モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり

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四章 家族一緒に

第16話 マリーの試練①

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「ようこそ、転生者」

 なんで? 何であたしが転生者って知っているのよ。

「早速だがお前への課題を与える。『記憶の解放』さぁ、始めよう」

 どういうことよ。
 その瞬間、あたしの意識が飛んだ。



 小学2年生のあたし。今のリューくらい。部屋の中でうずくまっている。
 あたしは、目の前にいる小さなあたしの体に取り込まれた。

 少しだけ思い出した。大人のあたしの感情が、どんどん子供に戻っていく。


 わたしのおとうさんは、さいていなひとだった。
 おこる、どなる、すぐになぐる。

 そしておかあさんを、かってに



 お葬式もあげないまま、お父さんとお母さんの体はどこかに行って無くなった。
 親戚が集まって、私を誰が育てるか話をしている。
 あたしは二階に閉じ込められたけど、声が大きいからほとんど聞こえていた。

 この家を売って、両親の保険金を足せば、借金は無くなりそれなりの金額が残る。
 だけど、あたしを引き取るのは体裁が悪いし、子供に影響しそうだ。

 大人の私ならそんなことがわかってしまう。あの時は、みんなに嫌われたって思っただけだった。


 おかあさんがいなくなってつらい。おとうさんがいなくなってうれしい。
 あたしは、みんなにいらないこだっておもわれている。
 いなくなりたい。きえてしまいたい。


 そんなことしか考えられなかった。



 もらえる金額と無用なトラブルを秤にかけたのだろう。金はあきらめ施設に送ろうと決まったら、今度はお父さんとお母さんの悪口が始まった。


 ききたくない。ききたくない。ききたくない。


 その時、お母さんの妹の浅海《あさみ》さんの怒鳴り声が聞こえた。

「いい大人がグダグダ悪口大会ですかぁ! 姉さんは男運が悪かっただけ! なんであんたらにそこまで言われなきゃいけないんだ! 葬式だって出してやりたかった。それなのに、みんなで反対しやがって。麻里だっていい子だよ。あんたらのガキに爪の垢でも飲ませた方がいいんじゃねえのか! もういい、麻里はあたしが引き取る。あんたらとは金輪際関係しないでやるよ。親子だろうが親戚だろうが、まとめて縁切ってやる。だから麻里をあたしによこしな!」


 わたし、いきていても、いいの?


 浅海さんは、「どうせ金が欲しいんだろ」とか、「作家なんか目指して、現実を知らないから」とか、「子育てなめてる。すぐに音を上げるさ」などと散々になじられたが、どかどかとあたしのところに来て、「行くよ、麻里」とあたしの手を引いてこの家から連れ出してくれた。



 浅海さんは、保険金とお父さんの家と自分の家を売って、南関東から遠く離れた、東北の日本海に近い小さな町に引っ越した。

「新興住宅街のお家だから、よそから引っ越してくる人も多いし、ここでは誰もあなたの事を知らないから、あたしと一緒に楽しく生きていきましょう」

 浅海さんと養子縁組をし、苗字は丁香に変わった。

「お母さんってよんでもいいんだよ~」

 浅海さんは笑って言ったが、お母さんより5歳も若いまだ20代で独身の浅海さんをお母さんっては呼べなかった。

「浅海さん? ま、いいか。最近名前で呼び合う親子も多くなったしね」

 浅海さんは、ネット小説を書いてデビューしたばかりの、新人小説家だった。

「小説なんかどこでも書ける。打ち合わせもネットで充分」

 そう言って、私に付き合ってくれた。せっかくだからと軽自動車でお出かけもした。古い洋風建築の博物館や、クラゲがいっぱいの水族館。長い石段を登って神社をお参りしたり、温泉に行ったり。海、山、映画、芋煮会。色々連れ出してくれた。

 私がいじめにあった時は本気で怒ってくれた。相手の親に怒鳴り込みに行って、二度といじめが起きないように学校とも交渉してくれた。



 浅海さんはあたしに言った。

「いじめられたり、馬鹿にされたり、大嫌いな人が『お前はダメな奴だ』とか『そんなの夢だよ』っていって攻撃するだろう。そんな時はどうしたらいいと思う?」

 いじめられていたわたしは「わからない」って答えた。

「そんなときはね、『復讐してやる』って思って頑張る気持ちを奮い立たせるんだ」
「復讐はだめって先生が言ってたよ」

 浅海さんは笑いながら言った。

「確かにいじめ返したりいじわるしたりする復讐はダメだよ。でもね、いじめた人が一番嫌がるのは、いじめていた人が、楽しく幸せに暮らしている事なんだよ。成功して人気者になることなんだ。それこそいじめっ子が近寄れないくらいにね。いじめの事はあたしら大人が止めてやる。二度といじめられないように、笑っていなさい。幸せになりなさい。あたしだって今は復讐の最中なんだ。麻里を引き取った時に文句を言っていたヤツらに復讐してやるんだ。作家で成功して、麻里が幸せに笑って暮らして、二人で幸せに暮らす。そのために麻里が笑えるように何でもする。だから協力して。私の復讐、一緒に頑張らない?」

 浅海さんが笑いながら言っているのに、私は泣いていた。
 ぽろぽろぽろぽろ、涙が流れた。

 うん。浅海さん。泣くのは今だけにする。だから、今は泣いていていいよね。

 浅海さんは、私を優しく抱きしめてくれた。


 わたしは、浅海さんのようになりたかった。だから、浅海さんのように「あたし」って自分を呼ぶことにした。

 
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