【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

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ダイアナの危機。

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 アシュア様の前で大泣きしたあとやはり疲れてベッドでウトウトしてしまった。

 侍女がやってきて扉を叩く音がした。
「ダイアナ様、お屋敷の者が荷物を届けに来ておりますが?」と言われたので

 ーーああ、執事のトムが届けてくれたのね。

 勝手にそう思い込んで
「どうぞ中へ」と返事をした。

「ダイアナ様のお着替えです。体調はいかがですか?」

 聞き覚えのある声に寝ぼけていた頭がスーッと覚めてしまった。

「…………サリー?」

「はい、お着替えをお持ちいたしました」

 優しく微笑むサリー。思い出していなければサリーのこの笑顔にホッとして心が穏やかになっていただろう。
 だけど今のわたしはなんとか笑顔を崩さないようにするのが精一杯だった。

 ーー何故彼女がここに?

 あの納屋に入れられた時の恐怖が今頃になって思い出される。

 ずっと信じていた。優しいサリー。
 疑ったことなどない。なのに……思い出して仕舞えばもう恐怖の対象でしかない。

 ここに来たのはお祖父様からの指図?それともサリーはわたしが思い出したことを知らないからここに来たの?

 サリーのあの時の悪意はなんだったのだろう?


 彼女の様子を伺いながら尋ねた。
「ありがとう、サリー。ここにいるの誰に聞いたの?」
「え?あ、あの……だ、旦那様です」

「お父様?お父様は帰ってきているの?お怪我をされたと聞いていたのだけど」

「あ、いやあの、トムがダイアナ様のところに荷物を持っていくようにと頼まれました」

「ありがとう、もう帰っていいわ」

 これ以上一緒にいたらわたしが震えていることがバレてしまう。
 ーーお願いだから早く出て行って。

「はい、あと、料理長からの差し入れです。お嬢様のお好きな焼き菓子です」

「料理長から?お礼を言っておいて」

「お茶でも淹れましょう、どうぞお座りになって待っていてください」

 サリーはお茶を淹れてくれた。

「ううん、起きたばかりなのでまだ何も食べたくないわ」

「……そうですか、せっかくなのに…感想を伝えたかったのですが」

「ごめんなさい、まだ体調が良くなくてもう少し横になっていたいの」

 ーーどうして帰ろうとしないの?でも確かにいつものわたしならサリーの顔を見れば嬉しくてしばらくいて欲しがるもの。

「サリー、キース様のお屋敷だからこちらの侍女の方にお願いするから大丈夫よ?ありがとう」

 わたしは顔が引き攣りながらもなんとか笑顔を作った。

「………そうですか…まだ顔色が悪いので心配です、もうしばらく居て差し上げたいのです」

 ーーしつこい!

「ありがとう、でも眠りたいの」

「では眠るまでそばに居てあげますね、いつものように」

 ーー……ああ、そうだった。サリーにだけは心を開いていたんだった。でも今はこの人を怖いとしか思えない。



「あら?ダイアナ目覚めていたのね?そちらは?」

 アシュア様が入って来てサリーを怪訝な顔をしてみた。

「あ、失礼いたしました。ダイアナ様のご実家のバーランド公爵家の侍女長をしておりますサリーと申します、本日はお荷物をお持ち致しました」

「そう、それはありがとう。今からダイアナの診察があるの、席を外してもらえるかしら?」

「……かしこまりました、旦那様も心配しております。出来ればダイアナ様の診察の結果だけでもお聞きして帰りたいのですが」

「あら?ダニエルが心配?そんな人ではないわ。心配なら誰か使いのものをよこすと思うから大丈夫よ」

 サリーはこれ以上アシュア様に何も言えなくて悔しそうにしながらも部屋を出て行った。

「ダイアナ様、また会いに来ますね」そう言って。





「ふーー」サリーが部屋を出て行った。緊張からか体が震えている。

 先ほどサリーがお茶を飲めと淹れてくれたので、渇いた喉を潤わせたくて一気に飲んだ。

 少し苦味が強かったけど、美味しかった。

 アシュア様は「ダイアナ、すぐに診察よ、顔色が悪いわ。横になっていてね」と言って部屋を出て行った。

 アシュア様が来てくれなければどうなっていたのだろう。とりあえず横になろう。
 お医者様が来られるまで、少し目をつぶっていよう。

 そう少しだけ………

 気がつけば眠っていた。








 そして……ここは?

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