【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

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キース様の言葉には…

 王宮に着くと王妃様に会いに行った。

 約束の時間までもう少し……

 二人で王宮内の庭園で時間を潰した。

 彼のエスコートで庭園を歩いて回る。

 この庭園には外国の珍しい花々がたくさん植えられている。たくさんの庭師さんが丹精込めて手入れをしているので何度来ても飽きることのない庭園だ。

 何ヶ所かに噴水があり四阿が設けられている。
 疲れたら手彫りで作られたベンチに座ることが出来るようにいろんな所に置かれている。

 ーーこのベンチ1個が多分官僚の人の一月分の給料くらいだと王妃様が笑いながら教えてくれたけど……

 何十個もある。もちろん重たくて簡単には盗むことはできないけど売ったら私の家出のためのお金になるかしら?なんて思ったことがあった。
 もちろん数年前なのでまだ未成年。
 可愛い妄想だった。

 こんなことを考えながらキース様の手を取り歩いていると、少し離れたところから鋭い視線や冷たい視線を浴びせられた。

 キース様にも聞こえてはいるようだ。

「あの子がキース様の婚約者らしいわ」
「父親に見捨てられた公爵令嬢よ、あの黒髪に翠色の瞳では仕方がないわよね。まるで呪われている娘みたいだもの」

 二人の令嬢がコソコソと話しているのが聞こえる。
 言われ慣れているわたしにはなんとも思わないけど、隣にいるキース様には不愉快に感じるかもしれない。

 そう思っているとキース様が二人の令嬢の方を向いた。
 何も言わずただ二人を見た。

 二人の令嬢はキース様に見られ、慌てて話すのをやめた。それでもじっと見られているのでどうしていいのか分からずタジタジとしている。

「ダイアナはとても綺麗な髪をしていると僕は思っています。彼女の瞳に僕を映してもらえることを光栄だと思っていますよ」

 キース様は優しく二人に微笑んだ。
 すると顔を真っ赤にして「し、失礼します」と言って逃げるように二人は去っていった。

「僕のせいでダイアナ嬢に嫌な思いをさせてすまなかった」

 キース様がすまなそうにわたしに謝る。

「別にキース様の所為ではありません。わたしのこの姿が悪い意味で目立つので仕方ありません。慣れていますので気になさらないでください」

「慣れないで!」
 キース様が突然大きな声で言うとわたしの肩を掴んだ。

「いいかい?君は諦めが早い。まだ16歳だ。好きなことだってしていい、本当なら甘えてもまだいい歳なんだ。そんな諦めきった顔をして過ごすな」

 わたしはキース様の言葉に驚き頷くこともできなかった。
 ーー諦めきった顔?
 多分諦めきったのではなく諦めている。

 わたしのような家庭はたくさんある。父親に愛人がいる人や第二夫人がいる人、冷めきった家庭で育った子供達もたくさんいる。
 そんな中の一人なだけ。
 いつもそう思って過ごしていた。

 ただキース様のご両親のように温かく仲の良い夫婦に出会うと、隠している傷を抉られてズキズキと痛み出すだけ。
 ご両親はキース様を愛しているのが見ているだけでわかってしまう。……羨ましいと思わない(ようにしている)ただ……こんな温かい家庭が貴族の中にもあるのだと現実を知らされるだけ。

 ーー知りたくないし認めたくないけど。






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