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お父様
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怪我の治療をして屋敷に帰ると執事のトムが慌ててわたしのところへやってきた。
「今朝早くにジェファ様とエリーナ様が眠られているところを大旦那様が連れて行かれました」
「何故止めない?」
「保護してやるのだからと無理やり言われてわたし共では言い返すことはできませんでした」
「二人は眠ったまま?」
「はい」
「わかった、すぐに父上の元へ行く、馬車の用意を急いで!」
さっき降りたばかりの馬車にもう一度乗ると父上の屋敷へと向かった。執事のトムに「ダイアナは?ダイアナは無事なのか?」と尋ねると
「ダイアナ様はこちらの屋敷には帰っておりません。ダイアナ様はキース様の屋敷に保護されております。先ほどサリーがダイアナ様のお荷物を届けに向かいました」
「サリーが?じゃあ安心だな」
サリーにはダイアナも懐いている。
父上の目的はダイアナだ。息子達を連れて行ったのはたぶんダイアナと交換するためだろう。
なんとか二人を連れて帰らなければいけない。いざとなれば父上は切り捨てるしかないだろう。
父上の呪縛が少しずつ薄れてきた。
何度も何度も父上の言葉を跳ね除けて自分の意思を貫こうとした。その度にまた父上の言葉に引き戻され惑わされてきた。
守りたい、愛しているはずの妻を見捨て、大切な娘を傷つけてきた。ミリアを愛することはできなかった。ただ生まれた子供たちには愛情を持てた。ダイアナを可愛がれない分二人へ愛情を注いだ。
ダイアナが傷つく姿を見ても、ミリアの手前優しくすることはしなかった。ミリアが父上のまわし者なのはわかっていたから、ダイアナをミリアに近づけたくはなかった。
父上の屋敷に着くとすぐに「子供たちを返してください。何処にいるのですか?」と尋ねた。
「二人はわたしが立派に育てるから安心しろ。それよりもダイアナを渡せ。ダイアナの嫁ぎ先はもう決まっているんだ。今月中に向こうへ渡さなければ大変なことになる」
「ダイアナには婚約者がおります」
「形だけの婚約者だろう?それにあのキースはジャスティア殿下のお気に入りだ。婚約解消して奴は殿下と婚姻すればいいだろう?ダイアナはもう相手が決まっているんだ。大体素直にダイアナを渡せばこんな大事にはならなかったんだ。お前はダイアナに興味がないはずだろう?さっさと引き渡しなさい」
「ダイアナはもうわたしの手元にはいません。父上、ダイアナのことは諦めてください」
「何を言っているんだ?あれは鉱山と引き換えに渡す約束になっている。相手は処女を好んでいる。ある程度奉仕させたら離縁させるつもりだ。そのあとはわたしの玩具として屋敷で飼うつもりだ」
「な、何を言ってるんですか?」
「ダイアナはエレファに似て美しい。あの体を開発されてわたしの元に戻ってきたらわたしが毎日楽しむつもりだ。お前もエレファの代わりに抱いてみるか?娘を抱くのも一興かもしれん」
「ふざけないでください!ダイアナは貴方の孫ですよ?」
「だがエレファの娘だ。エレファを抱いたお前ならわかるだろう?エレファの時と同じ快楽を楽しめるんだ?忘れられないだろう?あの美しい体、抱いている時の顔。またあの体を楽しめると思うとゾクゾクする」
「どう言うことですか?」
父上は一体何を言っているんだ?
エレファを抱いたことがあるとでも言うのか?
「お前がミリアに夢中で抱いている間、エレファはわたしが毎晩抱いていた。その姿を何度もダイアナは幼いながらに見ていた」
「……嘘ですよね?エレファを?」
「エレファはお前を公爵にさせる為に自ら自分の体を差し出したんだ。お前がミリアに夢中になっていることもミリアに子供を産ませたことも全て知っていた。それでもお前を愛していたからお前のためにわたしの愛人になったんだ」
「そんな……エレファが全てを知っていたなんて……どうして父上と……」
「エレファの美しさは男の欲を刺激する。わたしはお前の妻を自分のものにしたかった。そしてダイアナもまた母親にそっくりでわたしの欲を刺激するんだ。お前はわたしの言うことさえ聞いていればいいんだ。わたしのおかげで公爵になれた。そして跡取りとしてジェファという立派な息子も産まれた。あれを躾ければ次の公爵として立派に育つだろう。お前は黙ってわたしの後ろにいればいいんだ、わかったな?早くダイアナを連れてこい」
父上の言葉は絶対。何度も言うことなど聞きたくないと思うのに、逆らえない自分。なんとか抜け出せたと思っていても、父上が面と向かって話されれば素直に頷いてしまう。
「父上……ダイアナは渡せません。デヴィッドがダイアナを守っています。わたしとも会う許可はおりないのです、お願いです、息子たちを返してください。あの子たちにはなんの罪もないでしょう?」
「罪がない?ダイアナをあれだけ家族みんなで冷たくあたっておいて息子たちは悪くないと言うのか?」
「そ、それは、わたしが接しないように言っていたからで……」
「ダイアナには嫁いでもらう。早くここにダイアナを連れてこい!これは命令だ?わかったな?」
「今朝早くにジェファ様とエリーナ様が眠られているところを大旦那様が連れて行かれました」
「何故止めない?」
「保護してやるのだからと無理やり言われてわたし共では言い返すことはできませんでした」
「二人は眠ったまま?」
「はい」
「わかった、すぐに父上の元へ行く、馬車の用意を急いで!」
さっき降りたばかりの馬車にもう一度乗ると父上の屋敷へと向かった。執事のトムに「ダイアナは?ダイアナは無事なのか?」と尋ねると
「ダイアナ様はこちらの屋敷には帰っておりません。ダイアナ様はキース様の屋敷に保護されております。先ほどサリーがダイアナ様のお荷物を届けに向かいました」
「サリーが?じゃあ安心だな」
サリーにはダイアナも懐いている。
父上の目的はダイアナだ。息子達を連れて行ったのはたぶんダイアナと交換するためだろう。
なんとか二人を連れて帰らなければいけない。いざとなれば父上は切り捨てるしかないだろう。
父上の呪縛が少しずつ薄れてきた。
何度も何度も父上の言葉を跳ね除けて自分の意思を貫こうとした。その度にまた父上の言葉に引き戻され惑わされてきた。
守りたい、愛しているはずの妻を見捨て、大切な娘を傷つけてきた。ミリアを愛することはできなかった。ただ生まれた子供たちには愛情を持てた。ダイアナを可愛がれない分二人へ愛情を注いだ。
ダイアナが傷つく姿を見ても、ミリアの手前優しくすることはしなかった。ミリアが父上のまわし者なのはわかっていたから、ダイアナをミリアに近づけたくはなかった。
父上の屋敷に着くとすぐに「子供たちを返してください。何処にいるのですか?」と尋ねた。
「二人はわたしが立派に育てるから安心しろ。それよりもダイアナを渡せ。ダイアナの嫁ぎ先はもう決まっているんだ。今月中に向こうへ渡さなければ大変なことになる」
「ダイアナには婚約者がおります」
「形だけの婚約者だろう?それにあのキースはジャスティア殿下のお気に入りだ。婚約解消して奴は殿下と婚姻すればいいだろう?ダイアナはもう相手が決まっているんだ。大体素直にダイアナを渡せばこんな大事にはならなかったんだ。お前はダイアナに興味がないはずだろう?さっさと引き渡しなさい」
「ダイアナはもうわたしの手元にはいません。父上、ダイアナのことは諦めてください」
「何を言っているんだ?あれは鉱山と引き換えに渡す約束になっている。相手は処女を好んでいる。ある程度奉仕させたら離縁させるつもりだ。そのあとはわたしの玩具として屋敷で飼うつもりだ」
「な、何を言ってるんですか?」
「ダイアナはエレファに似て美しい。あの体を開発されてわたしの元に戻ってきたらわたしが毎日楽しむつもりだ。お前もエレファの代わりに抱いてみるか?娘を抱くのも一興かもしれん」
「ふざけないでください!ダイアナは貴方の孫ですよ?」
「だがエレファの娘だ。エレファを抱いたお前ならわかるだろう?エレファの時と同じ快楽を楽しめるんだ?忘れられないだろう?あの美しい体、抱いている時の顔。またあの体を楽しめると思うとゾクゾクする」
「どう言うことですか?」
父上は一体何を言っているんだ?
エレファを抱いたことがあるとでも言うのか?
「お前がミリアに夢中で抱いている間、エレファはわたしが毎晩抱いていた。その姿を何度もダイアナは幼いながらに見ていた」
「……嘘ですよね?エレファを?」
「エレファはお前を公爵にさせる為に自ら自分の体を差し出したんだ。お前がミリアに夢中になっていることもミリアに子供を産ませたことも全て知っていた。それでもお前を愛していたからお前のためにわたしの愛人になったんだ」
「そんな……エレファが全てを知っていたなんて……どうして父上と……」
「エレファの美しさは男の欲を刺激する。わたしはお前の妻を自分のものにしたかった。そしてダイアナもまた母親にそっくりでわたしの欲を刺激するんだ。お前はわたしの言うことさえ聞いていればいいんだ。わたしのおかげで公爵になれた。そして跡取りとしてジェファという立派な息子も産まれた。あれを躾ければ次の公爵として立派に育つだろう。お前は黙ってわたしの後ろにいればいいんだ、わかったな?早くダイアナを連れてこい」
父上の言葉は絶対。何度も言うことなど聞きたくないと思うのに、逆らえない自分。なんとか抜け出せたと思っていても、父上が面と向かって話されれば素直に頷いてしまう。
「父上……ダイアナは渡せません。デヴィッドがダイアナを守っています。わたしとも会う許可はおりないのです、お願いです、息子たちを返してください。あの子たちにはなんの罪もないでしょう?」
「罪がない?ダイアナをあれだけ家族みんなで冷たくあたっておいて息子たちは悪くないと言うのか?」
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