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王女様は強者。
キース様と王妃様に挨拶をした。
「王妃殿下、無事に婚約が整いました」
キース様が報告をした。
「ではダイアナが成人する二年間、守ってやってちょうだい」
「かしこまりました」
「ふー、それから……キースは王女であるジャスティアに明日からついてもらえるかしら?」
「ジャスティア殿下に……」
キース様は驚いたようで、目を丸くして一瞬言葉を失っていた。
「かしこまりました。王妃殿下」
王妃様は少し複雑そうな顔をしていた。
「ダイアナ、ごめんなさいね。キースをわたしの側から離さないようにしていたのだけど……陛下には逆らえなくてね」
ジャスティア殿下は前王妃の子供で殿下を産んだ2年後に亡くなっている。その後輿入れされたのが今の王妃であるキャスティ様。
王妃様にはわたしより2歳年下のヴァレン王子14歳とセリーヌ王女10歳がいらっしゃる。
ジャスティア殿下は18歳。前王妃の忘れ形見だからか陛下の寵愛は全て殿下に注がれている。
もちろん王妃様の二人の子供も大切にされているのだけど、ジャスティア殿下のお願いはどんなことでも叶ってしまう。そう……どんなことでも。
何人もの騎士や侍女達が彼女の一言で首になったかわからない。
彼女の気分で全てが決まってしまう。
欲しいものは必ず手に入れる。
宝石も流行りのドレスも絵画も、そして人間も。
流石に王妃はそんなジャスティア殿下に厳しくしようとしてはいるが陛下が横槍を入れてくる。
「そんなに厳しくするのは可哀想だろう?」
「この子はか弱いんだ。あまり厳しくはするな」
「自分の子供ではないからそんなに厳しくするんだろう?」
陛下の前でだけいい子のジャスティア殿下、すぐに泣き真似をして父親から同情を買う。
「お父様、何故わたくしはあんなに叱られないといけないのでしょう?」
王妃様に叱られるとすぐに父親に泣きつく姿をわたしは何度も見てきた。
瞳は潤ませていても涙の一粒すら流したところは見たことがない。
王妃様はその度に陛下から苦言を言われ、
「ダイアナ、また叱られちゃったわ」と寂しそうな顔をされる。
息子達には辛そうな顔を見せない王妃様もわたしには少しだけ見せてくれる。
わたしはそんな時、黙って王妃様の手を握る。
すると王妃様も小さく震える手を握り返してくれる。
キース様は部屋を出てわたしを見ると
「ジャスティア殿下の護衛についている間は君に話しかけない。君も出来るだけ俺に会わないように気をつけて」
普段人前では「僕」と言うキース様が初めて「俺」と言った。
少しは気を許してくれているのかそれとも何か焦っているのか。
ジャスティア殿下がキース様を気に入っていることも無理やり自分の護衛騎士にしたこともわかっている。それがこれからどんな面倒くさいことになるかも想像できる。
お互い自由に好きなことをできるための偽りの婚約なのに、彼は好きな騎士の仕事を満喫出来そうもない。
わたしは煩わしい父親からの婚約者選びがなくなったけど、代わりにジャスティア殿下と言う頭の痛くなる人と関わらないといけないかもしれないと考えると気が重くなる。
ジャスティア殿下の本性を知っているわたしは出来るだけ関わらないようにしていたのに。
キース様と別れると、お父様が陛下との謁見を終わらせわたしを待っていた。
さらに気が重くなってしまった。
◆ ◆ ◆
【今夜さよならします】
番外編更新しています。もしよろしければ読んでくださいね。
「王妃殿下、無事に婚約が整いました」
キース様が報告をした。
「ではダイアナが成人する二年間、守ってやってちょうだい」
「かしこまりました」
「ふー、それから……キースは王女であるジャスティアに明日からついてもらえるかしら?」
「ジャスティア殿下に……」
キース様は驚いたようで、目を丸くして一瞬言葉を失っていた。
「かしこまりました。王妃殿下」
王妃様は少し複雑そうな顔をしていた。
「ダイアナ、ごめんなさいね。キースをわたしの側から離さないようにしていたのだけど……陛下には逆らえなくてね」
ジャスティア殿下は前王妃の子供で殿下を産んだ2年後に亡くなっている。その後輿入れされたのが今の王妃であるキャスティ様。
王妃様にはわたしより2歳年下のヴァレン王子14歳とセリーヌ王女10歳がいらっしゃる。
ジャスティア殿下は18歳。前王妃の忘れ形見だからか陛下の寵愛は全て殿下に注がれている。
もちろん王妃様の二人の子供も大切にされているのだけど、ジャスティア殿下のお願いはどんなことでも叶ってしまう。そう……どんなことでも。
何人もの騎士や侍女達が彼女の一言で首になったかわからない。
彼女の気分で全てが決まってしまう。
欲しいものは必ず手に入れる。
宝石も流行りのドレスも絵画も、そして人間も。
流石に王妃はそんなジャスティア殿下に厳しくしようとしてはいるが陛下が横槍を入れてくる。
「そんなに厳しくするのは可哀想だろう?」
「この子はか弱いんだ。あまり厳しくはするな」
「自分の子供ではないからそんなに厳しくするんだろう?」
陛下の前でだけいい子のジャスティア殿下、すぐに泣き真似をして父親から同情を買う。
「お父様、何故わたくしはあんなに叱られないといけないのでしょう?」
王妃様に叱られるとすぐに父親に泣きつく姿をわたしは何度も見てきた。
瞳は潤ませていても涙の一粒すら流したところは見たことがない。
王妃様はその度に陛下から苦言を言われ、
「ダイアナ、また叱られちゃったわ」と寂しそうな顔をされる。
息子達には辛そうな顔を見せない王妃様もわたしには少しだけ見せてくれる。
わたしはそんな時、黙って王妃様の手を握る。
すると王妃様も小さく震える手を握り返してくれる。
キース様は部屋を出てわたしを見ると
「ジャスティア殿下の護衛についている間は君に話しかけない。君も出来るだけ俺に会わないように気をつけて」
普段人前では「僕」と言うキース様が初めて「俺」と言った。
少しは気を許してくれているのかそれとも何か焦っているのか。
ジャスティア殿下がキース様を気に入っていることも無理やり自分の護衛騎士にしたこともわかっている。それがこれからどんな面倒くさいことになるかも想像できる。
お互い自由に好きなことをできるための偽りの婚約なのに、彼は好きな騎士の仕事を満喫出来そうもない。
わたしは煩わしい父親からの婚約者選びがなくなったけど、代わりにジャスティア殿下と言う頭の痛くなる人と関わらないといけないかもしれないと考えると気が重くなる。
ジャスティア殿下の本性を知っているわたしは出来るだけ関わらないようにしていたのに。
キース様と別れると、お父様が陛下との謁見を終わらせわたしを待っていた。
さらに気が重くなってしまった。
◆ ◆ ◆
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