけの夫婦でも私は幸せでした。

クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。 フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。 フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。 更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

私があなたを好きだったころ

豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」 ※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。

『悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた』

由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。 彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。 真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、 ただ一人、守るべきものを守り抜いた。 それは、愛する人の未来のための選択。 誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。 悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】 エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな
恋愛
 公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。  当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。  どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

処理中です...